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未来が視えるよ田中くん! 〜Eランク冒険者は、貰ったチートで平和に過ごしたい〜  作者: ____
第三章 Eランク冒険者は、もっとお金が稼ぎたい 
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閑話

2話前、書き変え前の話を掲載していました。とりあえず体裁だけ整えましたが、細かい部分で違和感があるかもしれません。申し訳無い。本当はあの二人と会話しない流れだったのです。

 爆発する蟻を回収して、俺達は先へ進む。そろそろ休憩したいのだが、蟻の仲間がやってきたら面倒だということで、もう少し進もうと言うことになったのだ。


「所々空いた穴は蟻の巣に繋がってるんですかね……。這っていったらギリギリ入れそうな気がするんですけど、さすがに危ないかな?」

「止めとけ。さっき蟻が出てくる所を見たぞ」


 この部屋の岩の壁に空いた穴は、蟻の巣か、それとも蟻の移動用通路か。とりあえず、蟻がこの穴を使っていることは間違いない。

 

「あ。やっぱりそうなんですか。こういう穴の奥って、他の冒険者が中々探索してないから、たまーに珍しいアイテムが見つかったりするんですよね」

「へぇ……。けど、このダンジョンは出来た直後だし、さすがにそんなお宝は無いんじゃないか? わざわざ危険を侵して探しに行く程じゃないと思うぞ」


 少なくとも、弓使いが入るべきサイズの穴じゃない。まともに弓も使えんぞ。


「そうですかぁ……。むしろ、蟻の巣なら珍しい物が沢山たまってる可能性ありません?」

「それは分からんことも無いが……。ここの部屋以外に行ける場所が無いなら、そんなにレアな物は無いと思うぞ?」


「確かに……それもそうですね。それなら、穴に入る意味は無いですか……」


 少しだけ残念そうに、ホトゥルナは両手を合わせて指を伸ばす。

 これは彼女が不満のある時に見せる癖だ。更に不機嫌になると髪の毛をいじり始める。


 めちゃくちゃ分かりやすいぞ!


「そんなに穴に入りたかったのか? 狭い所が好きとか?」

「え……!?  あ、いや、そんなに分かりやすい反応してました?」


「おう」

「何か恥ずかしいですね……。昔から好きなんです。狭い所に入るの。安心するっていうか、ほっとするというか……。変なのは分かってるんですけど、どうにも止められなくて……」


「別に変じゃないと思うけど、蟻の巣に入ってほっとするのは間違ってるぞ。それだけは確かだ」


 安心とは程遠い場所だ。もっと別の穴に入りなさい。 


「だから入りはしませんって!」


 あいて。ちょっと強めに小突かれた。照れ隠しが雑なんだよなぁ……。


「あ、ここら辺、巣穴ありませんね。一旦休憩しません?」

「分かった。休憩って言っても、魔力の補給だろ?」


 またの名を吸血タイム。

 俺は床に腰を下ろして壁にもたれ掛かる。疲れてはいないが、血を吸わせるとなると立ったままではやり辛い。


「ほれ、どーぞ」


 袖を捲り上げ、腕の内側をホトゥルナへ差し出す。


「わぁい! ありがとうございます!」


 俺の腕にかぶりつくホトゥルナ。髪の毛が腕を撫でて、少し擽ったい。

 どうにも変な気分だな……。この絶妙な空気感。

 

