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辺境の地に大豪邸を  作者: ひろにい
12/82

12 新しい屋敷の朝

 ルクスル視点で始めるとセクハラ発言しかしないので悩みました。

 

 トテ視点で書いたけど、ずっと書きたかった話はまた今度になりそうです。


 温かい。


「……んん」


 まどろみの中に戻りたくて、声が漏れてしまう。


 沈み込むような感触がして、私の身体がここにあることを感じた。


 目が覚めてしまう感覚。

 このまま寝ていたいのに、朝の光はそれを許してはくれなさそうだ。


 今日の予定は何だっけ? 

 屋敷が完成したから、見栄えが良くなるようにさらに装飾を施す。

 おじいさんに、私が団員としてできることはないか聞く。


 一番重要なのは、ルクスルのことだ。


 落ち込んでしまっていて、見ているだけで悲しくなる。無理しないでって、ちゃんと伝えてあげないと……。昨日の分まで一緒に町を見て回れば、元気になってくれるかな。


「……トテ、起きちゃった?」


 大事な人の声がした。

 不安にさせないために、寂しくさせないように、今日はずっと一緒にいようねって約束するために目を開けた。


 ……何で、裸なの?


 そういえば、昨夜は疲れてしまったので私も服を着ないで眠ってしまった。


「――――ひゃっ!?」


 今更になって自分の恰好が恥ずかしくなり、喉の奥から飛び出してしまった声を、ルクスルが私の身体ごと包んで抱きしめた。


「トテの身体、すっごく温かいよ……」


 何かマズいことが起きそうな予感が、その瞳から漂っていた。慌ててルクスルの身体を引き離そうとする。その時に私が肩に触れてしまったのがいけなかったのか、ルクスルの腕にこめられていた力が強くなった気がした。


「……トテー?」


 耳元にルクスルの吐息を感じる。

 背中がぞくぞくして離れたいのに、身体が強張り丸くなって小さく震えることしかできなくなる。


 快適な目覚めだったはずだ。


 気絶ではない普通の睡眠を取って、温かい寝床で久しぶりに朝の陽ざしを浴びることができてたはずだ。


 私がいつもされることをルクスルにすることで、先に疲れさせて、自分は安心して眠ることができてたはずだ。


「……ルクスル、もう大丈夫なんですか?」


 昨日、お風呂で泣いてたルクスルはどこにいったの?


 不安そうに離れたくないって言ってたルクスルは……!?


「トテと寝たから、もう治っちゃったよ!」


 そんな簡単に治るものなの!?


「トテも早く着替えて。まずは朝ご飯を食べよう」


 にこにこ顔で着替えはじめるルクスルを見て、ようやく身体の力を抜くことができた。何で朝からこんな目に……。


 昨日泣いてたのは演技ですって言われても、信じられるくらいに上機嫌なルクスルにイライラする。


 ルクスルが泣いていたから、何とかしてあげたいって思ったのに。

 落ち込んでいたから、私も恥ずかしいのを我慢したのに……。

 部屋に着くまで、真っ赤な顔で私に大人しく手を引かれていたので、本当に限界だったんだなと思って優しく微笑んであげたのに……!


 ……改めて考えると、何かすごいことをしてしまった気がする。


 でも、私の着替えを見ているルクスルが、笑ってくれているのなら良かったって思えてくる。


「トテ、ありがとね」


 その笑顔が戻ってきたのなら、頑張って良かったって思える。


 それでも気恥ずかしさから、ルクスルのお腹をぽふぽふと叩いてしまう。私を心配させたのだ、このくらいは許してほしいんだけど、暴れ出した私の手は優しく握られてしまった。


「今日は何しよっか?」


 私の瞳を覗き込んでくるルクスルの顔には、不安の色は全然見えない。コツンッと合わせてくれるルクスルのおでこの温もりに私も笑顔になる。


「町に家具を見に行きましょう。……ベッドしかないので」

「うん。これだけでもいいかなって思ってたけど、一緒に住むんだもん。いろいろ揃えたいよね」


 町の服屋さんに直してもらったルクスルとおそろいのコートを上に羽織り、準備が完了する。昨日はルクスルと長く居られなかったので家具を見る時間は無く、部屋は必要最低限の物しか置けていない。

