表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来が視えるよ田中くん! 〜Eランク冒険者は、貰ったチートで平和に過ごしたい〜  作者: ____
第三章 Eランク冒険者は、もっとお金が稼ぎたい 
90/345

光輝降臨

 段差の上から、俺は下に広がる空間の様子を伺っていた。

 広い楕円形の開けた場所で、壁や床は相変わらず硬そうな岩で出来ている。全く宝石は無いし、モンスターも居ない。


 ふと上を見てみた。高い高い天井。高いと分かるのは、遥か上にぼんやりとした光があるからだ。

 かなり距離があって、光っているのが何かは分からない。視力にはそこそこ自信があるけど、さすがにあそこまで離れてたら何も分からない。


 高層ビルくらいの高さはあるぞ。 


「なあ、ホトゥルナ。あの上で光ってるの、何か分かるか?」

「分からないですね……。すごい大きさの宝石とかでしょうか? まぁ、あそこまで離れてたらなんの影響もないと思います」


 ふむ。ホトゥルナでも分からないか。


「そうだな。下りて周囲を調べて、それから野営の準備をしようか」


 慎重に段差の下に。


「上に戻る時が大変そうですねー。タナカ、ちゃんと登れます? 白蛍草を取りに行った時、壁のぼりに随分苦労してましたよね」


 段差の下で、上を見上げながらホトゥルナが言った。高さ的には、俺の背の三倍くらいかな? 簡単には登れないけど、頑張れば登れそう。いい感じの高さだ。


「あれはもっと高かったからな。これぐらいなら、少し時間は掛かるけど登れるぞ」


 あの崖と比べたら余裕だ。あれはマジで怖かったからな。


「まぁ、モンスターも居ないしゆっくり登れそうだから安心ですね!」

「だな。……さて、一応ここら辺を調べてから休憩しようか」


 ランタンの明かりで先を照らしながら、俺たちは先へ進む。

 暗い洞窟。岩の床。岩の壁。特に何も無い。


「本来ここが入り口だったのか?」

「かもですね。異空迷宮に取り込まれる前は、普通にダンジョンとして存在していたのかもしれません。ほら、あの砦みたいな所も、人間が使っていたような痕跡がありましたし」


「異空迷宮って、いくつかのダンジョンを適当に纏めた物なのかもな」

「広いダンジョンを適当に突っ込んだんですかねぇ? 絶妙に手抜きと言うかなんというか」

  

「何のモンスターも出ない部屋があったりな。あそこが何だったのか、結局わかってないし」 

 

 ゴミを捨てる為に作ったのなら、わざわざ入れるようにしておく必要はないと思うのだ。休憩に使われるだけだし。

 まあ、ありがたいから何の文句も無いのだけれどね。


 硬い岩の床。平らで歩きやすいのだが、所々に陥没した場所がある。

 自然に削れたと言うより、何かで砕かれたようにして凹んでいるのだ。


「何かが衝突した痕か……?」

「天井が高いし、上から石でも降ってきたんじゃないですかねー。全く何も残ってないから、かなり上の方から降ってきてそうですけど」


 ホトゥルナの言葉につられて上を見上げれば、相変わらず遥か上方で光が輝いていた。


「こう暗いと、落ちてくるのにも気が付けそうに無いな……」

「一応、痕の少ない所を歩きましょうか。ほら、あっちの方が凹みが少ない……」


 ホトゥルナの言葉が止まった。


「ん……? どうした?」

「あれって扉ですよね。ほら、あそこの壁の所」


 薄暗闇の向こうに見えるのは見慣れた色の見慣れた扉。

 

「ああ……。調べてみるか」

 

 そう言って扉に近寄る。距離がつまり、段々と闇が消えていく。

 慎重とは呼べぬ行動だが、そう危険は無いはずだ。モンスターが居る気配も無いし、魔力を吸い取る宝石も無い。ここは原初魔力が薄い場所なんだ……から……。


 ふと足を止めた。


 原初魔力が薄い? 何でだ……? 


「なあホトゥルナ。原初魔力が薄いっておかしくないか……?」

「え……?」


「ここは異空迷宮で、普通のダンジョンじゃない……。入り口近くでも、奥の方でも、原初魔力の濃度は一緒にならないと駄目だと思うんだ」

「確かに……それなら、ここはどうして……? 原初魔力を消費するような物は無いし……罠もありませんでしたよ」


「分からん。原初魔力を消費する罠って存在するのか……?」

「あることにはありますけど……。ここまでかなり歩いたのに、一つも掛かってないって言うのは考えにくく無いですか?」


「確かにそうか……」


 段差を下りてから、ある程度は時間が経っている。少なくとも俺たちはまだ生きているし、ただ単に運が良かっただけとも思えない。


「何か嫌な予感がします。……時間差で発動するタイプの罠かもしれません。あの扉から移動しましょう」


 険しい表情でホトゥルナが提案する。「分かった」とだけ返して、俺は扉へと歩を進める。

 俺もホトゥルナも、何も喋らない。嫌な予感がした。


 手に持ったランタンが先を照らす。段々と扉の様子が見えてくる。


 やはりそれは扉だった。   


 いつもの形。いつもの材質。いつもの大きさ。

 違うのはその表面。精巧で緻密な彫刻が施されたその戸板。


「……ドラゴン?」


 絞り出すように、ホトゥルナが呟いた。


 描かれているのは竜。

 扉の真ん中に、大きな翼と角を持った、巨大な竜が描かれていた。


 長く太い尾。大きな翼の先には鋭い爪。眼光鋭く、口からは炎を吐いている。その絵柄には覚えがあった。見たのは一層。ビッグトーチャーや爆炎女王蟻が守っていた扉。

 