 母乳を与える母親の気分はこんな感じなのか? いや……俺はホトゥルナの親じゃないから、それは少し違うか……。


 彼女の舌が俺の腕の上で円を描く。なんだなんだ。もっとおとなしく吸えないのか。


「おい。暇だからって俺の腕を舐め回すな。擽ったい」

「ほへんははい」 


 ごめんなさいと言っているのだろう。

 喋られるとそれはそれで擽ったいが、そこまで文句を言うのもアホくさい。


「回復薬飲むから、気絶しない程度に吸って良いぞ。一応、本当に回復するのか試しておきたいしな」


 コップ半分ぐらいの血を流しても平気なのは確認してる。彼女に吸わせてあげれば良かったのだろうけど、ちょうど外出していて居なかったのだ。

 一応事前に調べて、実験もしているが、プラシーボ的な思い込みで元気になってただけの可能性もある。いざという時に困らぬよう、少し余裕のある今、確認しておきたいのだ。


 鞄を漁り、回復薬の小瓶を取り出す。かなりの数買い込んでいるから、あまり心配はしなくていい。

 

 これっていつ飲むべきなんだ……? ホトゥルナが吸い終わってから? それとも吸ってる途中?

 持続回復の効果はあるらしいが、その効果量についてはよく分かっていない。


 とりあえず飲んどくか……。

 

 小瓶を傾け中身を飲み下す。蜂蜜の様な甘みと、鼻に抜ける鼻の香り。飲みやすい様に味と香りを付けているのだ。行きつけの薬屋で原液を飲ませて貰ったことがあるが、馬鹿みたいに苦い透明な水だった。信じられない青臭さもあったな。 


 回復薬を飲んでしばらく。ホトゥルナが口を離して「回復薬のせいで、浅く噛んだらすぐに塞がっちゃいます。強めに噛んで良いですか?」と聞いてきた。


「強めにってどれくらい?」

「割りとしっかり」


「痛い?」

「たぶん」


「とりあえず試しに噛んでみてくれ」


 俺が言うと、かぷりとホトゥルナが噛み付いて……。


「いてててててて! 痛い痛い! 待ってくれホトゥルナ!」


 本当に痛いぞ。シンプルに痛い。


「あ、やっぱりキツイです? まだ傷つけてはいないんですけど」

「めっちゃしっかり歯型ついてるじゃん……。この勢いで噛まなきゃ駄目なのか?」


 凹んだ肉を撫でながら、俺は滲んだ涙を拭う。


「回復薬の効果で、傷があっという間に塞がっちゃうんです。腕の血管はそこまで太くないから、その分しっかり噛まないと……」

「分かった分かった。ちょっと待てよ。太い血管って何処にあるんだっけ」


「首ですかね? 首ならそんなに強く噛む必要はありませんよ。ちょくちょく噛み直しますけど、それで十分吸えます」

「よし。なら首だ。あの勢いで腕を噛まれたら、たぶん途中で泣く」


 既に若干涙目だもんね! 回復していても痛いものは痛いんだよ!


「首から吸って良いんですか? その、跡残るかも……」

「気にしないぞ。……十字隊だっけ? あの怖い人達に聞かれても、適当に誤魔化せばなんとかなるだろ」


 それに、初っ端しっかり首から吸っただろ。今更何を気にするんだ。頭を倒して、吸いやすいように首を差し出す。


「ほれ、これなら吸いやすかろう。早くしないと回復薬の効果切れちゃうから、早めに吸ってくれ」

「そ、そうですか……。良いんですか……。それじゃあ、その……いただきます」


 おずおずと、ホトゥルナが俺の身体にもたれかかって、首筋に牙を立てる。チクリと痛むがそれだけだ。さっきと比べると天と地の差だ。全然痛くない! 


 回復薬キメて吸血させるときは首からだな。腕は俺の痛覚神経がぶっ壊れない限り無しだ。吸血のたびに泣かされるとか嫌だからね。

 

 腕に噛み付かれていた時も思ったけど、髪が当たってこそばゆいんだよな……。結んで貰おうか……。


 俺がそんな事を考えている間に、ホトゥルナは数回姿勢を変えて、吸いやすいベストポジションを探していたようだ。最終的に、抱きつくような格好に落ち着いている。

 他人に見られたら誤解されるなこれ。血を吸わせる時は、周りに気を付けないと……。


 そもそも人に見られちゃ駄目か。気にしなくていいな。むしろ、見られた時に言い訳できそうなこっちの姿勢の方が都合が良い。

 やはり首が正義か……。

  

