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青い鳥は、凍える鳥籠の中  作者: 天津風
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過ち 第1話

寒い。寒い。

暖かい物がほしい。


暗い。暗い。

光る何かが欲しい。

 2019年1月1日 12時13分。

 北海道・網走市内の交番に、凍える曇り空の夜の中やってきた少年がいた。少年の肌も服も全てが冷たかった。

 交番の警察は、少年を温かい牛乳でもてなした。


 そして同年1月1日12時17分。

 北海道・網走市内の交番で、少年は捕まった。少年は昨年に起きた事件・稚内市殺人事件に関わる集団の一人だった。

 どうやら、少年は出頭してきたらしい。出頭してきた理由は、次の通りだ。

『自分がしている行為が、殺人だって気付いた。国家を動かすような行為じゃないって、みんなに気付かせたい』

『俺のせいで苦しんだ人達に、罪を償いたい』



 今から取り調べをする少年・喜多嶋 惟月が逮捕された記録だ。そして、これ以上の情報は、相手から出すしかない。

「国家を動かすような・・・なんだよなぁ」

 “国家を動かすような行為じゃない”

 彼が所属する集団は、国家を動かしたがっているのか。そしてなぜ人を殺したのか・・・それを聞き出さないと。

 彼が、素直に言ってくれるかはわからない・・・。

 けれど不思議と彼を救いたくなる。警察の身でありながらも、加害者を救いたくなるのは、いささかあれだが・・・。

 けれど、彼だけは善の道にそれてくれたんだ。

「・・・死刑だけは、免れてほしいな」







 変わらない景色の取調室の扉を、開ける。

「・・・えーと、君が喜多嶋惟月きたじまいつきだね? オレは水瀬智樹みなせともきって言うんだ。君から取り調べをさせてもらう。よろしくね」

 相手の顔は、前髪でよく見えない。

 けれど彼はこっちを見ているのが分かる。その目がどんな目かは、前髪のせいでよくわからないけどね・・・。

 そして数秒遅れて、首を縦に頷いた。

「さて・・・君が所属していた集団について、話してもらいたい。目的や、創設者・・・とりあえず、何でもいい」

 数秒間、無言が流れた・・・。

 そして彼は、口を開けて話し始めた。

「俺達は捨てられた子供達だ。父さん・・・昭島三郎は、子供達を助けたかった。今の子供達の未来を変えたい」

「そんな一心で、なぜか人を殺してるんだ・・・」

「そして捨てられた子供達を拾っては、人を殺すように支配するんだ・・・こんな国を変える為に、殺させるんだ」

 悲痛な表情と、切実な声だった。

「・・・捨てられる子供達の未来を変えるために、国を変えようとして・・・子供達を支配し、殺人を行うって事?」


「うん・・・」

「けれど、そんな行為じゃ国は変わらない。だからさ・・・みんなに、そう言いたい。気付かせたかった」

「でも、そう言える勇気が無かった・・・」

「言えたら、ずっと楽だっただろうけど・・・俺は警察に出頭したんだ。国が相手なら、きっとみんな、負ける」



「抵抗しても・・・悪い事をしてるから」

 幼稚な言葉を巧みに使いながら、集団の仲間達と自分達がやってきた事が、全てが悪い事だと、主張している。

 けれど、そんな言葉が彼らに通じるのか・・・。





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