6.家<リアルワールド>
短めです。
あの後洞窟を出て始まりの街へ着いた俺は夕食のため、一旦ログアウトした。
「……よいしょ」
プレイヤーたちの喧騒から一転、静かな自分の部屋に帰る。頭に取り付けられたヘルメット型のゲームハードを取り外し、ベッドを降り、部屋を出た。
「あっ!お兄ちゃん!もう、一体いつまでやってたの?」
一階に降りると、リビングの食卓に美咲が座っていた。
「すまん。ちょっと楽しくてな」
「それはわかるけどさ……ほら、早く食べるよ!」
時計を見ると午後の九時を過ぎていた。相当な時間の間待っていてくれたのだろう。テーブルには二人分のオムライスが並んでいた。
「いただきまーす」
「いっただっきまーす!お兄ちゃんが遅いからお腹ペコペコだよぉ」
スプーンですくい、一口食べる。半熟の卵がライスと絡み合い、濃厚な味わいを残す。テレビをつけると、有名芸能人のニュースやら何やらがいろいろと流れていた。
「でさ、お兄ちゃんの用事って何だったの?」
「ん、ああ。俺のユニークスキルを使ってみようと思ってな」
「へぇ。で、どうだった?」
それから俺は美咲に話した。釣り竿を求めて道具屋に行ったらクエストが発生したこと。洞窟の中で釣り竿を見つけ、早速釣ったらスキルを獲得したこと。ミノタウロスと戦い、精霊と契約を結んだこと……などなど。
「道具屋さんに釣りについて話したら発生するクエストなんてすごくお誂え向きなクエストだね・・・・・でも精霊術が使えるんだ!うらやましいなー」
「【狂戦士】だから、あんまり使えはしないけどな」
「ねえねえ!精霊ってどんな子なの?」
「うーん。痴女かな」
「ちじょっ!?」
「うん。ふぁーすときすを奪われた」
「へー。そうなんだ。それは……」
遅れて、美咲が硬直する。続いて、顔を真っ赤にして叫んだ。
「えええええええええええー!?」
ダンッ!と椅子から降り、回り込んで胸倉を締め上げてくる。
「ふぁ、ふぁーすときすしちゃったの!?お兄ちゃん!?」
「まあ、結果的にはそうなるな」
したというか、されたのだけれど。
「うそでしょ……?わたしが、貰うはずだったのに……」
「ん?なんだって?」
美咲の呟きが聞こえずらかったため、もう一度聞き返す。しかし、美咲は尚も顔を真っ赤にして、涙目で俺に言ってきた。
「お兄ちゃんのヘンタイロリコン三十男!こんなお兄ちゃんなんてもう知らない!」
「おいちょっとそれは不名誉すぎるだろ!?」
俺はまだ高校生だぞ。それにロリコンでもヘンタイでもない。しかし、美咲は泣きながら二階へ駆け上がっていってしまった。何だったんだ……。
それからは取り敢えず皿を洗い、粗方の家事を済ませた。美咲をずいぶん待たせてしまったしな。その後、再び自室へ戻ってゲームにログインした。
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