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魔法は科学だった


隣国の王女…エリシアとそのお供の2人を保護してまた1ヶ月が経った。


まぁこれと言って特記することはない。いや、あったにはあったが精々ヒスイとマフユが狂喜乱舞した程度だ。


え?


どうしたのかだと?…簡単にいうならばこの世界は思春期の子供(拗らせた男子と一部の女子)にとっては夢の世界という事だ。


夢の国(ディ◯ニーランド)ではない、夢の世界(剣と魔法のファンタジー)だからな?


この世界には剣と…そう、魔法があるのだ。


俺らが神の様な存在から貰った能力、あれはこの世界では【天能ユニークスキル】というらしい。


固有の特異魔法みたいなものだとエリシアは言っていた。


その出現率は低く、凡そ1000分の1との事。この世界の人口は120億人…地球の2倍近い数だが、それでも1200人程しかいない計算だ。まぁあくまでも計算上なのでもっといるだろうが、要はかなりレアなものらしい。


それが村の全員が何かしらを持っているので、エリシアは当初目が飛び出るかというぐらい驚いていた。


そして肝心の魔法だが、これは事実上誰でも使えるものらしい。


原理を教えて貰ったが…正直俺らは魔法というよりも科学の延長線上にあるものとの感想が強い。


その理由。

一応、ファンタジーっぽく魔力というものは存在する。


そしてその魔力を使って魔法を行使するのだが、例えば【焔の矢】の場合。


結果としては火で出来た矢が目の前に浮かび、相手に突進する…と実に魔法っぽい。


だがその原理をエリシアに説明してもらうと、魔力により空気中の塵などを掻き集め、矢の形に形成、魔力の力で塵を自然発火するレベルまで高速振動させることにより火を発生させ、その火種を魔力により燃焼促進、かつ魔力の力で推進力を与え突進させる…ということ。


原理が簡単なので、地球なら中学生でも理解できる内容だが、これがなんとかの魔法を5本同時に発動できれば上級魔法に分類されるらしい。


つまり魔力という補助能力を用いた科学現象がこの世界の魔法なのだ。


因みに魔法は高度な教育と絶え間ない努力、そして天性の才があって初めて出来るものらしく、専門の魔法院学校(この世界の大学に当たる)で教えを乞うのが一般的とのこと。


ぶっちゃけ、魔力という原理を加えた科学、それがこの世界の魔法なのだが、正直レベルが低い。


これを聞いたヒスイとマフユの反応は両極端だった。


マフユは、


「なんかコレじゃない感がすごい…」


と落胆し、


ヒスイに至っては、


「私の時代、キタァァァー!!」


と叫んでいた。


まぁマフユはイメージしていたモノとは違うからだろうが、こと物理オタクのヒスイにとっては、まさに天啓を得たり!というかんじだ。


「ところでその魔力って1人あたりどれ程保有してるものなんだ?」


保有魔力量によって扱える規模が変わる…というのはそれ系の小説ではセオリーだったはずだ。


ふっ、俺も若い頃は多少は嗜んだ身だ。それくらいの知識はあるさ…まだ20代だけどな。


「え?保有…魔力ですか?」


ん?何かおかしな事言ったかな?


エリシアが首を捻っている。


「…魔力は人や亜人、魔族個人が保有しているものではありません。魔力は自然界の中に存在する特定の力ですので、私たちはそれを理解し操ります。それが魔法と呼ばれるもの…と親御さんなどから最初に習うはずなのですが…あっ、失礼しました。」


あ、そういう存在なのね、魔力って。妖精とか精霊と言った存在定義なのかな?


そしてエリシアは言葉の途中で「しまった…」という表情を浮かべた。


どうやらエリシアは俺たちを孤児か何かと思っているようだ。


まぁその方がこちらとしても都合がいいので否定も肯定もしないけどな。


「いや、気にしなくていいよ。で?それって原理さえわかれば何でも出来るの?」


そこ大事。


魔法院学校が本当に物理学…科学を習うための学校なら、地球の義務教育以上を履修した俺たちなら問題なく魔法を使えるはずだ。


「ええ、理論上は可能です。しかし理論や原理がわかってもそれを明確にイメージ出来なければ…」


「だってよ?ヒスイ。」


「よしきた!見ててよタクミにぃ!」


近くで話を聞いていたヒスイが嬉々として声をあげた。


「エリシアさん!魔法をイメージした後ってどうすればいいの?思い浮かべるだけ?それとも何かしらの手順が必要?」


「え?えぇと、その原理や理論を明確に思い浮かべて、対象となる場所にイメージを投射させるだけですが…」


「わかった!」


とヒスイは結構遠くに見える山に手をかざし、目を瞑る。


…何をする気だ?


