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未来が視えるよ田中くん! 〜Eランク冒険者は、貰ったチートで平和に過ごしたい〜  作者: ____
第二章 Eランク冒険者は、仲間とお金を稼ぎたい
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決起集会

たまに投稿時間を変えて新規読者を獲得したいっていう、姑息な考えを抱いています。変な時間に投稿してたら察して下さい。

「聞きました? あのダンジョン、Sランクの冒険者も深層に辿り着けてないんですって」

「何日も掛けてやっと一層突破。奥にどんなお宝が眠ってるんだろうね」


「凄い価値ある物に違いないわ。けど、その分危険な強いモンスターも居るでしょうね。話によれば、指名手配されている元冒険者も姿を見せてるらしいわよ」

「例の十字隊殺しだよね? 元Sランク冒険者の『白狼』だっけ?」


「違いますわ。『銀狼』ですわよ」

「そうそう。銀狼。かっこいい名前だよね。僕もそんな二つ名が欲しいよ」


「犯罪者にかっこいいなんて言わないで下さいませ! 私の品性まで疑われてしまいますわ!」

「ごめんごめん」


 俺のすぐ近くで、冒険者の二人組が話をしている。

 盗み聞きをしている訳じゃない。嫌でも耳に入ってくるのだ。 


 ここはイミシアイアの大広場。時刻は昼。天気は良く、少しだけ肌寒い。

 決起集会があると言うのでやって来たのだが、かなりの人の数。満員電車とまでは行かないが、混雑した正月の神社くらいの人が居る。


「凄い人の数ですねぇ……。この人数がみんな異空迷宮に行くんでしょうか」


 俺の前でホトゥルナが言った。昨日は後ろに居ると言っていた彼女だが、前に居てくれた方が見失わずに済むので前に来て貰ったのだ。

 ここに来るまでの道中で三回逸れたからな。


「だろうな。全国から冒険者を呼んだって聞いたし、まだまだ増えるんじゃないか?」

「ひぇ~。そんなに入るんですかね~。普通のダンジョンだったらパンクしちゃいますよ」


「そういうのを含めて話をするんじゃないか? 入場制限とかありそうだけどな」

「えぇ~。ランクで制限とかされないですかねぇ……」


「そうなったら諦めよう。……そんなことするなら、最初からBランク以上とかで人を集めるような気もするけどな」

「それもそうですね。あ、ギルドマスターが出てきましたよ!」


 広場の真ん中に組まれた特設の足場。かなりしっかりした作りの木の台で、何も知らずに見れば、コンサート会場かなにかと勘違いしてしまいそうな光景だ。

 筋骨隆々な獅子頭の男が、たった一人で台へと上った。護衛も居ないが、彼の強さなら必要ないという事なのだろう。

 

 先ほどまでの騒々しさはどこへやら、広場は静寂に包まれる。誰もが、彼の言葉を待っているのだ。

 

「よく集まってくれた皆の者ッ! 我が呼び掛けに応えてくれた事、感謝する!」


 台の上で両手を開き、ファーガは大きな声で叫んだ。魔術を使っているのか、それとも地声が大きいだけか、広場の端に居るはずの俺にも、ハッキリと声が聞こえる。


「こうして集まって貰ったのは他でもない! 平原に現れた大穴についてだ!」  

 

 まあそうだよな。このタイミングで人を集めるならそれ以外無い。

 

「既知の者も多いであろうが、改めて説明させて貰おう! 先日の地震によって現れたあの穴は、内部に巨大な原初魔力反応を持っている! 発生源は不明! 未だにその深部に何があるのかは判明していない!」 


 ホトゥルナが振り返り、「調査は終わったって聞きましたけど、まだ分かってないんですね」と小さな声で言うので「みたいだな」と、やはり小さな声で返しておいた。


「あの穴の出現と共に、大陸中の原初魔力の活性化が確認された! 多くのダンジョンで危険なモンスターが現れ、現在、殆どのダンジョンが閉鎖! 我々冒険者ギルドは、穴の深部に眠る何かが、原初魔力の活性化を引き起こす原因であると考えている!」


 「やはりか……」とどこかで誰かが呟く声が聞こえる。


「穴は空間魔術によって保護されていて、そのままでは下りることが出来ない! 穴を保護する空間魔術は高度かつ未知の術であり、その解除は困難! だが、内部に侵入する手段が無い訳ではない! 穴の上に扉が一つ! これを通ることで、内部へと侵入が可能だ!」


 未知の空間魔術って、一体誰がそんな物を施したんだろう。

 冒険者ギルドでも分からない魔術って、かなり異質なものだと思うのだけれど。


「穴の内部はダンジョンとなっている! 空間の繋がりが不安定! 内部構造も絶え間なく変化する異質な迷宮だ! 我々の調査でも、深部への侵入は叶っていない! 更には、内部に侵入者を排する為の罠や危険なモンスターも確認されている!」


 罠まであるのか。本当に誰が何の為に作ったんだ……?