 私が必要な家具をベッドのように全部作ってしまってもいいのだけれど、ルクスルと町に出掛けたいので、そのことはあえて言わない。


「朝ご飯って何かな?」


 部屋を出る時に、ルクスルが鍵をかけながら口にした。


「あるかどうかもわからないですよ。昨日は屋敷にキッチンがあるってみんなに伝えられてないので」

「……キッチンもあるんだ?」

「はい。領主の専属の料理人さんが使うかもしれないので、大きく造ってます」


 いつか、ルクスルに私の手料理を食べてもらいたい。


 ルクスルももしかして同じことを考えてくれたのか、目が合った時にお互いに笑いあい、私はまた抱きしめられて、頭を撫でてもらいながら食堂へ向かった。


 お互いが相手のことを大好きだと思っているのなら、離れ離れになることはないはずだ。


 ルクスルから繋いでくれた手を、私が離すことはないんだから。





「……領主から、トテに会いたいって話が来た」


 食堂で食べてる最中に、首領からそんなことを言われた。


「今日はルクスルと町に行く用事があるので嫌です」

「わかった、そう伝えておく」


 どうせ町に行くんなら、ついでに会ってやればいいだろ。……そんなことを言わないおじいさんが大好きです。


 朝ご飯は狼の肉と野菜が煮込まれたスープのような物だった。他にも私たちと同じような時間に起きだした人がいるので、席は半分くらい埋まっている。

 これからルクスルと出掛けるけど、肉は捕りに行かなくて大丈夫なのかな?

 隣に座っているルクスルを見ると、ご飯に夢中のようで、私と首領の会話も耳に入っていないようだった。


 ルクスルが私と遊びに行ってもいいか聞きたいけど、駄目だと言われたら悲しいので別のことを聞いてみる。


「おじいさん、私って団員としてこれからすることってありますか?」


 自分がやりたいことは決めているけど、盗賊団の首領としては、他に優先順位があるかもしれない。


「あるにはあるが、……まずはほとぼりが冷めるまで、隠れて過ごしてもらうくらいか。……暇な時でいいんだが、人が住めないくらいボロい家を直してやってくれ」


 肉を捕ってきてくれって言われたらどうしようかと思ったけど、首領は私を建築の方で使ってくれるみたいだ。でも住めないような家なら、早めに直した方がいいんじゃ?


「人が多く住んでる地域じゃないんで、空き家が多いんだよねー」


 そういうことか。

 獣も多くいるらしいし危ない所だ、わざわざここまで引っ越してきたい人もいないのだろう。


 ルクスルと町に行くので、その時に壊れた家は探そう。

 でも、住む人も居ないってことだよね。……そこは領主に丸投げしよう。


「トテ、そろそろ行こっか」


 食べ終わった食器を持って、二人でキッチンに入る。


「おじいさん、今日の朝ご飯を作ってくれた人って誰ですか?」

「ドーアって奴だが、料理を作るのは持ち回りなんで特には決まってねえぞ。まずは設備の使い方を覚えないと駄目だからな」


 なるほど、誰でもいいってことは、私が料理人に立候補してもいいのかな。

 乾燥させた果実を潰した汚れ落としでお皿を洗いながら考える。しばらくはこの屋敷の装飾に専念したいし、町に一人では行けない。みんなの料理を作る時間はあるかな?


 私はキッチンを作っただけで、使い方がわかるわけではない。


 料理の道具も前のアジトから持ち出しただけみたいだし、家具の他にも買い揃えなきゃいけない物が増えたようだ。


 屋敷の整備もやろうと思えばすぐに終わってしまうし、私が他にやることも増やした方がいいよね。


「……ルクスル、欲しい物が増えた」

「うん! 私も手伝うからがんばろうね」


 一緒にキッチンに立てるのがうれしいのか、ルクスルもやる気のようだ。

 

 ……でも、料理は苦手そうなんだよね。


 お皿洗っているだけなのに、すっごい水が飛んでるし……。


 終わらせ方が決まらない。書いてれば終わるはず。


 そんなわけで二章スタートです。

 町を発展させて、料理覚えて、トテの屋敷にちょっかい出してくる奴らを懲らしめていく話になるはずです。

 面倒なことは、首領と領主が陰でなんとかするので、初心を忘れずに私は百合だけを書いていくだけです。

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