「こうして…こうして…あ、でも放射性物質が…いや、ならこうすれば…よし!」


おい、今不吉な単語が聞こえたぞ。


放射性物質て何をする気だ!


「おい!ヒスイ、お前何を…」


何か大惨事が起こりそうな予感がしたためヒスイを止めようと声を掛けようとしたが、一足遅かった…。


「いっけー!」


カッッッッッッ!!!!!ドーーーーーーーーーーーーーーーッン!!!!!



「ひっ!?」


「おわっ!?」


「うわっ…予想外の威力…」


突如つん裂く爆発音と、遅れてやってきた衝撃波にエリシアとヒスイ、俺はその場に尻餅をついた。


「何じゃ?原爆でも落ちたような音がしたが。」


「お義父さ…ジュウゲン、滅多なことを言わないでください…」


爆発音に驚いて家から飛び出してきたジュウゲンとショウゲンが何だ何だと辺りを見渡している。


「のう…ショウゲンや。あっちには山が1つなかったかの?」


「えぇ…割と大きな山が1つ。今は山頂付近から3合目辺りまで吹き飛んでいますが。」


そうなのだ。


遠目に見えていた山…富士山の3分の1程度の小山があったのだが、その上部分が現在、白煙を上げながら消失していた。


勿論原因はヒスイであろう。


「…ヒスイ。何をした?」


「え、えーと…重水素とリチウムの化合物を【多列演算】で近くのものから作り出して…それをウランで…」


まて…その元素の組み合わせだと嫌なものしか出来上がらないんだが。


「…結論から言うと?」


「魔法で水爆やってみた、てへっ?」


バシンッ!!


俺は思いっきりヒスイの頭を引張叩いた。


なんてものを作って…いや、再現してやがる!


「痛った〜!?」


「こんな近距離で水爆再現するとかどう言うつもりだ!?」


「ちゃんと放射線を通過させないフィルターと、熱線を抑えるフィルター、爆風を半減させる防護膜は張ったもん!」


そう言う問題じゃねぇ!?


「かっかっか!大した威力じゃのぉ。」


「あれだけの威力を出して、有害性をカット出来ているのであれば優秀ですな。」


いやいや!何でショウゲンとジュウゲンは褒めてんの!?


あんた達は第2次大戦経験してるでしょ!?寧ろ叱れよ孫とひ孫何だから!


「い、今のは一体…まさかヒスイは高名な魔法師のお弟子様か何かですか!?」


エリシアがキラキラした目でヒスイを見ていた。


なんで?俺がおかしいの?


「むー…タクミにぃ、私だって原爆の恐ろしさくらいわかってるよ。だから威力だけを抽出して、放射性物質とかの害悪的な要素は全部中和させたんだよ?」


いや、そもそもあんな威力自体要らんだろう…


原爆ではなく水爆にしたのはせめてもの配慮らしい…


配慮じゃなくて自重してほしかった。


「初級の魔法でさえその情報量の多さで苦戦する人が多いのに…。」


あー、それはヒスイの天能のお陰だろうな。


そもそも俺らからしたら上級魔法に分類される科学知識は、すでに中学校で履修済みだからね。



爆弾や原爆、水爆も俺は分かんないけど、変態級のオタクなヒスイなら分かるだろう。


「とにかく、ヒスイ。今後それ系統の魔法は禁止な。」


「なん…だと…ブルータス、お前もか。」


お前、そっちもいけるのか。


「やはりこの村の方達はどこか高名な子弟のかたなのかしら…」


エリシアが何かブツブツいってるが確実に違うからな?俺ら一般人だから。


「…エリシアさん。魔法って、原理さえ正しければ何でも可能なのかな?」


と、今まで黙っていたマフユが口を開いた。


「ええ、理論上可能ですよ?ただ…あまり複雑かつ長い理論を組み立てようとするとうまく発動しませんが。」


何でもこの世界の魔法は、理論構築ロードとイメージ投射が要になっているようで、あまり複雑なものをやろうとするとどうしても頭の中で考えているので間違いや綻びが起こりやすく、イメージを投射する際定義破綻しやすいようだ…と言われてもイマイチ俺には分からない。


