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辺境の地に大豪邸を  作者: ひろにい
70/82

70 姉として

追記 書き直しました。


情報が多すぎて、何を伝えたかったのかわかんなくなっちゃってましたからね。

「ルクスルって、串焼きのおばちゃんとは何だか他人行儀な話し方しますよね」


 ふと、疑問に思ったのだ。私よりも付き合いは長いはずなのに、ただの客としてしか接していないことに。町に行くのならば会いに行くのが当然だとばかりにこうして足を運んだのに、その素っ気ない態度にもしかして余計なお世話だったのかもと勘ぐりもする。


「そんなことないよー?」

「その笑顔をおばちゃんにも向けてあげてくださいよ。私のことは気にしなくてもいいですから」

「照れてんのさ、これがルクスルなりの接し方って奴なんだろ。そりゃあ、元気良く話してくれた方が嬉しいけど、そんなのは食べ方見てれば分かるさね。……この食の細さは、何か…悩んでるね……?」

「まーたですか、ルクスル。(よこしま)な願いも聞き届けなきゃいけない私の身にもなってくださいよ。今度はどんな理由で泣くんですか?」

「トテにまで馬鹿にされた⁉︎」


 払い終えた串焼き代を仕舞い終え、会話に混ざってきたおばちゃんに当てずっぽうなのか判断に困ることを言われてしまう。それでも、大した悩みでもないだろうとそれ以上追及することはせず、串焼きの続きを口で楽しむ。

 

「おばちゃんとは私よりも付き合いは長いんですから、気にしなくてもいいと思うんですけど」

「はっきり言って、恥ずかしい!! だって、おばちゃんとはずーっとこんな感じだったんだよ!? ずっとって分かる……!? ――――ずっとだよ!?」


 ……だけど、そのせいでルクスルの口数も減り、私とも満足に会話してくれなくなっているこの状況はいただけない。


「……これは、ルクスルの正体をおばちゃんに知ってもらう必要がありそうですね。ルクスルがいつも私にしてくる仕打ちを世間に公表する時がようやく来ました」

「仲が良すぎるだけって言って――!?」

「……おでこ」

「ごめんなさいでした――!!」

「……ふっ、ルクスルの弱点は屋敷でいつもさぼっている恩人の首領ではなく、串焼きのおばちゃんだったんですね……!? 目線で黙らせられる首領とは違い、おばちゃんには強く当たれない!! 私の巧みな話術で洗いざらいぶちまけられる光景を指をくわえて見てるといいですよ!?」


 おばちゃんはルクスルの過去を知っている数少ない人物だ。首領ともそのことについては幾度となくやり取りはしているけど、ルクスルの圧に屈し、芳しい結果は得られていない。


「え、充分話してるでしょ? まだ足りないの?」

「私が聞きたいのは、子供の頃のルクスルの容姿です。……たとえば、髪はどれくらいの長さだったんですか?」

「……覚えてない、興味ない」

「おばちゃーん、ちょっと聞きたいことがあるんですけどー?」

「そんなことまで知ってどうするの!? 昔の話でしょ!?」

「……ちなみに、私の子供の頃は腕に生傷が絶えませんでした。家を建てる道具なんて鉈だけで充分だと思ってましたから、珍妙な道具に心揺さぶられ手を出してしまいましてね。未熟な私の若かりし頃の思い出です」

「……もっと、聞きたい」

「なになに? トテちゃんの子供の頃の話かい?」

「そうですよ。おばちゃんからルクスルの子供の頃の話を聞き出したいのに、そんなの無駄だと言われてしまったので、分からせる為に私の情報を小出しにしています」


 続きは? と、催促してくるルクスルを置き去りに、おばちゃんから聞き出したい情報を精査する。……まず、知られてしまった場合にルクスルが恥じる情報に焦点を絞る。ルクスルが反応してくれないのならば、そこに意味などありはしない。

 

「ふーむ、話してあげてもいいが条件がある。ルクスルの悩みってのを後でこっそり教えちゃくれないかい? ……トテちゃんには話しちまうんだろう? やっぱり寂しくてねえ……」


 おばちゃんからの提案。私からは是非もない。


「いいですよ、お安い御用です」

「安請け合いしないの。私が口にするのもはばかれることを相談するつもりだったらどうする気なの?」


 ――……。

 

