アリサ・ベリクラム
「…やはり無理そうね。」
「その様だな。最近になって王城付近は元より、情報部の入っている建物まで警備が厳重だ。何処まで中佐の手が回ってるか分からない以上下手な情報収集は命取りだろう。」
私が隣にいるヨハイムにポツリと呟くと、同意するように返事が返ってきた。
はぁ…カオリやコウイチに帝国の情報収集を頼まれたのはいいんだけど、どれも手詰まり感がハンパじゃないのよねぇ…
今私達は共同の目的の元、カオリやコウイチ…そしてタクミと手を組んで帝国に探りを入れている。
本来なら協力者なんて極力作らない方がいいんだけど、それは手を組む相手の能力が自分よりも低い場合。
カオリ達は外見こそ子供だけど、単純な戦闘力なら私達の遥か上をいくわね…特にタクミって子は中佐とやり合えるだけの戦闘力と話術と度胸がある。
手を組まない手はないわ…と言うよりも、手を組んで向こうに利を持たせないと私達じゃ太刀打ちできない。
間違っても敵対する気にはなれないしね。
だってカオリ達の住んでる村には同格以上の子供が後数人いるのよ?それらをすべて敵に回すなんて…考えただけでも嫌な未来しか想像できない。
「仕方ないわね、じゃあ……警鐘?それにあの方角は…」
「っ…スラム街、だな。」
街中にけたたましく鳴り響く鐘の音。そして遠目に見える粉塵や煙…あの方角はそう、ヨハイムが面倒をみている子供たちがいるスラム街、よね?
「…ヨハイム。」
「分かっている…この警鐘は魔物侵入の叩き方だ。あそこから魔物が侵入してきたのだろうが…今は任務中、私情は挟まん。」
…本当ならば今すぐにでも駆けつけたいでしょうに。
でも今は任務中。確かに私情で動いていい立場じゃないわね。
「あ、いたいた。ヨハイム君、アリサさん。ちょっと頼まれてくれないかな?」
っ!?誰!?…って…コウイチね。後ろにはカオリが控えてる。
「…コウイチさん、それは構いませんが何を?」
ヨハイムは驚いてなさ…いや、あの顔は十分驚いてるわね。
というか…何でカオリ達ってデフォルトで気配が全く読めないのかしら?人間、生きていれば多少なりとも気配が漏れるものなのだけど?
「今あそこにタクミ君が中佐って人と共闘して魔物と闘ってるんだけど、その間に逃げ遅れた人達の避難誘導をやってくれないかな?いくらタクミ君でもあの数の魔物と戦いながら…っていうのは難しいだろうしね。」
…タクミと中佐が共闘?それどんな状況なの?前回の死闘(私視点)から全く想像がつかないわ。
「情報収集は私達が引き継ぐから大丈夫よ?ちょっと強引な方法で無理やり引っこ抜くから。」
コウイチとカオリはそう言ってるけど、恐らくコウイチはヨハイムの心情に気付いてる。村での療養中にヨハイムはその事をコウイチに話してたから。
多分カオリもね…視線を向けたらウィンクで返されたわ。場違いな感想を言わせてもらうなら美少女がやると様になってるわね…
「…感謝します。アリサ、いくぞ。」
「はいはい。カオリ、これを。今まで集めた基本的な情報の項目を記してある。」
「あら、助かるわね。正直虱潰しに1から10まで潰さなきゃいけないと思ってたし。」
…何を潰すのかはあえて聞かない。聞いちゃいけないようなきがした。
ヒラヒラと手を振るカオリと、にっこりと微笑むコウイチと別れ、私とヨハイムは現場へと急いだ。
そして近づくにつれて聞こえてくる爆発音と奇声のような鳴き声…爆発は多分中佐、そして鳴き声は魔物のものね。
でも大丈夫なのかしら…いくら中佐とタクミが共闘してるといっても、あの規模の土煙…侵入してきた魔物はかなりの数かかなりの大型の魔物のはずだけど。
……予想は当たってたわ。魔物の方は。
「ははは!!タクミ、貴様は本当に人間か?デュアルホーンを手刀て一刀両断なんぞ聞いたこともないぞ!」
「あんたに言われたくないよ!そんな距離から建物も障害物も関係なく壁裏の魔物の心臓を弾丸一発ってそれこそ化物だわ!」
デュアルホーンとブロブロの軍勢。目測だけど100以上…いや下手をすればその4、5倍はいるわよ?
それを相手に無双するタクミと中佐。
タクミは突進を仕掛けてくるデュアルホーンとブロブロを中佐の言っている通り一刀両断。手刀は…まぁ百歩譲って納得できるけど…どうやったら蹴りでデュアルホーンが縦や横に両断されるのかしら?
中佐は…相変わらずの射撃の腕ね。銃の特性もあって弾丸の当たった魔物はその部分が爆散してるけど。
壁があろうがその遮蔽物ごと撃ち抜くのは最早お家芸ともいえるわね。
「これは魔物進行何だろうが…」
ヨハイム、言いたいことは分かるわ。
魔物の種類と規模を考えれば誰がどうみても魔物進行よ?
問題なのはそれをたった2人で相手取り圧倒しているということ…何だけど、最早あの2人なら逆に納得できてしまうから不思議よね?
「はははははは!!」
「はははははは!!」
案外似たもの同士なのかしら…
「ヨハイム、私達は避難誘導をやりましょう。心配するのも馬鹿らしいし…」
「あ、あぁ。」
でもこれだけは言える。
あの時、タクミと敵対しなくてよかったぁぁぁぁぁぁ!!
少し短いですが、どうぞ!




