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露見したのだった (中)


「タクミ、お前もその流れ・・に身を任せるものならば薄々気づいているんじゃないか?」


中佐は胸ぐらを捕まれながらもそう口にした。タクミの手を振りほどくでもなく、激高するわけでもなく淡々と。


「……。」


「大方、お前はアルフェントス王国の手の者…いや、協力者・・・という表現が近いな。完全な諜報人ではないが、ある程度の腕が立ち、知識もある。そして何よりいい観の目・・・を持っている。」


「何が言いたい。」


辺りを突然統率が無くなったブロブロの雄叫び声が響いているが、そんな事は今はタクミにとって関係なかった。


「お前が調べているのは人造魔獣兵に関することなのは分かっている。…だが、その答えが目の前・・・周り・・にあるのに気付かなかったのは彼奴ら同様お粗末だったな。」


「…やっぱりか…この畜生め。」


タクミが主目的として探りを入れていた【人造魔獣兵計画】。ヨハイムやアリサもこの件に深い執着を見せていたが、実はその答えは最初から目の前にあった…タクミはある意味予想していたことが当たった事に、深い嫌悪感を示しながらそう吐き捨てる。


元々、タクミが事前知識として知っていた【人造魔獣兵計画】は、身体の体組織を魔法により組み換えて、身体能力と凶暴性を兼ね備えた兵士を作り上げるということ。だが、タクミを含めシュウゲンとジュウゲンなどはそれだけに留まらないと予想していた。


王家からの依頼はその調査のみ。タクミ達がやろうとしている奇襲は完全なタクミの独断だが、結果それに値する情報を中佐の口から聞くことになる。


「ほう…そこまでは予想できていたか。ならば褒美として更なる絶望を教えてやろう。この城下の約10分の1は既に魔獣兵として置き換えられている・・・・・・・・・。かく言う俺も、あのガキどもも含めて、だ。」


「…中佐。黒幕はあんたじゃないな?そんな規模で馬鹿げた事が出来るのはもっと上…王族か、それに連なる者。」


「…任せてみても、いいのかもしれんな。」


タクミの言葉に何かを感じ取ったのか。中佐は徐に口を開く。


「【白と黒の無垢】…それがこの国で起きている異変の元凶であり、全てだ。」


「なに?それは一体……」


タクミが更なる追及をしようとしたその時、ゴギッ…という音とともに、中佐の胸倉を掴んでいたタクミの手首がダランと垂れていた。


「っ…」


「悪いがここまでだ。俺にもやることが出来たからな…ああ、あとの魔獣共は放っておいていい。直に兵ども到着するころだ。」


言うだけ言った中佐は素早く踵を返すと、辺りに散らばる瓦礫を物ともせずにその場から消え去った。


「……。」


中佐の走り去った方角をただ睨み付けるタクミ。綺麗に外されていた手首は一瞬で正確にはめ直し、思考を巡らせる。


「……。」


だがその思考もコンマ数秒で中断した。


横目の端にこの国の兵士と思しき集団が雪崩れ込んできたためだ。今更到着か…と心の中で思わなくもないが、自分はこの国にとっては完全な部外者。というよりも敵対者だ。タクミは何も言わずその場をフェードアウトする。


多少のアクシデントはあったものの、タクミの目的に変更はない。目的は帝国暗部…引いては情報部の壊滅。


もともとの目的は敵地情報の調査・精査だったが、ここまで色々と判明してしまえば最早熟考の余地はない。タクミは今いる戦力、カオリとコウイチ、そして外部協力者であるアリサ達を含めた今のメンバーでの解決を図るべきと判断した。


本来ならば懐刀家において独断専行はご法度とされているが、タクミに関しては『腰刀』という立場上、ジュウゲンと同等の決定権を持っている。


「決行は今日の夜、首を洗って待っていろ。」



それは誰に対しての言葉だったのか、タクミは完全にその場から気配を消失させた。














「あっ!タクミさん大丈夫だったんですか!?」


激戦区から離脱したタクミがまず向かったのは自分が宿泊している宿屋だった。というのも、エリシアと合流しようとしたのだがいかんせん連絡の取りようがなく、もしかしたら事態が落ち着けば戻っているかもしれないと思ったからだ。


そんな予想は見事的中しており、宿屋の正面に近づくと多少外観が破損している程度の入り口からエリシアが飛び出してきた。


「ああ、何とかな。そっちこそ大丈夫だったのか?」


「はい。女将さんがずっと一緒にいてくれて、私たちもついさっき街に侵入した魔物は駆逐されたのを知って、ここに戻ってきたところなんです。」


どうやら無事が確認されたとたん女将は宿屋の損壊具合が気になって、いの一番に戻ってきたようだ。商魂たくましいという表現が字面通りである。


「そうか…俺はこれから少し野暮用があるんだが、そのまま女将さんの手伝いを頼めるか?」


エリシアにはこの国の事情を知るものとして同行を頼んでいたが、こと現状においては最早その必要はない。このまま女将に預かってもらおうとタクミは考えた。作戦の決行は夜だが、その前にやることはまだまだあるのだ。


「…わかりました、気を付けてくださいね?」


エリシアも事情を察したのだろう、特に追及することもなくそれを了承した。














「ねぇねぇリカリール姉様?この場合どちらが勝ちなのかしら?」


「そうね…分からないわね、ミリミア。」


相変わらずのあべこべな部屋や雰囲気に包まれた一室で、そう妖艶に、無垢に囁きあう二人の少女。


「失敗しましたね、もう少しわかりやすい遊びにするべきでした。」


「でもあんまり遊びすぎると御方に怒られてしまいますよ、姉様。それにあの中佐もうるさいでしょうし。」


「そうよねぇ、ここを任されたのに、遊びすぎて滅亡しました…じゃ御方に殺されてしまうわね。でも…もう少しくらい遊んでもいいんじゃない?ミリミア。」


「ふふ、確かにそうですね。それに最近はボードゲームばかりでしたし…そうだわ!姉様、今日の夜に久しぶり兎狩り・・・でもいかが?」


「兎狩り…確かに、最近は全く運動してなかったわね。それに丁度小腹も減ってきていたし、いいわねぇ。」



無垢で残忍で、可憐で悪逆な笑みがそこに二つ浮かんでいた。




すみません。少し短いです。

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