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未来が視えるよ田中くん! 〜Eランク冒険者は、貰ったチートで平和に過ごしたい〜  作者: ____
第一章 Eランク冒険者は、貰ったチカラで平和に過ごしたい
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マジックバッグ! (下)

「ええっと……あと何を説明すればいいんでしたっけ?」

「知らん……」


 なんで俺に聞くんだ。なんて、そんな事を思ったのだけれど、俺はふと気になっていたことを思い出した。


「なあカリーナ。これ、水とか空気とかは仕舞えるのか?」


 思い出すきっかけが息苦しさなのは些か不満だが、気になるのだから聞いておこう。


「おお! さすがタナカさん。良いこと聞いてくれますね。このバッグには液体は入りません。何か容器に入っていないと無理です」

「ほう。中で蓋を開けたらどうなる?」


「中で蓋は開けられません。この内部は特殊な魔術結界になっていて……、さっき息が出来なかったでしょう? あれはその結界の効果の一端なのです」

「どういう事だ?」


「私も詳細には知らないのですが、内部の物品の状態を保とうとする効果があるのです。この中に入れた物は腐りませんし、新鮮なままです。代わりに、蓋を開けたりすることも出来ませんが」

「どんな仕組みになってるんだ……」


「さあ……。空間魔術は私の専門外ですので……。冒険者ギルドに所属する天才たちが数年かけて開発した複合魔術結界ですから、仕組みを理解することは出来ません」

「まぁ……使えるなら何でも良いか……」


「色々な術式を組み合わせすぎて不具合も多いですから、あまり気にしないで下さい」

「魔術ってそんなに融通が効くのか?」


 まるでプログラムみたいだな。なんて思ってしまう。プログラムと言っても伝わらないだろうから、口に出すことはしないけれど。

  

「ええ。……タナカさんに説明した所で無駄でしょうから、詳しくは省きますけど、魔術は細かく分解したり組み合わせたり出来ます。その組み合わせで、魔術の効果も変わってくるのです」

「なんで詳しく教えてくれないんだ。理解できるかは置いといて、教えてくれても良いだろ」


「教えても魔術使えないじゃないですか。無駄なことはしない主義なんです」

「……そうか。うん。そうだな」


 確かに無駄だ。こんど別の人に聞いてみよう。


「ところでタナカさん」

「なんだ?」


 まだ説明しなきゃならないことがあるのか。ギルド職員も大変だな。


「いい加減『さん』付するのが面倒なので、省いていいですか?」

「……別に良いぞ」


「ああ。良かった。駄目と言われたらどうしようかと思っていた所です」


 カリーナは、ぱんと手を叩いて、バッグを俺に手渡した。


「仕舞える物の大きさは、飛竜の死体くらいなら仕舞えます。それ以上の物は解体しなくてはなりません」

「飛竜? どれくらいの大きさなんだ?」


「あまり気にしないで下さい。仕舞いたいものを中に入れれば勝手に仕舞われますし、大きすぎる物は、仕舞うことを意識しながらその物に触れさせれば吸い込んでくれます。唯一気を付けなくてはならないのは、狭い場所で物を取り出すときですが……。さすがに、そんな間抜けなことはしませんよね?」

「もちろんだ」


 一度痛い目を見たからな。同じ轍は踏まないぞ。


「さて、説明はこんなものでしょうか。何か質問はありますか?」

「質問か……。マジックバッグと関係なくてもいいか?」


「ええ。構いませんよ。ふざけた質問だったら、相応の罰を与えますが」

 

 怖い。何されるんだろ。


「真面目な質問だよ。あの、無限かばんとか言う危ないかばんはどうなるんだ?」

「そのことですか。あれは、ギルドの管理化で厳重に管理されます」


「破壊しないのか? 何かあって、奪われたり盗まれたりしたら大変だろ」

「……それはそうなのですが、あのかばんを破壊するのは結構骨が折れるんです」


「そうなのか?」


 まあ、何も考えずに壊したらとんでもないことになりそうな雰囲気はある。


「内部の闇が外側に膨らんで、周囲のものを無差別に消滅させます。あ、安心して下さいね。マジックバッグ内部の闇は、内側に収縮しますから」

「へ、へぇ……」


 良かった。穴開けてみようとか馬鹿なこと考えなくて。


「それでも、破壊できないことはないんだろ?」

「まあ……はい」


 歯切れが悪いな。なんでだ?


「破壊しない理由があるのか?」

「……便利すぎるのです。なんでも入って、重さも変わらない。ひっくり返すことさえなければ、どんな危険物も、どんな凶暴な生物も、封印できる」


「だから壊さない……? 封印という形で保管しているのか……?」

「厳重な管理化に置いています。というか、これって最高機密だったんですけど、普通に喋っちゃいましたね」


 カリーナの目が冷たい輝きを帯びる。


「安心してくれ。喋らないから。頼むから殺さないでくれ」

「ふふ……。冗談ですよ。ギルドに長く居る者なら、みな知っています。第一級封印指定って、この無限かばん内部に仕舞い込む事を言うのです」


「そうなのか……?」


 確かに封印はできそうだ。ひっくり返したら大惨事だけど。


「世に出すのは危険。だけれど破壊するにはもったいない。そんな物を、あのかばんの中に仕舞い込み、封じてしまうのです。無限かばんは、その中に無限かばんを仕舞うことも出来るのです」


 マトリョーシカ的なあれか。


「その中にも物は仕舞えるのか?」

「ええ。勿論。四重に重ねられていて、万一ひっくり返しても、出てくるのは無限かばんだけです。さらにそこから蓋を開けてひっくり返したら、大変なことになりますが」


「第一級ってことは、他の封印方法もあるんだろ? 他にはどんな方法があるんだ?」

「ありませんよ。基本的に、封印は無限かばんを使います。級の区分は、どれくらい奥へ仕舞い込むかの違いでしかありません」


「へぇ~」

「質問はそれだけですか?」


「何かある気もするけど……思いつかないな……」

「それなら、また聞きに来て下さい。それでは、私も仕事に戻ります」


「ああ。ありがとう。助かったよ」


 何度か酷い目に合わされた気がするけど、彼女が居なかったらもっと大変な事になっていただろう。彼女と知り合えていたのは幸運だ。


 軽い微笑みと共に、カリーナは部屋を出ていった。俺もマジックバッグを背負い、冒険者ギルドを後にする。


 さて、なんだかんだ大変な目にも遭ったが、荷物の問題は解決した。このバッグがあれば、倒したモンスターを運ぶことも、貴重な素材を採ることも出来る。


 一度宿に戻って、シャワーを浴びて、ソーディに事の顛末を報告しよう。彼が教えてくれなかったら、俺は知らずに無限かばんを使っていただろうからな。

 

 軽やかな足取りで、俺は宿へ向かう。太陽はちょうど頭上で輝いていて、街は昼時。風に乗って香辛料のいい香りが漂ってくる。


 ああ。腹も減ったな。食事も摂りたいんだ。早く帰ろう。

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