表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劣等抱く方向量転移者 ~α世界線~  作者: ザ・ディル
二章 千変万化者
12/21

六話 エイワーズの館


 ドラゴンマスターと生命操作師(ドレインソーサレス)の戦いを見終わった俺は、『街』を適当に散策した。

 働く人々、商売人。なにやら怪しそうな店。思ったよりもいろいろある。


 住宅街のほうに行くと、住民の人たちが大勢いた。再生者(リジェネーター)によって被害が多い場所を中心に修理している専門者がいて、住民が専門者と協力するという構図を俺は遠くから見ていた。……自分は手伝ったほうがいいだろうか? というか俺は物置小屋を意図して壊したんだよな……。

 このままでは罪悪感で押しつぶさてしまう気もする。よし、手伝いに行こ――、


「あなた、異世界人ですよね?」


「――!?」


 思わず転移(テレポート)を使用。距離をとる。


「やだなあ、驚かないでくださいよ」


 少年だ。先ほどの、ドラゴンマスターと生命操作師(ドレインソーサレス)の仲介の役を買っていた少年。確か名前は、


「次元さん……?」


「そうですよ。僕の名前は結城(ゆうき)次元(じげん)です。そういうあなたは、再生者(リジェネーター)とやらを斃してくださった方、ですよね? 再生者(リジェネーター)を斃してくださって感謝しますよ。あのとき、再生者(リジェネーター)を殺せる冒険者はいなかったと思っているので、ホントもう、感謝しきれないくらい、感謝しています」


「それは……ありがとうございます?」


「なんで疑問系なんですか……。まあいいです。それよりも、暇なら『エイワーズの街』の案内しましょうか? あなたキョロキョロしてるからまだ道を知らないでしょう? もしそうであり、かつ、時間もあれば一通り案内しますが、どうしますか?」


「えっと、じゃあ、お願いします」


 こうして、少し不思議な少年に『エイワーズの街』を案内させられる。



*****




 見知らぬ道を歩く。それもそうだ。ここは本当に未知しかない場所なんだから。

 次元は俺に興味を持っているようで、様々なことを話してきた。

 その中で、俺の能力が方向量転移(ベクトルテレポート)だと話すとかなり興味を引かれだ。


「へえ、輪離さんは方向量転移者(ベクトルテレポーター)ですか。それは冒険者向きの能力者ですね」


「だよな」


「そしで、先ほど話していた少女は感情を操る、だとか。こちらはアレですね、巧みに使えば商売でボロ儲けできそうですね。ぜひその道を検討したほうがいいと思いますよ」


「いや、さすがにそれは――」


「――冗談ですよ。僕もそこまで邪道じゃない。ところで輪離さん。あなたはその少女――雛さんと一緒に冒険者になりたいと思っているんですか?」


「分からない。ただ、雛は幸せに暮らしていればそれでいい」


「幸せに暮らしていければそれでいい、ですか。気持ちはわかりますが、もしもそれが冒険者になりたいことが雛さんの幸せだと、雛さん自身がそう思っているなら、輪離さんはどうするんです?」


「…………」


「不躾な質問でしたね、すみません、なかったことにしてください。それよりも着きましたよ。ここが『エイワーズの(やかた)』です」


 次元が案内してくれたのは『エイワーズの館』。西洋風な館で、異常な土地面積を誇る館。それが、『エイワーズの館』。

 この『街』の名前は、『エイワーズの街』だ。その理由は道中に次元から聞いたが、エイワーズがこの場所を『街』にすることに成功したから、なのだそうだ。そして今現在、エイワーズという人物は生きているらしい。


 エイワーズ。本名、エイワーズ=ルデルス。

 嘗てエイワーズは、王国(メソッド)にいた門番だったらしい。しかし、門前での戦闘でとある異能力者と戦い敗け、門を突破されたため、王国(メソッド)から追放された。そしてこの場所でここを『街』にすることに成功した。ちなみに、そのエイワーズに勝った異能力者は異世界人なのだという。異世界人というが、死んだときに話した櫛玉(くしたま)の発言から、その異世界人は間違いなく日本人だろう。いつかは異世界人同士で戦う可能性もあるのだろうか?


「多分いないとは思いますが、呼んでおきましょうかね」


 そう言って、次元はスタスタと歩きながら、城門ともいえるほどの巨大な門前に足を運ぶ。その門前の延長線上にある外壁にインターホンがあり、そのインターホンを次元が押した。


「…………。どうやら、留守みたいですね。エイワーズさんは結構忙しいので、こういうことはよくあることらしいです」


 ため息をつく次元。

 俺は気になったことを話す。


「留守にすることがよくあるらしいって……、エイワーズって人はあまり見かけないのか?」


「あまり見かけない、というのは間違いないです。何せ、僕はまだエイワーズさんを見たことがありませんから」


「見たことないのか? 次元は『エイワーズの街』の人間だろ?」


「ええ、そうですよ。ですけど、僕は見たことがない。ですが、住民内で見たことエイワーズさんを見たことがある人は意外と多いです。体感だと、住民の半分くらいはエイワーズさんを見た人はいるらしくて、だから信憑性は全然あるんです。そして実在もしてるでしょう」


「てっきり全員がエイワーズって方の面識があると思っていたんだが、違うんだな」


「ええ、エイワーズさんは忙しいでしょうから。忙しい理由は、噂としていくらにも散りばめられていますが、個人的には王国(メソッド)によく行っているという説が気になりますね」


王国(メソッド)に嫌われているんじゃないのか?」


 俺は思っていたことを口にした。

 エイワーズという人物は、王国(メソッド)に追い出されたのだ。その理由が異世界人に敗けたから。それを考えれば王国(メソッド)から嫌われいてるのではないかと思った。


「嫌われてないですよ、多分。王国(メソッド)の門番役は大役です。王国(メソッド)の貴族以外――主に平民が、一度の失態でも許さないって感じの人たちが多いらしいので、形式上王国(メソッド)から追放されたんだと思います。それを考慮すると、王国(メソッド)の住民には嫌われていますが、別に王国(メソッド)内の貴族には嫌われてないでしょう。ですから、裏方として王国(メソッド)を支えているのだと、僕は推測します」


 かなり筋が通っていそうな推理だ。もっとも、俺は王国(メソッド)のこともあまり知らないし、それ以外のことも何もしらないレベルなので、それ以外の道筋を考えることは不可能なんだけど。


「その可能性は十分ありそうだね」と率直な感想を言いつつ、「そう言えば」と話題転換させて、次元にあることを聞こうとする。


「次元の能力って何なんだ?」


「言ってませんでしたね。僕の能力は一言でいうなら次元刀ですね」


「次元刀ってなんだ?」


「今から見せましょうか?」


「できるなら、是非見ておきたい」


 そう言って、俺は能力――次元刀の力を知ることとなる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