「調査によって分かったのは、これが遥か古代に作られたダンジョンであるという事だ! 遥か昔、我々の祖先が作り上げた迷宮! その深部に眠る何かを守るため、この迷宮は作られたのであろう!」


 へぇ……。古代人……。3000年以上の歴史があれば、現代人が知らない物もあるか。


「我々はこのダンジョンを異空迷宮と名付けた! 異空迷宮には出口が存在していない! 侵入した扉すら別の場所へ繋がり、一度閉じれば繋がる場所も変化する! 本来であれば二度と出られぬ迷宮であるが、我らには転移の魔術がある!」


 転移石が無かったら二度と出られないって……それはダンジョンじゃなくて、侵入者を殺すためのトラップなんじゃ無いのか……? 大切な物を守る為の。

 

「広大な異空迷宮を、我らギルドだけで踏破することは不可能だった! ぜひとも皆の力を借りたいッ! 内部に存在するモンスターやアイテムの多くは未知の物! その価値は計り知れないものである! もちろん、踏破した者には相応の報酬も用意しよう!」


 少しだけ、広場がざわつき始めた。相応の報酬という言葉に反応したのだろう。

 どんな報酬なんだろうね。俺じゃ奥まで行くなんて不可能だろうから、知った所で意味のないことなんだろうけど。


「異空迷宮の近くには、可能な限りの施設を揃えた! 宿、治療所、宿泊施設! 転移石の利用も可能だ! 冒険者の皆は、異空迷宮へ向かい、内部の探査を行って欲しい!」


 ざわめきが大きくなる。どこからか口笛の様な物も聞こえてきて、観衆のボルテージが高まっているのを肌で感じた。


「たった今より、異空迷宮への立ち入りを許可する! 内部への侵入に制限などは無い! 人数も、ランクも不問! 富と名声を欲する冒険者であれば、誰でも異空迷宮へ入る事が出来る!」


 会場が、割れんばかりの歓声に包まれる。揺れる空気とあまりの声量に、俺は思わず顔を顰めた。

 広場に居た何人かの冒険者は、我先にと移動を開始する。移動する人々の数は段々と増え、後ろ向きの人の波が生まれる。


「うぐ……。タナカ……。潰れます……このままじゃ潰れちゃいます……。後ろに、後ろに行って下さい……」

「お、おう……。大丈夫か?」


 俺の体に押し付けられ、苦悶の声を上げるホトゥルナ。少しだけ移動して、彼女の為にスペースを作る。


「大丈夫じゃないです……だから人混みは嫌いなんです……」


 忌々しそうに言うホトゥルナ。これで好きになれという方が酷だ。


「さて、これでギルドマスターからのお話は終わりです。それでは次に私から、異空迷宮へ入る際の注意事項を説明させていただきます」


 あ、まだ話は続くんだ。

 拡声器の様な物を持ったギルドの職員が台に上がって、代わりに話を始める。


「ギルドマスターが説明した通り、異空迷宮には出口というものが存在しません。侵入するための扉を含め、異空迷宮の扉の繋がりは不安定なのです。なので、転移石を持たずに侵入した場合、冒険者ギルドはその安全を保証しません」


 ここまで言ってもやらかす人は出るんだろうね。


「既にギルドの制止を振り切り、内部へ侵入している者が数名居ます。我々も人員を投入し、捕縛を試みては居ますが、異空迷宮の広大さが災いし、未だに捕らえられてはいません」


 あ、さっき話してた元Sランク冒険者の話かな? ギルドの制止を振り切るって相当強いだろうね。


「内部で会敵した場合は、各自の判断にお任せ致します。彼らに殺されたとしても、冒険者ギルドとしては責任を取れません。ご注意下さい」


 わぁ他人事。これを最初に話さないの、若干の悪意を感じるぞ。話を最後まで聞かない奴らが悪いんだろうけど。


「また、内部には休憩所も無ければ照明もございません。明かりや食料を持たずに入れば相当に苦戦するでしょう。ご注意下さい」


 明かりが要るのか……。買ってたっけ?


「一部の商人が個人的なアイテム買取を行うようですが、出来ればギルドを通してアイテムの取引を行って下さい。トラブルになった場合であっても、冒険者ギルドは関与いたしません。それと、冒険者ギルドの職員が数名、異空迷宮内で行方不明となっています。発見した場合は、連れ帰って頂けると助かります」


 おいおい。なんでそれを最初に言わないんだよ。すごく大事な話じゃん。


「これで注意事項はお終いです。それでは皆さん、奮ってダンジョン攻略をお願いします」


 ギルドの職員はそう言うと一礼して、台から下りた。前に居たホトゥルナがくるりと振り返り、俺の体をそっと押す。


「行きましょうタナカ! いざ異空迷宮へ! です!」

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