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辺境の地に大豪邸を  作者: ひろにい
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80 後腐れなく解散させる、その方法

……物凄く忙しかったのです。


【原神】というMMORPGやってました。あざと可愛いとしか語れないのだけれども……。






 自惚れたことを言うけど、ルクスルが掃除の仕方を覚えようとしてくれているのは私のためだ。

 それなのに、町が大変みたいだから手伝ってきてと私の口から言うには少しばかり考え無しすぎる。それでは、ルクスルのしていることは私にとってそこまで重要ではないと言っていると同義だ。

 不慣れな仕事に悪戦苦闘するよりも、自分に合った最善の仕事に打ち込むべきではないのかと、ルクスルの自主性を蔑ろにするような真似はしたくない。


「――――ところでノーダムさん。私たちが座っているこの椅子。何を隠そう、私が作ったんですよ……?」


 ……まぁ、結局のところ、私たちの応援程度でどうにかなるとも思えない。それでも必要だと言うのなら喜んで手は貸すし、見て見ぬ振りは出来ないとこちらから手伝いを志願するのもやぶさかでない。

 しかし、何をどうすれば解決したと胸を張ることが出来るのか糸口が全くつかめない。

 この人混みを綺麗に整列させ、人の流れを円滑にし騒動を治める――それなら、増えた住人を町から追い出してしまえば解決するのではないかとさえ思えてくる。

 内心ではそんなことを考えている私に町の人も従いたくはないだろうし、私もいつ限界がきて喚き散らしてしまうとも限らない。私が本当に心配しているのは、穏やかに過ぎていたはずのこの町の平穏が崩れてしまっていることの方なのだから。


「……手持ちの材料だけで作ったな、椅子の大きさのわりに足が細い。用途に応じて材料は調達しろ。支えきれないかもと足を増やしたせいで安定性に欠ける。店先に長年置かれる状況を想定しなかったな……?」


 私を子供の頃から知っているノーダムさんは純粋な評価を下してくれる。誰も私の作品を凄いとしか言わず、駄目だしをしてくれる人は本当に少ないのだ。速さに特化したせいで真っ当な評価をされないのは、自分が招いた結果ではあるのだけれど。


「……だって、まだ使ってくれてるとは思わなかったんですもん」

「椅子は消耗品といえども少しの違和感で買い替えてくれるとは限らん。トテの技術を目の当たりにしたのなら素人には凄く頑丈そうに作られた気もするだろうしな。……この私でさえ、トテの作品だからといって未だに残している物はあるのだぞ」

「……ルクスルと同じことしてますね。やっぱり似た者同士なんじゃないんですか?」

「失礼な! 純粋に、弟子の成長の証として残している!」


 深い意図は無いですけど、ノーダムさんとは座る間隔、一人分開けときますね。


「お話は終わったかい、トテちゃん。こっちもようやく客を捌ききったよ」


 背後を振り返れば、額の汗を拭う串焼きのおばちゃんが笑いかけてくれてた。この忙しい時間帯に何も注文せずに店先の席を占領しててすいません。……だけど、この町で出来た私の友達一号さんとして、ノーダムさんには紹介しておきたかったのだ。


「……店で使う椅子を作ったのだから、トテの名前くらいは知っているか。すまない、私はノーダムという。トテの親代わりをしている」


 ノーダムさんの真面な挨拶。いつもそう言ってくれれば良いのに。


「これはご丁寧に。私のことは串焼きのおばちゃんとでも呼んでおくれ。親代わりってことは、私のトテちゃんがお世話になっているようだね」

「いや、私の娘だぞ」

「だけど、餌付けは完了したみたいだよ? こんな時でも訪ねて来てくれてるんだからねえ」

「……忙しそうでしたもんね。嬉しい悲鳴って奴ですか?」


 これだけお客さんが押し寄せてきてくれているのだから、串焼きの売り上げも相当な額になっていることだろう。


「……それが、そうでもないんだよ。お客が多すぎて串焼きに使う肉が足りなくて、今日もお昼過ぎには閉店かねえ」

「足りなくなるのがわかっているのなら、多めに用意すれば良かったんじゃないですか」

「町の警備の方に人数を割いてるから、食糧の調達にまで手が回らないらしいんだよ。他の町から運んでくるって案もあったんだけど、結局はどこも人手不足なんだと」


 町に住人が増えればそれだけ必要な物が出て来る。食糧だけではなく、それぞれが住む家や日用品なんかも。

 聞けば、他の町から訪れた人たちに声を掛けたりはしたらしいけど、近くの森で獣を狩るのも、遠い町へ馬車を走らせて日用品の補充をしてくれる気も無いらしい。そのつもりでこの町に来たのでは無いのでしょうがない事ではあるのだけれど……。