 細い喉が、規則正しく上下しているのが分かる。服の匂いか、甘い香りが鼻腔をくすぐった。この匂い好きだな。ソーディ、洗剤変えた? 帰ったら聞いてみよう。


 暇だし、何か喋るというのもやり難いし、手持ち無沙汰な時間が続く。


「……結構吸ったと思うんですけど、まだ平気ですか?」


 ホトゥルナが口を離して言う。その口から覗く白い歯が少しだけ血で汚れていて、改めて、彼女がヴァンパイアで有ることを感じた。

 

「まだ平気だな。もうちょっと吸っても良いぞ」

「は~い! いただきまーす!」


 回復薬って凄いな。本当に血も回復してるらしい。これなら毎日吸われても大丈夫だ。

 

 「噛み直しますね」と言っていた通り、彼女は何度か俺の首を噛み直している。甘噛と言うには少々痛いが、段々この痛みにも慣れてきた。慣れって凄いな。

 リラックスしているのか、それとも単に血を吸うのに集中しているだけなのか、ホトゥルナは俺が男であるという事を忘れて身体を預けている。


 嫌でも彼女が異性であることを意識してしまう。手の位置とかどうしたら良いんだ。身体に手を回すのも違うし、だからと言って両手を上げるのも違う。


 なるべく身体に触れないよう手は後ろに回しておこう。


 駄目だ……。体勢が変わってホトゥルナとの密着度が上がってしまった。彼女の身体の感触が伝わってきてしまう。一度意識し始めたらどんどん気になってくるぞこれ。


 マズいマズい。心を落ち着けよう。邪な気持ちを抱くのは良くない。ホトゥルナは大切な仕事仲間で、そういう感情を抱いていい相手じゃないのだ。そういう感情を抱いていい人なんていないだろうけどね!

 

 それから数分。壁のシミを眺め、心を無にして彼女の吸血が完了するのを待つ。

 ぷはぁ。と微かな吐息と共にホトゥルナが俺の首から口を離す。ハンカチを取り出して俺の首をそっと拭くと、身体を離して俺と視線を合わせた。 


「お腹いっぱいです。ご馳走様でした。……これだけ吸っても平気なんですか?」 

「平気だな。まだ吸われても平気だぞ」


 精神的にはあまり平気じゃないがな! 煩悩を捨てる修行が必要だ。

 

「凄いですね……。気絶しないギリギリだと思うんですけど……。試しに立って見て下さい。立ちくらみとか無いですか?」


 言われた通りに立ち上がる。少し早めに、敢えて立ちくらみをしそうな動作で。

 

「立ちくらみも無いな。四肢の感覚も問題ない。大丈夫だ」

「わぁ……。凄い……。それなら毎日吸っても大丈夫そうですね!」


「魔力は回復したか? 少し待たなきゃ駄目なら、もう少しここで休憩して良いぞ」

「いえいえ。しっかり回復しましたし、何なら増えてます! すぐに出発して平気ですよ!」


 「それなら行くか」と俺が言えば、しゃがんでいたホトゥルナが立ち上がる。彼女は照明の魔術を唱え直し、俺は床に置いていたランタンを手に取った。


「こんなに血を吸ったのは初めてです。まさか、人の血でお腹いっぱいになることがあるなんて思いませんでした……!」

「そりゃ良かった。俺の血で良ければいつでも吸っていいぞ。回復薬と引き換えだがな」

  

「吸いたい時は回復薬持って行きます! ふんふんふ~ん。幸せですねぇ……」


 上機嫌なホトゥルナと共に、俺は岩の通路を歩く。ホトゥルナの魔力も回復したし、まだまだダンジョンでアイテム収集ができそうだ。

 とりあえずこの部屋を抜けたいな。

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