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未来が視えるよ田中くん! 〜Eランク冒険者は、貰ったチートで平和に過ごしたい〜  作者: ____
第三章 Eランク冒険者は、もっとお金が稼ぎたい 
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地上へ 

話進まねぇなぁって自分でも思ってる

「転移した方はすぐに転移石から離れてくださーい」


 白い光に染まった視界。注意喚起の後ろで聞こえるのは、笑い声や話し声。

 段々と、視界が戻ってくる。俺たちが居るのは、どこかのテントの中。横を見れば、静かな白光をたたえた転移石が輝いていた。


 夜のパーキングエリア見たいな印象を受ける。あの、なんとも言えぬ非日常感。

 

「ちゃんと帰って来れましたね!」


 横に居るホトゥルナが俺に笑いかける。


「転移した方はすぐに転移石から離れてくださーい」


 ホトゥルナに何か返事をしたかったのだが、ギルドの職員にそう急かされてしまったので、俺はとりあえず、彼女と共に転移石から離れた。


 握っていた手を離し、ホトゥルナの顔を見る。


「何かこう……。不思議な気分だな……」


 さっきまで暗い洞窟にいたのに、気がつけば照明の付いたテントの中。


「最初はそんな感じですけど、何回か転移してたら慣れますよ! さあ、素材を売りに行きましょう!」


 一度離した俺の手を取って、彼女はテントの外へと歩いていく。


「もう夜ですねぇ……」

 

 ホトゥルナの言う通り、既に空は暗かった。テントの外には急造の照明が立てられて、橙色の光で辺りを照らしている。


「夕方ぐらいだと思ってたけど、思ったより時間が経ってたんだな」

「ダンジョンに居ると時間感覚が狂っちゃいますからね。あ、そこに時計がありますよ」


 ホトゥルナが指差す先、白い支柱の上部に、雑に括り付けられた丸時計。針は三の文字を指していて、今が深夜であることを示している。


「三時……?」

「わぉ。思ったより時間が経ってましたね。素材の買取してくれるかな……」


「何ならもう朝だぞ。そんなに経ってたのか……」 


 びっくりだ。


「道理で眠い訳ですね。宿に戻って寝たいです」


 そりゃ眠いだろう。むしろ何で普通にしてるんだ。もっと眠そうにしてくれないと気が付けないぞ。


 ホトゥルナは小さくあくびをすると、魔力灯の明かりに照らされた周囲をキョロキョロと見渡す。

 昼間よりは少し落ち着いているが、それでもまだまだ人の数は多い。近くを通っていくのは屈強そうな戦士だったり、小さなドワーフの商人だったり。皆が思い思いに喋り、その声が幾つも重なって聞こえてくる。


「素材の買取はあっちらしいぞ。ほら、あそこに看板がでてる」


 木の板(これは、もともとは何かを入れていた木箱の蓋か何かなのだろう)に、ペンキで『素材買取』と矢印がでかでかと書かれている。急造で拵えた感が凄いが、実際急造なのだから文句も言えまい。


「行きましょうか。こんなに人が居るなら、買取所もやってておかしくないですよ!」


 人とテントと出店の間を通り抜け、看板の矢印に従って歩けば、一際大きなテントに着いた。

 ……そう言えば、来た時に見た気もする。

 

 テントの入口は大きく開いていて、中はランタンで照らされている。中に置かれたテーブルに突っ伏す、見慣れた頭。


「すいませーん。アイテムの買取ってやってますか?」


 ホトゥルナの声に反応して顔を上げたのは、目の下に色の濃い隈を作った女性。いつもクエスト報告の窓口にいる人だ。


 えっ……? ここの買取も一人でやってるの……? 

 ブラックだなぁ……。冒険者ギルド。


「やってます。……ふぁぁ。この箱にどーぞ。買取レートは奥に書いてあるので、気に入らない場合は他の商人に売って下さい」 


 テントの奥には黒板が幾つも並んでいて、そこに文字が大量に書かれている。

 黒板の前で眉を顰めているのは冒険者。その横で別の冒険者と交渉しているのは……商人かな? 

   

 ホトゥルナが「試しに覗いて来ますね」と言えば、ギルド職員は「は~い」と返して再びテーブルに突っ伏した。

 最初は居眠りしているだけかと思ったけど、もしかしてこの人、こうやって睡眠時間を確保しているのか……?


「銀貨50枚」

「銀貨35枚です」


「……銀貨48枚」

「銀貨36枚」

  

「銀貨よんじゅう……って、上がり幅小さくない? アタシのこと馬鹿だと思ってるなら、この話は無しだよ」

「ああすいませんすいません! 銀貨43枚までなら出しますから、どうかそれだけはご勘弁を!」


 交渉していた商人と冒険者は、どうやら話がついたらしい。 

 ぺこぺこと頭を下げる大柄なオーガの男と、不機嫌そうに腰に手を当てる鳥人の女は、そのまま二人で連れ立ってテントを出ていった。


「わぁ~思ってたよりも沢山のモンスターが居るんですねぇ……。あ、二層から帰ってきてる人も居るらしいですよ」


 黒板に書かれているのはモンスターや素材の名前とその買取価格。層ごとに分けられているようで、今は二層までの記述までしかない。

   

