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未来が視えるよ田中くん! 〜Eランク冒険者は、貰ったチートで平和に過ごしたい〜  作者: ____
第三章 Eランク冒険者は、もっとお金が稼ぎたい 
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吸血

ただ書きたかったやつ

 買い物の最中、色々と頭を捻って考えたが、結局何のアイデアも出てこなかった。

 もしかしなくても頭が固いのかもしれない。頑張って頭を柔らかくしよう。


 連携の細かい部分、例えば、構えてから射つまでのタイミングとか、そういう実際に試してみないとわからないことは、後から調節する予定だ。

 道具屋で売っていた投げナイフは、一本銅貨3枚。4ダースほどまとめ買いして、マジックバッグに突っ込んでおいた。

  

 いくらか値上がりしていたが、念の為に転移石を二つ。もしも異空迷宮の中ではぐれたとしても、これで地上へ戻る事が出来る。

 

 ホトゥルナは大量の回復薬を買い込んでいた。数は数えていないが、とんでもない個数なのは間違いない。仕入れ用の箱を纏めて抱えていたと言えば、その数の多さが伝わるだろうか。

 荷物が多すぎて持ちきれなくなったのだけれど。


 さて、そんな事をしていれば、いつの間にか日も傾き、時刻は六時。

 大通りの一角に置かれた時計を見ながら、俺は横のホトゥルナに声を掛ける。


「もう夕方だけど、宿に戻って休むか?」


 弓の入った黒いケースを抱えたホトゥルナは首を横にふる。若草色の髪がさらさらと鳴った。


「お昼まで寝てたおかげで全然眠くないです! 私は、今からダンジョンにいけますよ!」

「そうか。俺も大丈夫だ」


 そんな風に言って、俺はガチャガチャと音をたてる木箱を持ち直す。中身は回復薬の小瓶。

 ホトゥルナが持ちきれないので俺が持つことにしたのだ。転けて割ったりしたら大変だからな。 


「荷物整理したいから一回部屋に戻らせて下さい。着替えなきゃいけませんし、回復薬も部屋に置いておきたいし、弓のケースも置いておきたいし……」

「おう。飯を食べてから出発だな」   


「私、ソーディに夕食頼んでないんですよね。別の所で食べてきますよ」

「俺の分に合わせて頼んどいたぞ」


 食べなかったら俺が二人分食べれば良いやって考えだ。二人分までなら入る。


「あ、そうなんですか。ありがとうございます!」


 ホトゥルナは満面の笑みで俺に振り向いて「それなら早く帰りましょうか!」と明るい調子で言うのであった。


 

「ここに置いとくぞ」


 回復薬の入った重い箱を、部屋の角に置く。

 ここはホトゥルナの部屋。荷物持ちをしたら自然と部屋に入る流れになっていた。俺が無理やり入った訳じゃないぞ。


「はーい。見て下さいよタナカ! この輝き! 綺麗でしょ!」


 ホトゥルナは、ケースから取り出した新品の弓を俺に見せびらかす。

 魔力灯を反射する、細やかな装飾が施された弓。銀とも鉄とも違う色合いで、確かに綺麗な輝きだが、どこか冷たい印象を受けた。


「おお……。綺麗だな……」

 

 張られた弦は薄っすらと青味を帯びて、魔導鋼の独特の色によく合っている。計算して作られたのか、それともただの偶然か、調和が取れたその弓は、一つの芸術品のようであった。


「ほらほら! こことか見て下さいよ! 凄い細かい模様が彫ってあるんですよ!」


 弓に彫られているのは、蔦と花。職人の遊び心だろうか。小さいが、とても精巧で美しい。


「凄いな……。これで銀貨80枚か……」  

「感覚が麻痺してるかもしれませんけど、銀貨80枚ってとんでもない大金ですよ」


「そうか。そうだな。ダンジョンとか関係なくその値段なんだから安くは無いな」

「でしょう? まぁ、他の物と比べると安く感じちゃうのはしょうがないですけどね」

  

 ホトゥルナは弓をベッドの上に置くと、ケースの中に前使っていた弓を仕舞う。


「タナカ、せっかくだから血を貰っても良いですか? 回復薬はいっぱいありますから!」

「良いけど、今吸ったら夕食が入らなくならないか?」

 

「……確かに。けど、血を貰わないと弓が使えないんですよね」

「それ、俺が死んだら詰まないか……?」


「そうなったら、タナカの身体から血を抜いて持って行きますよ! そうすればしばらくは使えます!」

「さらっと怖いことを言うな」

 

 胸を張って、凛々しい表情で、とんでもない事を口走る。本気の表情なのが恐ろしい。

 

「弓が使えないのはマズいから、血は吸っても良いぞ。回復薬貰うけど」

「持っていって下さい! いっぱいありますから!」


 箱を開けて中から回復薬の小瓶を取り出す。

 めちゃくちゃ多いな……。マジで毎日吸うつもりらしい。別に良いけどね。

  

「いただきまーす」


 ご丁寧に挨拶をして、ホトゥルナは俺の首元に噛み付いた。

 チクリとした痛みを感じながら、俺は回復薬を飲み下す。


「なぁ……吸うのは全然構わないんだけど、次から髪を結んでくれないか? 擽ったいんだ」

 

 口は離さず、コクコクと頷くホトゥルナ。その首の動きで髪の毛が動いて、首筋を撫でる。

 擽ったいぞ。


「その頷きすら擽ったいから、肯定の時は強めに噛んでくれ。それで判別するから」


 言ったら強めに噛んできた。合図を決めたら、吸血中の会話も可能なのでは?


