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未来が視えるよ田中くん! 〜Eランク冒険者は、貰ったチートで平和に過ごしたい〜  作者: ____
第三章 Eランク冒険者は、もっとお金が稼ぎたい 
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扉の前で無駄話

 魚を食べ終えた俺たちは、扉を探すためにゴーレムの墓場を歩いていた。


「あ、あそこにパーツ落ちてますよ。拾っていきましょう」


 ホトゥルナが指差す方向。欠けたレンズの様な物が一つ。拾い上げてホコリを払えば、かなり傷ついているのが分かった。

 俺の横から、彼女がそれを覗き込む。


「……うん。なんとも言えぬ感じですね。ただのゴミかもしれません」

「まあ、大して苦労もしてないし、ゴミならゴミでいいさ」

 

 ゴミに見えるし、期待はしてない。手癖で拾っちゃうだけだ。

 いくらでも物を仕舞えるってなると、ついつい拾いたくなっちゃうのである。


「積み上げられてるゴーレムを回収できたらいい値段にになりそうなんですけどね。私はそう思うんですけど」

「俺も考えたけど、崩れて大変な事になりそうじゃないか?」


 ゴーレムの下に生き埋めになると、さすがにどうしようも無くなっちゃうぞ。


「この壁の上に登るのも大変ですもんね~。どこかに、回収しやすいサイズのゴーレムが転がったりしてませんかね?」

「そう上手くは行かないさ。先に扉を見つけちゃうと思うぞ」


「ですかねー。扉を見つけたらすぐに移動します?」

「それで良いと思うぞ。ここじゃ、そんなに稼げそうに無いからな」


 殆ど何も無いんだもの。モンスターも居ないし。


「出来ればガーディアンを倒して、それを持って帰りたい所ですよね。良いお金になりますよ」

「……倒せるか?」


「それはちょっと不安な所ですけど……。ガーディアンが居るのかどうかとか、どんなモンスターなのかとか、ちょっと気になりません?」

「気になることは気になるが……。ちょっと怖くないか?」


「様子を見るくらいなら出来るんじゃないですかね? いきなりガーディアンの眼の前に放り出されるとか、そんな事がなければ」   

「未来視を使っていれば、いきなり敵の目の前って事はない。事前に気がつける」


 確かに気になるし、未来視があれば大丈夫か。奇襲されなければ何とかなる。


「……転移石があったら、すぐに逃げられるよな?」

「逃げれますよ。この前のミノタウロスの時みたいに、本体が壊れたりしてなければですけど」


「ははは。まさかそう何度も壊れる訳ないさ。……確かに、言われて見れば様子を見るくらいなら大丈夫そうだな」

「ですよね!」

 

「それなら、ガーディアンの部屋を探すか。ここが一層と同じ仕組みで部屋の繋がりを組み替えてるなら、扉の前で待機してればいいだけだし」


 仕組みが違うと破綻するけどね。なんて考えた所で、ふと疑問がわく。


「……というか、二層にもガーディアンは居るのか?」

「居るんじゃないですかね? 一層に居たのに、二層に居ない理由も無いと思いますけど」 


 ふむ。確かにそうだ。


「とりあえず、扉を見つけて、一層と同じ要領でガーディアンの部屋を探せるか試させてくれ。もしもそれで見つけられるなら楽だ」

「是非そうして下さい。私はおとなしく待ってますから」


 さて、それなら扉を見つけよう。

 そんな事を思った直後、ランタンの明かりが、ゴーレムの壁に張り付いた一枚の扉を照らし出した。 


 噂をすればなんとやらと言う奴だ。

 いつも通りの見慣れた扉。安心感すらある。


「見つかりましたね。それじゃあ、繋がった感じがしたら教えて下さい。私はそれまで、この辺りのゴーレムを眺めてますから」

「おう」


 俺は扉に凭れ掛かって、ゴーレムの壁の前で行ったり来たりするホトゥルナを観察する。

 魔術で作った明かりを使って、何やら色々と調べているようだ。そんな彼女の様子を見て、ふと思い出した事がある。


「なあ、ホトゥルナ。聞いていいか?」

「はーい? なんです?」


 くるりとこっちへ振り向いたホトゥルナ。軽い足取りで俺の近くにやって来た。


「暇だから構って欲しいんですか?」

「ふふっ……なんだよその言い方……。違う違う。聞きたいことがあるんだ」 

  

