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外も厄介、内からも厄介だった


現在、タクミ達の住む街…ともはや呼ぶべきにふさわしい規模の村は、本村(タクミ達の住居区画)と衛生村(元スラム街出身者達の住居区画)、そして商業区画(商店、飲食店、娯楽店等)と行政区画(仮設ギルドと役所)で成り立っている。


またギルドに関しては国から最低限の土地の安全性と利便性が担保されたと認証され、近々支部が設置される予定だ。


しかし未だに解決されない問題がある。それは人の問題。


現在この土地にいる人間(一部人外もいるが)は、ダトウ家、元スラム街出身者のみ。それ以外だと街に生活雑貨や食料を供給するラムリスの息のかかった商人と、お忍びでやってくる第二王子とその護衛騎士ぐらいだ。


そのため街の経済はほぼ身内で回しているようなものなのである。一般開放はギルド支部開設と同時期になる為仕方ないが、これでは経済的によろしくない…とはラムリスの言葉である。


タクミの懐には国家予算級の金が前の魔物行進時に舞い込んできているが、この規模の街を建設しても未だ大量に死蔵されている状態。予算だけ見ればそこそこ裕福な小国程度の予算がある。


だが使い道の検討がまったく思い浮かばないタクミは、取り敢えず村の整備や防衛の投資として領主へと投資などは行っているがそれでも微々たるもの。


そこでもたらされた【櫛灘】という弩級の厄介な情報はある種、天啓とも言えた。


「ラムリスさん、わざわざ済みません。」


「いえいえ、このラムリス、商人ですのでどこへでも参りますとも。して、今日はどのような?」


タクミが声をかけたのは王家御用商人のラムリスだ。村には息のかかった(悪い意味ではない)商人が頻繁に来るため、比較的コンタクトが取れやすく、頼りになるという点でも申し分ない。


そんなラムリスに、タクミは懐から小ぶりな麻袋を取り出しラムリスの前に差し出した。中からはジャラッと金属のかすれる音が聞こえる。


「…ふむ、何をお求めですかな?」


生活物資や建築部材などは別に直接ラムリスへ頼まなくても事足りる。であれば案件はモノ以外だと用意に想像はつき、ラムリスもその表情をより真剣なものへと変える。


「実は情報を買いたくて。それも目的の情報量が集まるまで恒久的に。」


「情報…ですか。お恥ずかしながら、私の商会でも情報を集める者達はおりますが、とてもショウゲン殿より勝ると申せないのが現状です。」


「いえいえ、別にショウゲンほどの確度を求めているんじゃないんですよ。求めているのは噂程度で、それを全国各地から集めてもらいたいんです。なので、質よりも幅広い数が必要でして…。」


そう、今回タクミが求めるのは噂の情報…を精査するための情報。噂の域を出ない情報を全国各地から集めるのが目的だ。ならば幅広い人脈とコネを持つラムリスに頼るのが正解だとタクミは考えたのだ。


「なるほど、でしたらお力になれるかと。しかし……これは多すぎです。」


そうラムリスは麻袋の中を確認し、苦笑いを浮かべた。入っていたのは硬貨・・が2枚。情報を集めるための人件費や代金として考えるなら、噂の収集であれば相場としては金貨2~3枚が妥当な金額である。


「まぁ必要経費ですよ。あとは仲介マージンとか手数料とか、まぁ項目は何でもいいんですけどね。」


しかし白金貨を何千枚と所持し、それを周りからなるべく早く消費しろとせっつかれるタクミの事である。適当な項目で好きあらば擦り付け・・・・ようとするのもタクミの悪い癖だ。


「いくら長期の依頼とはいえ、噂の収集で白金貨2枚はボッタク価格ですよ…」


ボッタクリはボッタクリでも、世にも珍しい逆ボッタクリだが。


白金貨2枚といえば、この村の整備に費やした金額とほぼ同等である。それをポンと出すあたりタクミの感覚も狂ってきていた。


「まぁ貰っておいてください、今後もお世話になるんですから。…あー、今日はあと帰りの馬車に同行させてもらってもいいですか?」


「?ええ、それは構いませんが。」


ラムリスは諦めたのか麻袋をそのまま懐にしまい込み、不思議そうに返答する。今まで同行の申し出なんて無かったからだ。衛生村の住人であれば流石にあの森を単独走破するのはまだ厳しいが、タクミ達ならば問題ない。


ラムリスが村に来る際の護衛を当てにしなくても何時でもガランに行くことができる筈。


「いやぁ、噂集めも大事なんですが…そろそろ約束を果たさないとフラストレーションが限界でして。」


「えっと…どなたのでしょうか?というよりも何処が目的地がお有りなのですか?」


ラムリスの直感は激しい警鐘を鳴らしていた。ダトウ家の人間はその超絶的な戦闘能力と魔法適性を除けば、人格まともで礼儀やマナーも少年少女と思えないくらい堂に入っている。


しかしその外見と中身が究極のミスマッチなダトウ家の者が一般の街にいけば厄介事に巻き込まれるのは容易に予想できる。ラムリスは知る由もないがタクミやジュウゲン、ハヤテなど精神年齢が熟している面々ならば各々適切に対応は可能だろう。


しかしマフユとヒスイ、この二人に関しての不安は、奇しくもダトウサイドとラムリスサイドが認識を共にしているところであった。


「あー…その、ギルドに登録を…」


「タクミ殿…ではありませんよね?」


嫌な予感がした。せめて問題が起きても穏便に済ませることが出来る人選であってくれ、とラムリスは顔には出さず祈る。


「ええ…マフユとヒスイです。」


「あ…あぁ、なるほど。」


ラムリスは心のなかで決心する。陛下に暗部の貸出を嘆願しようと。


商人は人を見る目が無ければ直ぐに潰れる。そしてラムリス程の豪商にもなればその洞察力は人物限定の鑑定魔法と遜色ないレベル。


そのラムリスから見たマフユとヒスイの評価は、【年相応な少女】だった。


本来なら問題はない。年相応な見た目の良い少女…確かに合っている。しかし年相応なのは外見と精神年齢だけ。実力はタクミ達とは方向性が違うだけで、ガランの街を襲った魔物郡を壊滅させる大規模魔法を扱う少女と、帝国の精鋭暗殺部隊を片手間で屠る少女だ。


「…安心してくださいラムリスさん。俺も同行しますんで。」


「タクミ殿!!」


ラムリスはガバっと立ち上がり、タクミの両手を握る。その顔には鬼気迫るものがあった。


「本当に!…本当に、よろしくお願いいたします!」


ラムリスが何故そこまでマフユとヒスイを(ある意味)危険視するのか。それはまた別の話。


そして話が纏まったタクミとラムリス、そしてウキウキ気分を隠しきれていないマフユとヒスイを乗せた馬車は、ガランへと出発したのであった。







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