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男運、悪くないと思うよ

作者: 宮智沙希

何をもって、いい男というのか?


娘の高校入学などにかかる経費の半額が振り込まれた、娘名義の通帳を見て、私は昔の男Yに言われた

 

「俺が言うのもなんだけど、男運、悪くないと思うよ」


の言葉を思い返していた。


金をちゃんと払う、それは最低限の努めだ。


連絡を一切してこない。

ある意味、私たちの生活に無遠慮に立ち入らない。


養育費の請求は、手紙。返信がきたことは一度もない。ただ、請求額は、きちんと振り込まれる。


娘の父親、Nとは、でき婚するのしないので、もめにもめたあげくに、私はシングルマザーでの出産を決意した。


Nは、娘の顔を見たこともない。小学校入学の際と中学校入学、高校入学の際の養育費請求の手紙に写真を同封したが、リアクションはなかった。


娘は、無邪気にNさん、どんな人だった?と、聞いてくる。正直、よくわからない。


一年半位しか付き合ってないし、ずーっと「結婚したい。貯金して!俺も頑張って50万貯めるから、150万貯めて!そしたら、結婚しよう。」と言い張っていたわりに、親の反対に負けた。


まあ、私は当時25歳の大企業の正社員、Nは、二十歳の大学生だったので、両家の親が反対したのも当然といえば当然だなと、達観できる年齢に私もなった。


幸い結婚資金に貯めていた貯金は、出産、子育てにかかるお金として、役にたった。


私にとって最後の恋人になるであろうYには、過去の男たちの衝撃エピソードをあらかた語った。


「あー、話しちゃった!元カレに過去の男の話はするなって言われてたのに」


「過去は過去でしょ?今は俺といるんだから、別に話してくれていいよ。好きな人のことは知りたいじゃない?」


私は初めて付き合った人がエジプトからの留学生だったこと。彼の家族に紹介されるために、エジプトに行った時にミニスカートをはいて、子どもたちに水をかけられた話や、彼が私と別れた後、夢を叶えて日本語教育に携わる大学教授になったことなどを自分のことのように自慢気に語った。


Yは、意外な発言で返してきた。


「イスラム教の女性って、レイプされたら、自殺しなきゃいけないって本当?」


「婚前交渉は、たしかに禁止されているんですけど、それはどうかな?わからないです。」


別の日、「子どもが産まれたら、性欲ってなくなるのかと思っていたけど、違うんですねー」私が呟くと、Yも「本当だよね。昔は口減らしってあったしね」


Yとコンビニに行った時に

「そういえば、私に元カレの話はするなって言った男、コンビニでハーゲンダッツ買おうとしたら、ガリガリ君で十分だって言ったんですよ。割り勘なのに」

「そういえば、愚痴を言うと愚痴が言いたかったら、石に向かって言え。俺は聞きたくない。とかも言われた。」


Yは、「なんか武士みたいだね。その人。」と笑っていた。


Yは、自分のことを「俺の世代って三高の価値観でさ。俺は大学も就職も第一希望落ちて、第二希望(超大手)で、身長も173で、なんか三高には届かないんだよね。」


それくらいだから、私が好きになるんですよ。なにもかも第一希望の男なんて、怖いと言いたかったけど、うまく言えなかった。


先日、娘に私は男を見る目があると言ったら、「お母さん、何人も付き合って、何人も別れてんじゃん」と突っ込まれたが、私は男運は、悪くないと思う。


彼らから、多くのことを学んだ。みんな、その時期は一生懸命、私を喜ばそうとしてくれた。


私は、失恋する度に女友達と、元カレの最低な部分を徹底的にこき下ろす魔女会をひらくが、さんざん愚痴るとスッキリして、時間が立つと、元カレの良かった部分を想い出として大事に思えるようになる。


全てを話した訳ではないが、Yは、


「俺が言うのもなんだけど、男運、悪くないと思うよ」と微笑んだ。


「どうかな?」私も笑ってこたえた。


Yとの別れも、ほどなく訪れた。


仕事以外の時間のほぼ全てを社会人のバレーサークルに費やすYとシングルマザーで週末は基本的に娘と過ごす私には、共通の時間があまりに少なかった。


Yのことが、好きだった。本気で好きだった。

そんな情熱をアラサー最後の一年間、感じることができたことに感謝する。


結局、いい男の定義は、人によって違うんじゃないだろうか。








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