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ユニークスキル《釣り》が面白そうだったので、今日も俺は釣りをする  作者: メラ
第一エリア《シーモンクシヴェリオン》
4/24

4.スキル《精霊適正》

扉を開けると、そこには洞窟の湖が広がっていた。近づいてみると、湖の底に光源が見える。青い光が水の中で屈折し、あたりを幻想的に淡く照らしている。現実世界にあれば名所とでも謳われそうな光景である。



「ん……?」



向こう岸に目を凝らしてみると、木で作られたような何かが見える。近づくとそれはテーブルとイスだった。よく見ると赤黒く染まっており、当時あっただろう凄惨な光景を浮かべさせる。まあ、そんなことはどうでもいいと、俺はそそくさ釣り竿を探し始めた。



「……お、これは」



それは結構すぐに見つかった。濡れて、血も付いているが十分使えるはずだ。



「……よし、これでクエストクリ、」

『……って』

「え?」



今、どこからか声が聞こえた気がする。湖?



『……して……釣って……』



今確かに釣って、と聞こえた。どうやらここは釣りポイントらしい。岩の出っ張りに腰掛け、竿を振ってみる。が、紐が飛び出さない。



「あ、《実用釣り》スキルとるの忘れてたわ」



そういえばレベル10ごとに【スキルポイント】ってのがもらえるんだっけ。ウィンドウを開くと、10ポイントの【スキルポイント】があった。



「……って、《実用釣り》スキル無駄に高えな!?」



10ポイントとかマジかよ……。《限界突破》とか、めっちゃよさそうなスキルあるのに……。めちゃくちゃ悩んだが、結局《実用釣り》を習得することにした。背に腹は代えられん……。



「よし、今度こそ!」



竿を振り、浮きを投げ入れる。今度はちゃんと紐が伸びた。しばらくして、浮きが動き始める。神経を張り詰め、その時を待つ。まだだ……まだだぞ…………今だ!



浮きが完全に沈んだところを狙って竿を引っ張る。



「ぐおおおおおおお……!」



完全に油断していたが、結構強い。《バーサークLv1》と《筋力増加Lv2》を使って力を引き上げる。



「うおおおおおおお!!」



腰を反り、思いっきり引っ張ると、生きのいい魚が地面に落ちてビチビチと跳ねる。瞬間、アナウンスが流れた。



【釣り1匹を達成しました】

【プレイヤー名『シュン』にスキル《精霊適正Lv1》を与えます】



精霊適正……?俺がそれに頭をひねり、スキル説明欄を開こうとすると湖から少女が現れた!



「やあっと妾と話せる人間が出てきよったか。全く、一体何年待ったと思っておる」

「……えーと。どなた様?」



すると、少女は蠱惑的に微笑み、水の上を歩いてこちらまでやってくる。上に浮かぶカーソルは緑ではない。しかし、かと言ってプレイヤーを表す青でもない。少女のカーソルは黄色のクエスチョンマークだった。クエストに関係するってことか?



「自己紹介がまだだったの。妾はこの湖の精霊。≪水精霊≫とでも呼ぶがいい」

「精霊?」



そういえばスキルに精霊何チャラって書いてあったような。



「スキル欄でも見ればよいではないか」



言われた通り調べてみる。



=============


精霊適正Lv1


精霊との意思疎通、会話が可能になるスキル。

Lvに応じて精霊との親和性は高くなり、精霊術の威力も高くなる。


=============



要するにこれは今まで見えなかったものが見えるようになるスキルという事らしい。なんか、今まで見えなかった幼女が見えるようになるスキル……微妙な気持ちになる。



すると、少女は俺に手を差し伸べてきた。



「では、契約を交わそう。さあ、手を寄越せ」

「唐突だな」

「まあ、妾も焦っているのじゃ……ほれ、彼方を見よ」



幼女が指さす方向を見る。そこは先ほど俺が入ってきた木造のモンだった。しかし、何か様子がおかしい。



――――――ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!



扉の向こう側から、何か叩き付けるような音が聞こえてくる。



「何だよ。あれは」

「すぐにわかる」



その言葉の直後、扉が勢い良く破られる。あれほど大きかった木造の扉が、容易く吹き飛んだ。その奥の生物の姿。あれなら俺も知っている。強靭な筋肉を覆った黒い皮膚、肩に担がれた巨大な巌の大剣、そして鼻息を荒くする牛の頭部。



「グオオオオオオオオオアアアアアア!!!」



ミノタウロス。



「グオッ…………ガアッ!」



ミノタウロスは傍にあった大岩をこちらに放り投げてくる。慌てて回避すると、数秒前まで立っていた場所に巨大な岩が飛来し、砕けた。



《バーサークLv1》、《筋力増加Lv2》を使って大剣でミノタウロスに切りかかる。しかし、【アルイゲータ】すら一撃で屠った攻撃は、その皮膚で容易くはじかれた。



「硬っ!?」

「グフッ」

「……!《ダメージカットLv1》!」



剣を弾かれ、体勢を崩した俺を目掛けてミノタウロスが容赦なく一撃を加えてくる。とっさに反応できず、《ダメージカット》だけ発動させた。体が、嘘のように吹っ飛んでいく。硬い石床を転がり、やっと止まった。とはいえ、HPが九割方減少している。



「だめじゃろう?さあ、妾と契約してくれ」

「契約したら?」

「お前はあいつに勝てるじゃろうて」



幼女は嗤う。俺は差し伸べられる手のままに、手を取った。幼女の向こうで、ミノタウロスが大きく跳躍していた。ここに、その大剣を振り落とすつもりなのだろう。ここにいたら、死ぬ。



「お主、名は?」

「シュン」



だが、幼女は逃げなかった。俺も逃げられなかった。



「では、今ここに妾は汝、シュンと精霊の契約を交わす!」

「むぐっ!?」



幼女は腕を首に回し、唇を合わせてくる。え?……え?何が何だかわからない。困惑するも、そんなことはお構いなしに幼女の舌が侵入してきた。反射的に引きはがそうとするが、無駄に力が強い!そのまま絡み合い、蹂躙されていく。やがて、力が抜けた。



「グガアアアアアア!」



直後、ミノタウロスの大剣が超質量を以てその場に振り下ろされる。

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