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未来が視えるよ田中くん! 〜Eランク冒険者は、貰ったチートで平和に過ごしたい〜  作者: ____
第二章 Eランク冒険者は、仲間とお金を稼ぎたい
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買い物 (上)

 昨日一日中降り続いていた雨は夜明け前に止み、今日は気持ちの良い青空が広がっている。

 湿った道路は太陽の光を反射し、街灯についた水滴はキラキラと輝いていた。

 

 俺とホトゥルナはイミシアイアの街を歩いている。昨日出来なかった買い物を済ませてしまうつもりだ。ダンジョンへ行くのに必要な物資を調達し、出来れば明日にでも出発したいというのが、ホトゥルナの考えらしい。


「で、何が必要なんだっけ?」


 俺は隣にいるホトゥルナに尋ねた。


「色々必要です。とりあえず転移石は確定。寝袋かテントも欲しいですし、明日すぐに出発するなら食料も買っておきたいですね」

「マジックバッグに入れておけば物は腐らないらしいからな」


 だから物価が訳わからないことになってるんだろうね。腐らないってとんでもないことだよ。


「そうですね! そう言えばマジックバッグがあるんでした! いくらでも物が詰め放題! 素敵ですね!」

「マジックバッグが無いパーティーは、どうやって物を運んでいたんだ?」


「必要最低限の荷物を持って、残りは現地調達です。食料とか、燃料とか。さすがに薬とかは持っていきましたけどね」

「へぇ……。それなら、着替えとかもできそうに無いな」


「浄化の粉があるから、着替えは出来なくても困りませんよ」

「浄化の粉?」

 

「振りかけた場所の汚れを落としてくれる不思議な粉です」

「どんな仕組みなんだ……」


 魔力って凄いね。もう訳わからないよ。


「さぁ……。原理も原材料も製造方法も全部秘密ですから」

「誰が作ってるんだ? 冒険者ギルド?」


「有名な魔道具師です。名前は忘れましたけど。道具屋に売ってるでしょうから、ついでに買ってしまいましょう」

「そうだな。……なあ、ホトゥルナ。そういえば、ダンジョンに行くってなるとどれくらいの日時が必要なんだ? 一日二日じゃないよな?」


「ん~。場所にもよりますけど、移動だけで一日掛かる様な場所もありますから、もうちょっとかかると思います。一番近いダンジョンでも4時間位かかりますから」

「街の近くには無いのか……」


「あるにはありますけど、貴重な素材もモンスターも、全部取りつくされてますよ」

「そういうことか……」


 それもそうだな。


「ダンジョンって、徒歩で移動するのか?」

「いえ。移動には馬車を使います。歩いて移動なんてしていたら、それこそ一週間とかかかりますよ?」


「馬車で4時間って、結構かかるんだな……」

「馬車駅に行って、そこからは徒歩ですから、もうちょっとかかります。まあ、一時間も歩けばつくと思いますよ」


 遠いなおい! まあ、貴重なものが取れるとなると、それくらい人里離れていないと駄目なのだろう。


「最初は転移石を買いましょう。とりあえず、これが一番高いですからね!」

「おう。道具屋に売ってるのか?」


「そうです。冒険者用の道具屋だったら、だいたいどこでも置いてます。馬車駅で買ってもいいんですけど、少し高いんですよね」


 パーキングの飯が高いみたいなことか。どの世界でも考えることは一緒なんだな……。


 

「ここで買いましょう」


 着いたのは、冒険者ギルドがある通りの大きな道具屋。『アイテムショップ・サルサル』と看板が出ている。一度来たことがある店だ。


「いらっしゃいませ~。冒険者の方ですか~?」


 以前来た時とは違う店員が出てきた。一等地に建っている店は、店員もたくさんいるのかな?