 頭が回転を始める。目まぐるしく思考が湧き上がる。

 

 ばこん。と背後で何かが弾ける音がした。反射的に振り返るが、暗闇しか無い。


「石が落ちてきただけ__」

「OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」


 俺の言葉を掻き消すように、咆哮が轟く。ビリビリと空気が震えているのが分かる。

 耳を塞ぎたい衝動に駆られながら、俺は顔を顰める。


 しばらくすると咆哮は止み、再び静寂が訪れた。しかし、俺の心に平穏は戻らない。どこからかひりつく殺気。見られているという感覚が、確かなものとして伝わってくる。

 背筋に冷や汗が伝うのを感じながら、俺は静かに口を開いた。


「ホトゥルナ……。扉は開くか?」

「開きません。鍵がかかってます」


 ガチャガチャと音。

 振り返り、「俺も試してみる」と言おうとした所で、突如として風が吹いた。吹き下ろす業風が、ホコリや小石を舞い上げ、俺たちの髪を揺らす。


 上を見る。遥か上方にあったはずの輝きが、途轍もない速度で迫ってきていた。それはまるで流れ星。光の軌跡で暗闇を切り裂いて、俺たちへ向けて落ちてくる。


 闇が消える。光に侵され消えていく。

 夜が明けたように、天幕が取られたように、闇の帳が掻き消され……。


 ずん。と地面を揺らして、天より光輝が降り立った。

 


 降り立った光り輝くその生物を一言で表すとすれば、最適な言葉は『美麗』であろう。

 二本の脚で立ち、俺たちを見下ろすのは、大きな角を持った光るドラゴン。


 腕や脚は細く、顔も面長で、全体的にほっそりとした印象を受ける。


 頭部には白い光を湛えた一対の角。純白の輝きは暗闇を消し去り、周囲を明るく照らし出す。

 煌々と輝くそれはまるで太陽の如き輝きを放ち、暗闇に慣れていた俺の目を容赦なく突き刺してくる。


 鱗は色とりどりに輝く宝石。鱗が帯びた光は柔らかで穏やかで、絶え間なく色合いが変化している。

 皮膜は向こう側が透けそうな程に薄く、爪は鋭く、口元から顔を出す牙も舌も全てが全て輝いていた。

 

 それは協会に置かれたステンドグラスのような、高貴で神聖で、犯し難い雰囲気を纏い、俺たちの前に立ちはだかる。

 しかし、俺たちに注がれる視線は殺意と敵意に満ちていて、喉の奥から聞こえてくる威嚇の唸り声は、慈悲も救済も無いであろうことを感じさせた。

 

「転移石で逃げましょう。私が目眩ましの矢を射ちます。一瞬しか時間は稼げませんが、転移石の発動ぐらいの時間は確保できます」

 俺の後ろから、ホトゥルナが小さく、声を抑えて囁いた。「分かった」と返せば、「動かないで下さい。矢を隠して準備します」と声。


 幸い、ドラゴンは俺たちを警戒しているようで、唸りをあげながらこちらを観察している。

 ホトゥルナの手の中に光が生まれ、それは矢の形に変化する。俺の後ろ、ドラゴンの視界には入っていない。 

 

「射ったらあたる前に弾けます。すぐに転移石を使いますから、離れないで下さい」

 

 囁き声に頷きを返した。ギリギリと矢を引き絞る音がする。

 全く動こうとしない俺たちを、ドラゴンはじっと見つめてくる。その目には燃え盛る敵意が渦巻いているが、それでいて澄み渡り、どこか知性を感じさせる眼差しであった。


 弦の音が聞こえなくなったと思えば、「行きます」と一言。ホトゥルナは俺の後ろから躍り出て、ドラゴンへ向けて矢を放った。


「……!」

 

 輝ける竜は、自らに飛翔する矢を見て、その顔を憤怒に染める。攻撃だと判断したのだろう。

 

「OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」

 

 再びの咆哮。天を仰ぎ、ドラゴンは吠えた。

 鼓膜が揺れる。空気が震える。

 

 ぱきん! と、冴えた音がした。聞いたことのある、転移石が割れる音。

 ……?  待てども、転移が始まる様子は無い。それどころか、ホトゥルナの放った目眩ましの矢とやらも、何も起こらず消えている。


 どういう事だ……? 


 嫌な予感を感じて振り返る。

 床で砕け散った透明な水晶。中にあったはずの、転移の魔術の光は、広がること無く消えていた。

正月とか年末とか、果たして読む人は居るのか疑問ではありますが、予約投稿すると思います。

思うだけなので、されていなかったら察して下さい。まだ大掃除も終わってないのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