だがマフユは納得いったようで。


「つまり完璧に理論イメージを投射出来れば現実的に可能、と言うことですよね?」


「まぁ、そうなりますが…」


「ヒスイ、例えば“スマートフォン”の様なものを魔法で再現できる?」


「え?スマートフォン?うーん…無理かなぁ。工学も面白そうだったから勉強してみたけど、あれは機械系だけじゃなくシステム系も複雑だから、一個の魔法として再現しようとしたら私の頭がパンクしちゃうよ。いくら【多列演算】があったとしても複雑過ぎて無理。」


「成る程ね…ならヒスイ、地面にそのスマートフォンのシステムを全て書き出してくれる?機械言語でいいから。」


「え゛っ!?全部!?」


「そう、全部。」



…さっきから聞いてるがこいつら女子高生だよな?マフユに至ってはしれっと機械言語を理解できる様だし。


ブツブツとヒスイが言っていたが、ついに根負けしたらしく渋々地面に機械言語でスマートフォンのシステムを書き始めた。


だが全て書き記すと日が暮れてしまうので、通話とメール機能だけをやる様だ。


「…はぁ、出来たよ?」


「うん、ありがと!」


そして地面につらつらと書き記された文字列…うん、全く理解できん。


所々英文法の様な箇所もあるからそこは分かるのだが、他は何を書いてるのか分からない。


「これは異国の言葉なのでしょうか?」


「これはプログラミング言語…あー、ある所定の動作をさせるための専用の言葉みたいなもんだ。」


「?」


当たり前だがエリシアにはそもそも何のためのものなのかもわからない様だ。


「マフユ、これ書いておいてなんだけど無理じゃないかなぁ?こんな一気に頭の中で組み立てれないよ。」


「大丈夫、私の考えが正しいなら問題ないから。」


するとマフユは目をつぶり、その場で黙ってしまった。


すると…


『タクミにぃ、聞こえる?』


「ぬぉ!?」


突然頭の中にマフユの声が響いた。思わず素っ頓狂な声を上げてしまったが仕方ないだろう。


「今のはマフユが?」


「うん。次はメールだね!」


と、またもやマフユは黙って目を瞑る。


…今度は何が来ても驚かないぞ。


すると今度は目の前に文字が浮かんだ。


件名:メール


“どう?うまく言ったかな?”



…まんまメールの文言が目の前、宙に浮かんでいる。


「あ、あぁ。ちゃんと届いてるよ。」


「よかった。これで私の考えは立証されたね!」


「え、ねぇ!何なの!?タクミにぃとマフユばっかりわかってずるい!」


「うん、要するに…」


マフユ曰く、スマートフォンの通話とメールの機能を再現したとの事。


…いや、それはわかってる。


ヒスイが聞きたいのはそれをどうやって再現したのかという事だと思うぞ?



「イメージ記憶だよ、私の【絶対記憶】のチカラ。」


「イメージ記憶…あぁ成る程。そういうカラクリか。」


マフユがやったのはおそらく、機械言語を“イメージ”として記憶し、そのまま魔法として投射したのだ。


「え、どういう事?ねぇ分かるように教えてよ!」


ヒスイはイマイチ分からない様で詳しい説明プリーズという様にせがんでくる。


お前、本当に興味があるだけしか知識の幅は広くないよな。


「あー、ゲーム機本体とゲームソフトって言えば分かるか?ゲーム機本体がヒスイで、ゲームソフトが魔法のイメージだ。」


…流石にこれじゃ分からんか。


「成る程!!」


分かるんかい!!


要するにマフユは大量の情報を単なる文字記憶として覚えたわけではなく、1つの絵として覚え、それを一個の情報体として投射したのだ。


1.2.3.4.5.6.7という文字情報を、(1.2.3.4.5.6.7)という絵として記憶したのだ。文字情報が10の労力を必要とするならイメージ投射記憶は1ってところか。


…俺もあんまり説明上手くないかも知れないが。


「でもそれってマフユにしか使えないよな?」


「今のところはね。でも、私を連絡塔としてみんなに個別に連絡を送ることはできる様になった。」



そのあとエリシアにも通話の魔法をマフユが使ってみたが、「あなたが神か…」と崇められる事態となる。


この世界にそのネタあるんだ…いや、ネタじゃないか。



次回は明日、18時となります。

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