間話 間抜けの尻ぬぐい
時空の狭間……それは3次元から乖離した高次元帯のそのまた別階層。
…まぁ早い話がタクミ達をあの世界に転移させた神の住む次元軸だ。
そしてそこの主…※※※神は頭を抱えていた。自身の部下のある失敗…いや言葉を飾らないのであれば、ある再犯に。
「あんの……色ボケ駄神がぁぁぁ!!」
ダンッ、と自分の机に並べられた数十枚の履歴書の様な書類がフワリと浮かび、また落ちる。それは履歴書のようにも見えるが、1枚辺りにその人物が歩んできた人生と歩むべき未来が暫定的に記された個人議事録だ。
その個人議事録、少しおかしな点がある。
基本的に個人議事録には生まれてから死ぬまでの記録が、本人がその世に生を受けた時点でほぼ確定した道筋が決まり記載される。
そのためあくまで暫定的な記録であるが、生まれてから死ぬまで大きな変更が起こることはまず無いと言っていい。
しかしその数十枚の書類には、まったく同時期にまったく同じ時間、まったくの同じ死因が赤文字で大きく刻印されていた。…まだその先にはこれからの人生が書いてあるのにも関わらず。
「あのゴミクズは何処ですか!?一度ならず二度までも!もう堪忍なりません!!」
※※※は勢いよく立ち上がると近くにいた一般天使に元凶の所在を問いただす。この天使は※※※の天使ではなく、この惨状の報告に来た元凶の部下であった。
「そ、その…地球統一神様は、日本の暁坂48の四大ドームツアーに行っておられまして…そのぉ…はい、地球の日本という国に行っております。」
「はぁ!?!?」
そのあまりの怒髪天を突く有様に、天使は顔面を真っ青にしながら平謝りを繰り返した。
「も、申し訳ありません!申し訳ありません!」
しかし悪いのはあくまで元凶であって、目の前の天使ではない事を思い出した※※※は、大きく深呼吸し椅子に座り直した。
「ふぅ…すみません、貴女に当たっても仕方がないことですね。では、顛末は分かっていますが貴女からもう一度説明願えますか?」
「は、はぃぃぃ…」
天使は既に涙目である。しかし自分が説明しないことには話が進まないとわかっている為、残りわずかの勇気を振り絞り口を開いた。
「ち、地球統一神様が溜まりに溜まった個人議事録の定期チェックをホットチョコレート片手に処理していた所、地球の下級神から暁坂48のCDが献上転送されてきまして…転送のタイミングが悪かったのか、統一神様が置こうとしたホットチョコレートの真下に現れました。」
「…それで?」
「は、はい。統一神様はそのアイドルグループを神格視しており、CDの上にホットチョコレートをどうにか乗せるまいと手首をクイッと捻った所…その捻った先に、次に献上転送されてきたサイン入りブロマイドが出現しまして…チョコレートが盛大に掛かってしまったのです。」
「ほう?」
天使はもうこれ以上話したくなかった。もう既に目の前にいる※※※神から、溢れんばかりに怒気を含んだ神気が漏れ出していたのだから。
「……それで、盛大に絶叫された統一神様は近くにあった紙でブロマイドをふ、拭き取り何とか事なきを得ましたが…その紙というのが……」
「個人議事録か……」
※※※神が指さしたのは何故か皺くちゃで黒いシミが付着し、変わるはずの無い人の一生が記載されていた筈の数十枚。
「は、はい。」
「はぁぁぁぁぁぁ……」
盛大なため息。
つい先程(神の感覚では)なんの罪もない(神の定義で)人間達を自分の管理する世界にねじ込んで尻拭いをしたばかりにも関わらず、更に追加で問題を起こすとは思ってもいなかった※※※神。
前の『串刺し刑〜複製ロンギヌスの槍黒ひげ危機一発風〜』では足りなかったか…と今この場に居ない部下にどんな罰を加えてやろうかと考える。
「あのぉ…それで、この一族の方々はどういたしましょうか?」
「…転生させるしかないでしょう。こちらの不手際で人生半ばに死なせてしまったのですから。あとは私がやっておきますから貴女はもう戻ってよろしいですよ。」
「は、はい!失礼しました!」
脱兎のごとく退室していく天使を尻目に、※※※神は数十枚の個人議事録の赤字に目をやった。
「…ダトウ家の方々も中々あり得ない死に方でしたけど…この方々もまた悲惨な。」
そこにはこう文字が浮かんでいた。
『-集会中に地殻マントルが抜け、超局所的地盤沈下によりマグマに焼かれ、即死-』
と。
因みに原因を作った地球統一神は※※※神により、『10倍濃縮八大地獄1億往復周回ツアー』にご招待されました




