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再々編成だった


「エリシア様…こんな事になっていたなんて。私は何で気づいてあげれなかったの…」


「ユミル、今は嘆いていても仕方ない。出来ることをやるんだ。」


村に作られた治療院のベッド上で呼吸もすることなく、しかし眠るように横たわっていた。測定する術はないが、魔法が正常に効果を及ぼしているのであれば脳波、心拍、内臓活動は全て停止している状態である。


タクミが帝都で倒れた直後、コウイチとカオリは二人を発見し、急ぎ国境を越えて二人を村へと運び込んだ。  


エリシアは俗に言う封印状態にあるため、状態が固定されており悪化も改善もしない。対してタクミは両腕の複雑骨折に加え、過度の疲労により丸一日中寝込んでいたが、先程目を覚まし、腕は魔法で完治済みだ。


「済まないな…あの状態では対症療法しか執る手段がなかった。今エリシアは俺の“身喰らう蛇(ウロボロス)”という魔法でありとあらゆる状態を現状に留めている…所謂封印の呪いを掛けてある。今の所悪化する事もないが、このままだと改善する見込みもない。」


「そう、ですか…タクミ殿。エリシア様を救っていただきありがとうございます。」


そう言いながらロイはタクミに頭を下げた。


「やめてくれ。この魔法じゃなんの解決にもならないんだ。」


「いえ、それでもです。タクミ殿程の力があれば封印など行わず、その…倒すほうが簡単だったはず。それが今はこんな状態とはいえ生きながらえている事実は、偏にタクミ殿のお陰です。」


確かにタクミからしてみれば無効化という手段よりも、倒してしまう方が今後の憂いもなく簡単だっただろう。


しかしそうしなかったのには、タクミにしか分からない理由があったのだ。


「ほっほっほ、タクミ。おぬしも少しは心境の変化があったようじゃの?」


…ジュウゲンにはお見通しだったらしいが。


「…単に今回のエリシアの件は仕事(・・)の範疇じゃなかっただけだよ。」


「ほほ、そうか。で?このあとはどうするつもりじゃ?帝国は今、表面上は魔物進行による帝都の被害で復興中…その実、内部は相当荒れておるじゃろう。王の情報網でもそう掴んでいると宰相殿から聞いておるしの。タクミとコウイチ達が掴んだ情報でも今回の一件、依頼達成とみても問題なかろう。」


「……。」


確かに国王からの依頼内容と照らし合わせれば、今回の依頼は達成とみても…いや、エリシアの一件を加えればそれ以上の価値を持ってると言っても過言ではない。しかしタクミは…それにジュウゲンも依頼達成ではあるが、解決には至らないと分かっていた。


「…本当に変わったのぉ、勿論良い意味でじゃがの。このあとはタクミの好きにするが良い。何度も言うが、懐刀のしきたりも大切じゃがここは元居た世界ではない。この世界にはこの世界のしきたりも必要じゃて。」


そうジュウゲンは言うと部屋から出ていった。


「…この世界でのしきたり(ルール)か。…よし!ユミル、ロイ!」


「「?」」


「帝国が今後どう動くかわかるか?出来ればアリサ達の意見も踏まえて聞きたいから後で教えてくれ。」


「は、はぁ…それは構いませんが、いったいどうなさるおつもりで?」


ロイは困惑気味に聞き返す。ジュウゲンとタクミの会話を聞いていたロイからしてみれば、今回の騒動の発端は国王からの内情調査、それも依頼内容は達成されたと見ていい。これ以上何をするつもりなのか?と疑問に思う。


「何を不思議な顔をしてるんだ?だってまだエリシアの問題が解決してないだろ?」


「「!?」」


そのタクミの言葉を聞いてロイだけでなく、エリシアの側で話を聞いていたユミルまで驚愕の表情でタクミを見た。


「タ、タクミ殿…それはまさか。」


ユミルは縋るような、泣きつくような顔でタクミに問い掛けた。


「ああ、エリシアを助けるために動く。それを以てダトウ家が受けた依頼内容の達成とする。」


「あぁ…あ、ありがとうございます!」


「ここからは隠密よりも一気に戦闘方面に状況は傾きそうだからな…アイツら(・・・・)にもガス抜きをさせてやるか。」


そう言うとエリシアに寄り添うロイ達を部屋に残し、出て行くタクミであった。










「…と言うわけで二人とも、帝都に行くぞ?」


「「やったぁぁーー!!」」


タクミがやってきた場所。それはマフユ達のいる家だ。そしてそんな歓喜の声を挙げるのはお察しの通りマフユとヒスイ。


「で、でも、いいの?タクミ()ぃ。おじいちゃ…ジュウゲンから私達この前釘を刺されたばっかり何だけど…」


「うっ…確かに…。」


「ジュウゲンが国王陛下から受けた依頼は『ある計画の情報収集』だ。それは既に俺とコウイチ達で達成済みだ。今回はそれに付随する追加作業だからジュウゲンの方針ではなく、【腰刀】たる俺の方針でいく…だからお前たちも同行来てもらうことにした。それにおまえ達もきちんと周辺領主の粛清の仕事は完遂したんだろ?ならその技量もきちんとあるってことだ、問題はない。」


「た、確かに…なら!」


「私達も行っていいの!?」


「ああ、さっきからそう言ってるだろ?ただし、分かっていると思うがこれは遊びに行くんでもピクニックに行くんでもない。根本的(・・・)な解決をしにいくんだ。わかるな?」


そう暗に含みを持たせると、流石というか何というか。二人はその意図をしっかりと読み取り、案まで即座に提示してきた。


「根本的…ジュウゲンから聞いた話じゃ、帝都の暗部では人工天使計画ってやつが動いてるんだよね?なら目的はその計画の破綻、そしてエリシアちゃんの状態改善か…ヒスイ、洗い出し(・・・・)洗い流し(・・・・)は魔法的に構築、実行は可能?」


「うーん…その標的の深層情報、もしくは共通確定情報を定義の中に組み込めば可能かな?でも定義の規模と、帝都の広さを考えると完全探知特化になりそう。流石に一気に一網打尽とは行かないよ。」


「そっかぁー、魔法定義の構築式の規模を考えるなら仕方ないか…逆に範囲を絞ると撃ち漏らしが出てきそうだしね。」


「複雑に組みすぎると定義破綻の可能性もあるよ?ここは個別確立でいくのがベターだね。」


「なるほどな(……二人が何言ってるのか全く分からん!)」


突然、魔法談話を始めたヒスイとマフユの会話が全く理解できず適当な相槌を入れるしかないタクミ。


【最適解】というスキルにより、半自動的に魔法を解析・改善・分解・構築し、先生(・・)というオペレーションまでついており、ほぼ感覚的に魔法を使うタクミに対して、あくまで方法としてのスキルを授かったヒスイとマフユは、独自の理論とトライ&エラーによって自ら考え、理解し、構築・行使する為、魔法に関しては感覚派のタクミには内容が理解できなかった。


要するに未来の某青タヌキの秘密道具をただ使う丸眼鏡の少年がタクミで、その秘密道具を作っている人物がヒスイとマフユ。同じ道具を使っていても、その道具の運用の仕方や理解に差がでるのは当然のことだろう。


「…まぁ兎に角、後でユミルとロイ、そしてアリサ達も交えて話し合いの場を設けるから、おまえたちも参加して来れ。」




「「わかった。やるからには全力で、関わるなら徹底的にやるよ!」」





そうしてここに第二次帝都潜入班が発足したのだった。


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