「今のところは大丈夫だけど、不安はあるね。これ以上住人が増えられたらどうなるかわからないから」

「……そもそも、何でこんなに住人が増えてるんですか? わざわざ押し寄せてくるような観光名所ってこの町にいつの間に出来てたんですか……?」

「あれ、トテちゃん知らないの……?」

「……何がです?」

「この人たち、壊れた町の壁を直しに来たんだよ。国を挙げての大事業だからって、大々的に他の町から募集したらしいよ」


 ……――私のせいだった。

 どうやらこの騒動は、私が仕出かしてしまったことの余波らしい。 


「……ノーダムさんは知ってましたか?」

「ああ、前回この町に来た時にも、町の壁が壊れたから直すのを手伝ってくれと声を掛けられたからな。……手伝う気が無いのなら危険だから壁に近づくなと言われ、トテの破壊の痕を間近で見ていないのは一生の不覚だ」

「……依頼、受けて来れば良かったじゃないですか。私のことなんて気にせず……」

「そうは言っても壊れてから大分日にちは経っているのだろう? ほとんど直されてるのではないのか? それなら暇になったとしても、見に行く必要は無いかと思ってな」

「物見遊山ではなく、ノーダムさんが手伝うことで壁が早く直せるのなら行ってあげた方が良いんじゃないんですか……?」

「……個人の力などたかが知れてる。私が手伝ったところで完成が半日早まるだけだ。それに、町を護る壁を修復する機会など滅多にないからな。現状、修復している人数に問題が無いのなら、経験を積ませるという意味でも私が余計な手を出すこともないだろう」


 ……うーん、確かに壁を壊したのは私だけど、町を囲うような規模の壁の修復に携わったことはない。そんな物、おいそれと建てられないし、建てる許可を貰うのは家とは比べものにならないだろう。


「……噂、なんだけどね」


 串焼きのおばちゃんのもったいぶった一言。

 

「なんでも、壁は新しく建てるらしいよ。その場所がさらに町の外側らしいって、つまりはこの町の土地をさらに広げるってこと。そうなると数十年単位の仕事になるってことだから、一度手伝いを志願したらなかなか辞めさせてもらえないかも…ね……?」

「……ここの領主はずいぶんと大胆な奴らしいな」


 ――――はぁ!?


 ……と、いうことは、この混乱がずっと続くの!? 


 物資の補給もままならないこの現状で、不安がっている元々の住人に説明も無しに、いつ終わるかも知れない壁の建築を進めようとしている……!?


「……お昼によく串焼きを買ってくれる常連から聞いた噂なんだけどねー。危ないからって壁の近くに私たちは行けないから、真偽は定かではないんだけど」

「ふむ、噂が本当だとしても、私たちがとやかく言う権利は無いか。せいぜいお疲れ様とねぎらうくらいか」

「そんな悠長な!?」


 ――壊れたのなら、直せば良い。

 それでとりあえずは解決すると思っていたのに、考えに考え抜いた建築計画を把握していない私が直したところで工程が違うと言われたら余計な仕事を増やしてしまうことになる。

 おばちゃんから話を聞いた時は、こっそり壁を直してしまえばこの私が町の混乱を治めることに一役買うことが出来るのではないかとほくそ笑んでいたのに当てが外れてしまった。


「……そんな年単位で私の過ちを残されたくはないので、南の町に私が行くことは首領に禁止されてますけど手伝わせてもらえるか泣きついてきましょうか……?」


 過ちを残されるのも罰だと言われてしまえばそれまでなのだけれど、それにしたって期間が長すぎる。私が手伝えばすぐに終わるのに、付き合わされる職人さんも良い迷惑だろう。


「……しかし、私たちが手伝えば数日中に終わるだろうが、壁を直すためにこれだけ集まった奴らの処遇はどうなる? 竣工したから解散ですとは言えないだろう。奴らにとっては数十年先まで埋まっていたはずの仕事の予定が狂ってしまうことになるのだからな」







話は進むんだけどね、百合が足んない。アニメで成分の補充は出来てんだけどね!

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