 彼女は俺の眼をまっすぐに見つめ「なんです?」と口を動かした。


「俺と初めて会った時、覚えてるか?」

「ええ。タナカが私の下で寝てた時ですよね?」


「あれは寝てたんじゃない。気絶してたんだ」

「ありゃ。そうでしたか。それは失礼しました。けど、睡眠も気絶も似たようなものって思いませんか? 私はそう思うんです!」


「似てるけど一緒にしちゃ駄目だと思うぞ」


 勢いで似てるって言っちゃったけど、そもそも似ているかすら怪しいぞ。


「けど、外から見たらどっちも一緒に見えちゃいますよ。私だって、見ただけだったら、タナカが気絶してるのか寝てるのか分からないと思います」

「俺は寝ないぞ。倒れて意識が無かったら気絶してる。安静にしてくれ」


「……タナカって、睡眠の魔術とか効くんですかね?」

「それは普通に効くんじゃないか……? 疲れないから寝ないだけで、その睡眠の魔術って言うのは疲れて無くても効果があるんだろ?」


 睡眠薬的な魔術かな。


「効くんですかねぇ……。今度試してみません? 睡眠の魔術が使える人、私が連れてきますから!」

「別に良いけど……。寝てる間に何かするつもりじゃないだろうな」


 眠らされるって、嫌な予感しかしないよ。


「何もしませんよ~。突っついたりはしますけど」

「落書きとかしない?」


「消えるインクを使います!」

「する気まんまんじゃねぇか!」


 『する』『しない』で返ってくるものとばかり。むしろ消えないインクってなんだ。入れ墨か? 


「昔から小綺麗な顔を見ると落書きしたくなっちゃうんです……。前々から、タナカの顔に落書きしたら楽しいだろうなぁって」

「人の顔見てそんな事考えてたのか」


 あれか? 意味もなく見つめてくる時はどう落書きするか考えてたのか? ときめいていた俺の純情を返せ。


「そんな事とは失礼な! 私にとっては12番目くらいに大切なことなんですよ!」

「結構下じゃん」


 大切なことじゃないまである。

 

「ついでに、11番目に大切なことは枕の柔らかさです」

「俺は枕に敗けたのか……」


 けど枕って大切だよね。分かる。こだわりたい気持ちは凄く分かる。俺は寝ないけどさ。


「そう言えばさ、人の寝顔って気にならないか?」

「気になりますね。凄く気になります。タナカの寝顔、見てみたいですもん」


「たぶん、何も面白くないぞ。普通の顔して寝てると思う」


 と言うかそうであって欲しい。どうしよう。凄い変顔してるとかだったら。泣いちゃうかも。


「普通じゃない寝顔ってなんですか。……別に普通で良いんですよ。普通の寝顔が見てみたいんです」

「だから睡眠の魔術を使うと」


「そういう事になりますね! ついでに落書きを少々!」

「隠し味みたいに言うな……!」


 胡椒を少々。みたいなね。


「なあ、俺の寝顔を見るって事は、俺もホトゥルナの寝顔を見ていいって事だよな?」

「まぁそうですけど……。むしろ見たこと無いんですか?」


「意識して見たことは無いぞ。そもそも、寝てる所見たのホトゥルナが酔ってゲロ吐いた時だけだし」

「あれ? 昨日とか、普通にタナカの前で寝てませんでした?」


「テントの中だっただろ。……さすがに覗きはしないさ」


 一瞬迷ったのは内緒。

 

「ほぇ~そうなんですか。別に覗いてもいいのに……。まぁ私って眠り浅いから、テント開けられたら普通に起きちゃうんですけどね」

「駄目じゃないか」


 俺が見たいのは寝顔なんだ。


「と言うか、そんな事聞かなくても未来視使ったら覗き放題じゃないですか?」

「……!?」


 確かに。扉の向こうを視るとかしてるんだから、テントの中だって視れるに決まってる。言われて気が付いたぞ。


「いやいや。待て待て。結局それは覗きだろ。俺はそんな卑怯なマネはしない。正々堂々、ホトゥルナの寝顔が見たいんだ」


 あれ? 俺、なんか変な事言ってない? 覗き放題の衝撃で頭の回転が追いついてないぞ。


「なんですか正々堂々って。まぁ……そこまで言うなら、気が向いたら見せてあげますよ。あ、落書きとかしたらやり返しますからね? 倍返しですよ」

「え? 自分はやるのに?」


 ずるくなーい?


「はい! 私、自分の事は棚に上げるのが得意なんです! 棚の上から喋ってると思って下さい!」

「嫌な特技だな……」

 

 ある意味羨ましいけど。

 なんて思った所で、ふと思い出した。


「あれ? なんの話だっけ?」


 脱線に脱線を重ねて、もう元の話題がなんだったのかすら覚えてない。


「タナカを眠らせて、落書きするって話ですよ」

「絶対違う。……なんか聞きたいことがあった気がするんだけどなぁ」


「あ、そうですよ。忘れちゃったんですか?」

「うーん? ……。…………。駄目だ! 思い出せん!」


「それじゃあ、思い出したらまた聞いて下さい。忘れちゃうって事は、結構どうでも良いことなんじゃないですか?」

「いやぁ……? そこそこ大切な事だったような気が……」


 少なくとも俺にとっては。


「それなら思い出せますよ! ふぁいとー」


 絶妙に気が抜ける応援だな……。


「じゃあ、私はゴーレムの中にある線を数える作業に戻りますね!」


 なんだその作業は。畳の目を数えるような物なのか……?

 

 壁の前で行ったりそんな来たりするホトゥルナを眺めながら、俺はそんなことを思う。まだ目の奥は熱くならない。もう少し掛かりそうだ。 

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