「二層のモンスターはまだ少ないな」


 二層のモンスターはまだ数種類しか書かれていない。


『ジュエルサラマンドラ:金貨2枚 【推定C級】』

『炎熱骸骨:銅貨8枚 【推定C級】』


 二層のモンスターだからって高値で売れる訳では無いらしい。なんだ銅貨8枚って。使いみちないんだろうな。


「帰ってこずに探索してる人も多いでしょうからね。私たちだって、あのまま行ってたら帰ってきてないですし。……帰らぬ人になってた可能性もありますけどね」


「実際居るだろうしな。俺たちが持って帰ったモンスターの買値は幾つだ?」

「えっと~火吹きウサギが銀貨12枚。ダッシュキャロットが銀貨3枚。ダッシュキャロットの幼生が銀貨20枚……。幼生がやけに高いですね」


「味が違うんじゃないか? そっちの方が美味しいとか」

「そういうことなんですかね。まぁ、高く売れるならそっちの方がありがたいんですけど」


「あのニンジン、ダッシュキャロットって名前なのか。……安直な名前だな」

「一目見て分かるから良いですけどね。変に捻った名前より、こっちの方が分かりやすくて好きです。ダッシュキャロットって聞いたら、すぐに思い出せるじゃないですか」


「いい走りっぷりだったからな……」


 とんでもない健脚だった。ウサギから逃げる為に進化したのだろうか。


『炎爆蟻:銀貨6枚【推定D級】』

『炎爆女王蟻:金貨24枚【推定B級】』  


「この炎爆蟻って言うのが、俺たちが戦ったあの爆発する蟻か」

「たぶんそうでしょうね。おぉ……思ったより高い……。この下に書いてあるのが、扉に書いてあったおっきな蟻の名前でしょうね」


「女王蟻って書いてあるし、あの蟻のボスか。誰か倒した人間が居るんだな」

「二層に行くにはあの部屋を通らなくちゃいけなそうですし、あの扉を通る為に倒したんでしょうね」


『青鬼火:銀貨21枚【推定D級】』 


「えぇ……ッ!? 凄い値段しません!?」

「ホトゥルナが倒してたあの炎の玉か。回収しとけば良かったな」


「何でこんなに高いんですか……」

「使いみちがあるんじゃないか? 次からは回収しよう」


「そうですね。くそう……全部回収したら金貨3枚くらいにはなりましたよ……」

「勿体なかったな」


 回収しようって言ったのに! とは思うけど、俺よりホトゥルナの方が落ち込んでるから何も言わないでおこう。


「ハンテンアカドクガエル、銅貨10枚。安いですね……。こいつはハズレですか」

「そもそも出会う事が少なかったからな」


『スパイダーローズ:銀貨25枚【推定D級】』

『巨大スパイダーローズ:金貨8枚【推定C級】』

『おばけひまわり:銅貨39枚【推定D級】』

『ファイアスライム:三体で銅貨1枚【推定D級】』


 ※ここに記載された買取価格は時価であり、変動の可能性があります。


 ご丁寧に注意書きがされてるな。……まあ、たくさん持ち帰られたら値は下がるだろう。


「スライム安くないか……?」

「ファイアスライムって、地上でも見かけますもん。高くなる理由が無いですからね」


「そうか……。倒して持ちあるくくらいしか使いみちが無いな……」

「結構温度高いから、ずっと持ってると火傷しちゃいますよ」


「持ち歩くことすら出来ないのか。それなら安くても仕方ないな……」

「どんな基準なんですか……。それより、この巨大スパイダーローズって言うのも扉に書かれてたモンスターっぽいと思いません?」


「それっぽいな。ランクが高いし」

「これは、あの巨大トーチャーもいい値段が期待できそうですよ!」


「ただ、どこにもトーチャーの値段が書いてないな。まだ俺たち以外は見つけてないのか」

「みたいですねぇ。すいませーん! ここに書いてないモンスターって値段分かりますかー?」


 ホトゥルナが聞けば、机に突っ伏していたギルド職員がのそりと起き上がった。


「えっと……どんなモンスターです……? ふぁぁ……」

「トーチャーです。一体、特別大きいやつも居ます」


「特別大きい……。もしかして、特別な扉見つけました……?」

「絵が描いてある扉だったら見つけました」


「大きいトーチャーは、その扉の前にいました?」

「はい」

 

「そうですか……。それなら、商人ギルドの方で鑑定してから買値を決めるので、少し待っていただく事になります……。ふぁぁ……。トーチャーの方は、金貨1枚が今現在の買取価格です……。後で書き足しておきますね……」


 聞いてた通り高いな。……金貨数枚と聞いてたから、それでも少し安くなってるのだろうけど。


「どれくらい居ました……?」

「めちゃくちゃいましたよ。50以上は仕留めたと思います」


「大量に居るんですか……。値段下がりそうですね……。まあ、今は普通の買取価格で良いか……。詰め替えられる量です?」

「ちょっと多いですかね? サイズが大きいのも何体か居ますし」


「それなら、マジックバッグをお預かりします……。適当に時間つぶして待ってて下さい……。どーぞ、これが整理券です」


 どうやって詰め替えるんだろって思ってたけど、特にそういうのは考えなくて良いようだ。


 ギルドの職員にマジックバッグを預けて、代わりに小さな木の板を渡された。白いインクで『1』と書かれている。


「どれくらい待てば良い?」

「大きなトーチャー以外はすぐに鑑定できます……。ふぁぁ……。大きい方のトーチャーは一時間くらい待って下されば大丈夫です……」


 俺は「分かった。ありがとう」と言って、横に居るホトゥルナに「……どうする? 待つか?」と聞く。

 少し眠そうなホトゥルナは「せっかくなので待ちましょう」と、近くの長椅子に座った。


 一時間か……。そうなると4時になるけど、ホトゥルナは起きてられるのか?

 そんな事を思ったけれど、さすがに大金になりそうなこのアイテムたちを俺に預けて先に帰るというのは不安だろう。彼女が待つというのなら、おとなしく待つことにしよう。

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