「ダンジョンに行く予定なんですけど、転移石ってありますか?」

「ありますよ~。二階のダンジョン用品のコーナーにどうぞ~」


 ダンジョン用品……。耳慣れない言葉だなぁ……。これから慣れていくことになるのだろうけどね。


「ありがとうございまーす。行きましょう、タナカ」


 ホトゥルナと共に二階へ。どこからか、つんとした刺激臭。奥に調合場と掛札のかかった扉があった。あそこで薬を作っているらしい。

 その扉の前、『ダンジョン用品』と書かれた棚。


「ありましたよ。これですこれ。これが転移石です」

「思ってたより大きいな……」


 透き通った正方形の、ガラスとも水晶とも違う何か。その中心に、小さな光球が揺らめいている。


「転移石は中身の光ってるやつです。あ、割らないでくださいね。割ったら転移しちゃいますから」

「割って使うのか」


「そういうことです。魔力がなくても使えますよ!」


 わぁ素敵。ありがたいな。


「これが幾らだっけ?」


 値札を見る。


『転移石:銀貨2枚と銅貨50枚』


 聞いてはいたけど、高いな。


「二人で出すと、銀貨1枚と銅貨25枚ですね。銅貨あります?」

「あるぞ。……薬とかもここで見ていかないか? せっかく道具屋に来たんだから、まとめて見ていったほうがいいだろ」


「そうですね。そうしましょうか」


 解毒薬に回復薬。それに、浄化の粉。ロープやら魔力で光をともすランプやら。そんな物をいろいろ買って、結局銀貨3枚と銅貨が80枚くらい無くなった。


「ありがとうございました~。またどうぞ~!」


 店員に見送られ、おおきな紙袋を持って道具屋を後にする。


「結構そろいましたねぇ。テントも寝袋もないって言われるとは思いませんでしたけど」

「ホトゥルナが昔使っていたテントとかは無いのか?」


「ありますけど、二人は入れませんよ? 交代交代で休むなら一つでも良いですけど……」

「いや。俺は要らんぞ? 寝ないからな」


 正しくは、寝られない。だけどね。


「寝ない?」

「ほら、疲れないんだよ。体も頭も。だから、睡眠の必要がないんだ。おかげで眠気もない」


「え……? 昨日の夜は何してたんですか?」

「筋トレしてたぞ。部屋で」


「ずっと?」

「ずっと」


 冷静に考えたら凄いことやってるな。


「その割には筋肉少ないですよ……?」

「始めたの、つい最近だからな」

 

 足の筋肉はちょっとだけ増えてる気がするんだ。気のせいかもしれないから、まだ何とも言えないけどね。


「私とあったとき……あの、私の部屋にいたあの時は寝てませんでしたか?」

「あれは失神してたんだ。寝てはないぞ」


 思えば、意識をなくしたのはあの時だけだな。


「ほぇ……」


 ホトゥルナは、絶句して口を閉じてしまった。


「というわけで、ホトゥルナのテントがあるならテントを買いに行く必要はないぞ」

「……わ、わかりました。本当に要らないんですか?」


「ああ」

「ということは、交代交代で見張りをしなくてもいいってことですか……?」


「ホトゥルナが寝てる間、モンスターが来ないか見てればいいのか?」

「そうです。……モンスター避けの魔術がかかってる休憩所ならそれも必要ないですけど、休憩所ってそんなに多くないですからね。モンスターが普通にいるところだと、誰かが見張りしなきゃいけないんです」


「まあ、それくらいならやるさ。どうせ暇だからな」

「わぁい! ということは朝までゆっくり寝ていいってことですか!?」


「モンスターが来たら起こすぞ?」

「それ以外は起きなくていいんですよね?」


「そうだな」

「やったぁ! ありがとうございます!」


 手をたたいて喜ぶホトゥルナ。

 ホトゥルナが寝ている間は筋トレでもするか……。


「他には何が必要なんだ?」

「後は食料です。ダンジョンの中では料理出来ませんし、においが強い食べ物はモンスターを呼ぶので、なるべくにおいのしない、そのまま食べられる食べ物を買っていきましょう」


 「食料品はこっちですよ!」と歩き出したホトゥルナの後ろをついていく。 


「そうなるとなんだ? いまいちピンと来ないぞ?」

「干し肉とかパンとか……。あとは……とりあえず水と……。まあ、適当に買ってマジックバッグに入れときましょう! どうせ腐らないですから、ダンジョンで使わなくてもいつか使いますよ!」


 適当だな……。まあ良いけどね。


「調理用の鍋とか、そういうやつは私が使ってるやつがあるから大丈夫です!」

「鍋? そのまま食べられるものを買っていくなら、必要なくないか?」


「休憩所は普通に料理してもモンスターが来ないから、料理はできるんです! ダンジョンの中でも、温かい物食べたいじゃないですか!」

「料理できるのか……?」


「タナカはできないんですか?」

「人並みには出来るぞ」


 親が仕事で遅くなるから、兄弟で食事を作ってたんだ。人並みといいつつ、そこそこ自身がある。


「よかった! 私は全然できないんです! 料理は任せましたよ!」

「できねぇのかよ……」


 できそうな言い方だったじゃん!


「そういうの、教えてもらったことないんです」


 そういえば、母親と早くに死別したといっていたな。すっかり忘れていた。

 この話題は危険だ。さっさと切り上げよう。


「……そうか。わかった。俺がやるよ」

「へへ! ありがとうございます! タナカの料理、楽しみにしてますよ!」


 笑顔を浮かべ、ヴァンパイア混じりの弓使いは俺に振りかえる。陽光が濡れた道路に反射して、神秘的な光となって彼女を照らしていた。

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