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劣等抱く方向量転移者 ~α世界線~  作者: ザ・ディル
断章

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21/21

吸血鬼


 エルの世界には今現在、吸血鬼はたった一人しかいない。

 それは他の種族が吸血鬼と戦った結果だから――ではない。


 たった一人の吸血鬼があまりにも強すぎたのだ。

 愛音(あいね)螺流(らる)。それが本来の彼女の名前だった。

 彼女はすべての吸血鬼を殺した。

 悪魔を超える吸血鬼一族――デビルアウト。

 とがった性質を持っていた吸血鬼一族――エンピログ。

 苦手克服が可能な吸血鬼――リバーシブル。

 真祖の吸血鬼――トゥルー。


 吸血鬼一族をすべて殺し、様々な強さを手に入れて、彼女の名前は、あまりに増えすぎた。

 デビルアウト・エンピログ・リバーシブル・トゥルー・愛音(あいね)螺流(らる)

 一般的に螺琉と呼ばれるが、彼女はすべての名前を取り込み、すべての吸血鬼の特性を獲得した。

 もともと最強の吸血鬼がさらに、他の吸血鬼の特性を獲得したことで、異常なまでに最強になった。

 そして、吸血鬼の最後の生き残りとなったことで、吸血鬼と戦うことができず、彼女は怠惰を貪り続けた。



*****



 吸血鬼。これは私にとって、窮屈な括りだった。

 私はすべてを破壊した。種族を破壊して、力を飲み込み、たった一つの存在となった。

 そんな私は今、どういうわけか、ボスと呼ばれ、盗賊たちを支配している。

 盗賊たちは私の言うことを絶対に聞いてくれる。それに優越感はない。あるのは、空虚――吸血鬼を私だけにしたにもかかわらず、このような悪逆をするのは私らしくなかった。

 それでも、盗賊たちとは仲良くなってしまったのだから、仕方ない。

 もう少し、彼ら彼女らと、一緒に盗賊ごっこを続けたい。

 そう思っている――、


「ボス!」


「どうしたのかしら? 血相変えて?」


再生者(リジェネーター)がっ! 『エイワーズの街』にて死亡しました!」


「――!?」


 馬鹿な!? あいつは、『エイワーズの街』に侵入したのか!? あそこには龍王(ドラゴンマスター)もエイワーズもいるのよ!?


「ボスの気持ちもごもっともです」


「どっちが殺した!? 龍王(ドラゴンマスター)か、エイワーズ……なのか?」


「それが……その二人ではないようです」


「? なら誰なのよ? 次元刀のやつなら殺せると思うけど、速さで攪乱(かくらん)すれば、殺せた相手よ? もしかして次元刀のやつと、他のやつらが手を組んだのかしら?」


「い、いえ。急に現れた異世界人。早すぎてイマイチ分からなかったですが、方向量(ベクトル)をもつ能力者が、再生者(リジェネーター)を斃したようです」


「異世界人……か」


 異世界人ならば、殺しに行くことも可能か? 不意打ちならば、報復できるか?

 私は再生者(お気に入り)を殺されたことで、よく状況が見えていなかったと、のちに反省する。


「暗殺しよう。剣を伸ばせる仲間がいたな。そいつを主軸に、異世界人を暗殺するのよ」





*****





 見込みが甘すぎた。

 まさか、金剛のお嬢様がパーティーにいただなんて。

 それに――方向量(ベクトル)人間。いや、情報収集から、彼のことは方向量転移者(ベクトルテレポーター)――遠藤輪離と呼ばれていることが分かった。

 彼は、同じ異世界から来たと思われる雛という人間を大切に思っているらしい。

 だから、雛を利用すれば恐らくは――。


 様々な思考を凝らし、私は方向量転移者(ベクトルテレポーター)に仕返しを考えた。


「『エイワーズの街』の人間どもが優しいのは、周知の事実。なら、利用すればいい」


 そうと思ったら、一直線だ。

 指をパチンと鳴らし、部下を呼び出す。


「お呼びですか、ボス?」


「ええ。金剛密波――彼女を捕縛するわよ」


「えっ? 彼女を捕らえるんですか? それは難しいかと……」


「私が行けば問題は無いわよね?」


「え、ええ、確かに。螺流(らる)様の力なら、捕縛することは可能でしょうが、しかし万が一のことがあっては――」


「万が一も億が一もないわ。私はあの小娘ごときに負けないわ」


 私は吸血鬼最後の存在。そして、最強の吸血鬼。

 あの程度の――千変万化者(ステートチェンジャー)に劣るほどのヤワではない。










 ――そして私は金剛密波を捕縛し、アジトに連れていくことに成功した。

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