「否定の時は……。どうするかな……。二回噛むとか?」


 そんな事を言ったら、ホトゥルナが俺の首筋を舐めた。  

 

「あ、そっちの方が分かりやすいか。ならそれで頼む」


 強めの噛み付き。

 おお。これで会話が出来るぞ、『はい』『いいえ』で答えられる質問しか出来ないけど。


「そう言えば、この姿勢もどうかと思うんだよな。後ろから吸った方がよくないか?」


 今の状況は、壁にもたれ掛かった俺の横から、ホトゥルナが血を吸っているという物だ。身体が密着しないように、俺が彼女の身体を支えている。


 首筋を舐められた。何でだ。


 少しだけ強めの口調で、「絶対に後ろからの方が良いぞ」と俺が言えば、ホトゥルナは俺の首から口を離して「それだと、身長の関係で中腰にならなきゃいけないんです。しんどいからこの姿勢が良いです」とだけ言って、再び俺の首に噛み付いた。


「それならその姿勢も辛くないか? 後ろからでも一緒だって」


 俺が言った途端に、異空迷宮で血を吸った時のような、俺の上に乗るような体勢に変えてきた。


 あ、駄目だこの娘。俺が男だってこと忘れてる。

 父親の血を吸っていたらしいから、それと同じ様な心持ちで居るんだろう。


 俺が我慢すれば良い話か……。


 変に意識しないよう、必死に別の事を考える。

 

「夕食が食べきれなかったら俺が貰うぞ。二人分までなら食べられるし」


 強めの噛み付き。これはイエス。


「あと、血を吸う時は人が入ってこないように鍵をしめような。ここ見られたら言い訳出来ないから」


 イエス。

 何も考えずに吸血を始めてしまったから、部屋の鍵はしっかり開いてる。誰かが部屋を間違えでもしたら面倒な事になるのは間違いない。幸い、今は殆ど人が居ないから心配する必要も無さそうだが。


「服の置き方が汚いぞ。ちゃんと片付けないと駄目だろ。せっかく綺麗に洗濯してくれてるんだから」

   

 初めてホトゥルナの部屋に入った時と同じ様に、服は壁際に山積みにされていた。 

 何も言わずに、ホトゥルナが俺の両目を塞いだ。見るなということらしい。今更だぞ……。

 


 それからしばらく。ホトゥルナの吸血が終わり、俺は自室へと戻ってきた。

 夕食を食べたらすぐに出発したいので、夕食の前に準備をしてしまおうという魂胆だ。


 マジックバッグの中身を漁って、買い忘れた物が無いか確認しておく。

 えっと、転移石に回復薬。食料。それに水。


 あ、どこかで毒けむり玉を買いたいな。異空迷宮に出てくる爆炎蟻は毒に弱いらしいし、女王にも効くと言うなら買わない意味は無い。

 商人ギルドで売ってるらしいから、ダンジョンに入る前に買えるはずだ。


「投げナイフもちゃんとあるな」と、小さく呟いて、そこでふと思う。

 

「……投げナイフをバッグに入れっぱなしにするのは何か違うよなぁ」


 咄嗟に投げられるから便利なのであって、一々鞄から取り出すのはあまり賢い使い方とは言えない。


 投げナイフを収納できるような服、どっかで探した方が良いような気がする。

 見つからなかったら、チュチュの所で相談しよう。作ってくれるような気もするぞ。


 服を着替えて、ベルトを着けて、今まで使ってたナイフを外した。あまり使ってあげられなかったけど、それでも十分に働いてくれた良いナイフだ。ちゃんとバッグに入れて持ち歩こう。 


 さて、新しく買ったナイフを代わりにベルトに差すことになるんだけど、普段使いするナイフはどの属性が良いんだろ……。

 今のベルトは一本しか入れる場所が無いから、四本全部持って歩くのは難しい。 


 異空迷宮に行くなら水か氷だ。まあ、とりあえず氷にしておくか。こっちの方がデザインがかっこいいからね。


「これで準備完了か」


 忘れ物などは無い筈だ。大体の物はマジックバッグに突っ込んでるから、マジックバッグさえ忘れなければなんとかなる。


 扉の外からいい匂いが漂ってきた。食事の準備も出来たらしい。

 

 夕食を終えたら、異空迷宮に再挑戦だ。

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