「……相談の内容をお伺いしても?」

「口にするのもはばかれる!!」

「もう言っちゃってくださいよ!? 諦めておばちゃんには軽蔑されてしまいましょう!?」


 ……だけど、私から提案しておいてなんだけど、おばちゃんにルクスルの性癖を知られたくはない。

 本当に恥ずかしい目に合うのは私なのだ。

 ルクスルの悩みはこういうことでしたけど、もう解決しました――なんて伝え、恍惚とした顔のルクスルを目撃でもされたら、お悩み相談中の過程を思い描かれた私の心はきっと擦り切れてしまうと思うのだ。


「……ごめんなさい、おばちゃん。ルクスルの悩みはやっぱり教えられそうにありません。聞き気は、私も失せましたので」

「聞・い・て !? 冗談だから! なんなら今すぐ言っちゃうよー」

「へえ、じゃあ、聞かせてもらおうか? あのルクスルが悩んでると言葉にしただけで、私の耳も若返っちまうよ。ついでに口も軽くなる」

「……言いたくない。情報通のおばちゃんに知られたら、私がこんなことで悩んでるんだって皆に知られる。また馬鹿にされる」


 ……どうやら気軽に話しかけてくる他人というのは、ルクスルにとって無視し続けることが難しかった存在のようだ。


「……ルクスルがこんなに落ち込んでるのに本当に言いふらす訳がないだろう。しっかし、周囲の評価なんか興味無いって顔でつまんなそうに歩いていたあのルクスルが、まさか噂話程度で泣きそうになるとはねえ」

「恋をすると人は変わるの!!」

「……自分で言うかね」

「……だって、お姉さんな私がトテにいろいろ教えてあげないといけないんだもん! でも、私、何も出来ないんだもん。……泣きたくもなるよ⁉︎」


 優しい言葉を掛けてあげるべきかとは思うけど、それは一時凌ぎでしかない。振り回されるのは私なのだ。

 実際、ルクスルは頑張っているし私ももちろん頼りにしている。だけど、ルクスルは私との得意分野の違いに焦り過ぎだとは思う。

 頼るどころか、全部任せてくれちゃっても私は全然構わないというのに。


「……いいですよーだ。この悩みは私の胸の内に大事にしまっておきます!」


 ……そんなんだから、悩みが(こじ)れて抑えきれなくなるのだ。


「ルクスル、悩んでないでちゃんと話してください。ルクスルは私の身体のどの部位を求めてるんですか?」

「……身体目当てみたいな言い方は止めてもらえるかな? もっと崇高な悩みですよ」

「でも、悩みなんてのは手を繋いでいれば勝手に消えて無くなるものですよ?」

「いーや、これは増えちゃいますね⁉︎ この手を何処に導いてやろうか、悶々(もんもん)としてしまいますよ⁉︎」


 ……生き急いだかと思うほどに手を強く握られた。両の手をがっちりと掴まれてしまい、これでは耳を塞ぐこともままならない。

 

「……それで、えーと…ね?」


 ルクスルが言いよどむ程の願いをこれから口にされるのかと思うと気が滅入る。だけど、陰で泣かれるよりはと私も受け入れてしまうから、ずぶずぶと深みにはまっていくのだ。


「……トテと…行きたいところがあるんだけど」


 ようやく話してくれるのかと思っていたのに、次の予定地をただ提案されただけだった。

 

「……どう…かな?」

「いいですよ、行きましょう。……そこで話してくれるんですよね?」

「え? うん、そう…かも……?」


 歯切れの悪いルクスルの言葉。ここは言い出せる環境を整えるべきだと思い、ふたりきりになれるよう提案を受け入れることにする。 


「おばちゃん、串焼きごちそうさまでした。私たちはもう行きますね」

「トテちゃん、……ルクスルのことは頼んだよ」

「任せてくださいよ。ルクスルの悩みはばっちり解決してみせます。内容を教えることは出来そうにないですけどね」


 ……何故か困ったような笑みをおばちゃんには返された。安心させるように頷き返すと、ルクスルからは射殺すような視線を向けられた。


「……私の覚悟をトテが理解してくれてない⁉︎」



同人ゲームとかしてました!


戦略があるゲームは目的(意味深)を忘れてのめり込んでしまいますね⁉︎




追記 心が折れました。


リョ〇百合ゲーでBAD ENDへ嬉々として突っ走ったせいなんですけどね。

無事、True End を拝めたので、次話を書き始められそうです。

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