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露見したのだった(前)


「ぐっ!?」


「ブルォォォォォ!!」


繰り出した手刀が分厚い体表と獣毛に弾かれ、あらぬ隙を晒したタクミ。デュアルホーンはそれを見逃さず、その鋭利な角でタクミをかち上げようと懐に潜り込んできた。 

 

「ちっ…【金剛気】!…ぐぉ!?」


避けられないと悟ったタクミは特殊な呼吸法によって、身体の皮膚を硬質化させ角をその身で受けきった…が、衝撃までは耐えきれず後方へと吹き飛ばされる。


「ってて、大型二輪に吹き飛ばされた気分だ…(一体どれだけ街の中に入り込んだんだ?倒しても倒してもきりがない)」


未だに街中に蔓延る魔獣の数は減らず、タクミも倒した数は数えていないが相当な数になっているはず。


にも関わらず、その数は減るどころか寧ろ増えているようにも感じていた。


「流石に街ごと吹き飛ばすにはいかないしな。」


「フッ…それは勘弁願いたいな。」


そう言いながら背合わせの形で中佐がタクミの背後へと着々した。拳銃…もはや対物ライフルともいえるレベル…という戦闘スタイルの為、怪我という怪我はない中佐だったが、やはり疲労は隠せないようで肩で息をしている。


「…おい中佐、今更だがコレはどうなってるんだ?」


「分からん…が、心当たりはある。」


声だけで表情は見えないが、恐らく声色からして苦虫を潰したような表情…そんな声の中佐にタクミは疑問符を浮かべる。


「どういうことだ。」


「詳細は語れん…しかしこの魔獣達は恐らく【魔香】によって引き寄せられている。」


「魔香?」


「蟻にとっての蜜と一緒だ。」


「なるほどね。」


蟻にとっての蜜…つまり、【魔香】とは魔獣を引き寄せる香りを出す何か…ということは想像に難くなかった。


「で?本当に今更だけどなんで俺と共闘する気になんかなったんだ?」


つい先日も小手調べという殺し合いをしたばかりというのに、中佐は寝首を掻かれる可能性を孕みながらタクミとの共闘を受け入れている。


それがどうにも不可解極まりなかった。


「なに…俺も腹に据えかねた。そういうことだ。」


「いや、どういうことだよ…」


「フッ…ほら、きたぞ!」


丸まり突進攻撃をしてくるブロブロを回避しながら再びタクミは考えた。中佐の意図が読めないからだ。


アリサやヨハイムの話から統合するに、中佐は完全合理主義者。その行動すべてが最適解に向け、最短距離の選択肢で最大の結果を得ようとする。


ならば今回の魔物進行はどうだろうか?


もし中佐の目的が、タクミ達の排除という名目ならば、中佐は最適解から遠く離れた選択肢を選んでいることになる。わざわざ自分が表に出ずとも魔物進行により疲弊した所を騙し討ちなりなんなりすれば、所謂、漁夫の利が狙えるのにだ。


「(とすれば、中佐は今回の件に関しては無関係?)」


【魔香】という存在が明るみにでた以上、今回の魔物進行は天災ではなく人災。中佐の言葉を100%信じる訳ではないが、仮に中佐が黒幕だとしても、街一つを犠牲にしてまでタクミを付け狙うメリットが無さ過ぎる。


と言うよりも、今現在共闘している意味自体が無くなってしまうし、それこそ中佐ならばタクミとタイマンを張れると、タクミ自身も思っている。


「シャァァァァ!!」


「あー!もうっ!ウザイっての!!」


思考を遮るようにブロブロの回転突進攻撃を蹴り上げ、巨体が浮いたところに両手で掌底を叩き込んだ。


「ふぅっ…【諸手合打ち】!」


両手を合わせ、同じ点に対して打撃が浸透するように打ち込み、内部破壊をねらう技である。これは対人用に編み出された技の為、本来ならば外皮や骨格の堅いブロブロには効きづらいが、【最適解】による詳細な魔獣の情報の補助サポートや転生特典である身体能力の向上の恩恵により、その威力を増していたことによりブロブロにも十分な効果をもたらしていた。


タクミの基本的な戦闘スタイルは白兵戦を前提とした徒手空拳だ。しかしハヤテのように流派を汲む合気術などではなく、敢えて言うならば総合格闘技に近いが、厳密にいえばそれは…


「内部破壊に自己強化を用いた手刀…まるで暗殺術だな。」


それはそうである懐刀家は元々は暗殺家業を生業とする家系。勿論他の武術的要素も含まれるが、主に際だつのは一撃必殺に重きを置いた技が多い。


「あぁ!?今はそんな事より今の状況をどうにかすることを考えろよ!」


「…それもそうだな。仕方あるまい…"おい、ラフレシアを出動、最小限度・・・・の被害に抑えろ"」


中佐は何やらトランシーバーのようなもので一言、そういうと再び魔獣の掃討を開始した。


「?」


何を要請したのか?タクミには分からなかったが、その答えは直ぐにやってくる。


「ん…子供!?」


建物の陰から飛び出してきた小さな影…それも一人や二人ではない、沢山の子ども達がブロブロやデュアルホーンに向け駆けだしてきたのだ。


「おい!危なーーー」


そういい終える前に子ども達は驚愕の行為に出た。懐から小さな小瓶を取り出すと、それを地面へと叩きつける。パリンッと硝子の割れる音と共に、いきなり魔獣達はそれぞれ距離の近い子ども達へと進行方向を変えた。


「おい!中佐!何をやらせてるんだ!!」


恐らく…いや、確実にあれは中佐の指示でやらせているのは明白。戦闘中にも関わらず中佐に近寄り胸倉を掴む。


「………簡易的なフェロモン誘導による魔獣の一斉排除だ。」


それだけ、それだけを中佐はのっぺりとした無の表情でタクミの問に応える。


「誘導、だと?」


確かに魔獣たちは、近くに居た自分達には目もくれず、子ども達へと大挙していっている。しかしその後・・・をどうするのか?


その答えは直ぐにやってきた。


「…自己発火魔法、発動。」


風に乗って聞こえた子どもの一人の呟き…そしてどういう方法を取るのかという事実。自己発火…そのキーワードだけで何をしようとしているのかが分かってしまった。


そう…自爆攻撃だ。


恐らく状況から鑑みるに、タクミを襲った少女と同じ方法なのだろう。周り一帯を一律に燃焼させる魔法…それを魔獣相手にやろうとしている。


「なっ!?止めーーー」


タクミの制止と自己発火魔法の発動はほぼ同時だった。


街のいたるところから火柱が天へと向かって立ち登った。その数、見える範囲だけでも二十数箇所…自分が遭遇した襲撃者の発火現象よりも巨大で甚大な威力の魔法は、近くの魔獣や建物ごと全てを炭化させるに至っている。


そして先程の子ども達の姿はもうない。あるのは円形に焼け焦げた地面と、消し炭になった魔獣の死骸だけだ。


もう一度周囲を見渡し、タクミは再度中佐へと目を向けた。胸倉は掴んだまま…そして今にも殺しそうな程の殺気を込めた瞳で。



「…なにを…テメェ、なにを考えている!?」



「…被害がこれ以上増える前に、迅速且つ効率的に脅威を排除しただけだ。」





その瞳には何の感情も映っていなかった。




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