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ユニークスキル《釣り》が面白そうだったので、今日も俺は釣りをする  作者: メラ
第一エリア《シーモンクシヴェリオン》
14/24

14.情報屋にゃん助

桜との待ち合わせの場所は【アンドセル】ログイン地点近くの喫茶店だ。そこは待ち合わせ場所としてかなりの数のプレイヤーに人気があり、またそこで提供される料理もかなり評判である。【アンドセル】に到着した俺とティアはその喫茶店を訪れた。



「さて……どこかな」



店内を見回すが、かなり広く見つけずらいかもしれない。立ち込める料理の匂いと、プレイヤーたちの喧騒。予想はしていたがやはり人が多い。しかし、二階も用意されているので階段を使い上に上る。



「む?あれではないかの?」

「どれだ?」



ティアの指差す方を見ると、そこには確かに桜がいた。しかし、一人の男性プレイヤーと話しているようで話しに割り込んでいけそうにはなかった。遠目から見ると、何やら謝っているようだった。



「話しかけてみるか?」

「いや、何か事情がありそうだ。後に桜に聞けばいいだろ」



男性プレイヤーにいちゃもんをつけられて謝っているというならば、割り込んで懲らしめるのもいいだろう。しかし、男性プレイヤーにそういった強引さは感じられず、桜も本心から謝っている様子だった。



「む、話は終わったようじゃぞ」



男性プレイヤーとすれ違い、桜が一人になったところを見計らって桜に話しかける。



「よう」

「あ、お兄ちゃん」



桜が顔を上げる。その表情は昨日よりも幾分かすっきりした表情になっていた。



「さっきの男性プレイヤーなんだが……」

「え?ああ、うん。昨日、私がお兄ちゃんを攻撃したとき巻き込んじゃったプレイヤーの人。ごめんなさいって、謝ってたの」



ああ、昨日の……【数こそ力(ナンバーイズパワー)】の奴らが言ってたプレイヤーか。あの後、【数こそ力(ナンバーイズパワー)】のプレイヤーたちはあの【決闘(デュエル)】の敗北によって手酷いデスペナルティを受けた。今では、その数を大きく減らし、【数こそ力】は解散したようだ。



経験値の喪失にステータス低下、素材にアイテムまで取られたんだ。そりゃやる気無くすわな。まあ、あっちがそのつもりだったのだから反省も後悔もない。にしても気にしてたのか。



「で、どうだった?」

「『仕方のないことだ』って、許してくれた。とってもいい人だった」



それはよかった、と息を吐く。それを弱みに握って、悪いことに利用するようなプレイヤーもいるからだ。とはいえ、あの件はこれで解決。ひとまず落ち着いたという事でいいだろう。



「で?今日は何をするのお兄ちゃん?」



桜の調子が戻ったようだ。こいつ、本当に反省しているんだろうな?



「あの洞窟の【ウェットスライム】が倒せなかっただろ?クエストをクリアするにはあれもクリアしないといけないから今日はその情報集めだ」

「とはいえ、掲示板にもそんなことは書いておらんかったじゃろう?」

「うーん……」


ここに来る途中、攻略掲示板を見てきたがログインした時と同じようにそれらしい情報は見当たらなかった。個人のプレイヤーがアドバンテージの為に隠している可能性もあるが、わざわざその一人を探すために時間を浪費してもいられない。



「どうするかの······」

「【情報屋】を御呼びにゃん?」

「そうだな························うん?」



なんか変な声が聞こえた気がする。そこには、いつの間にか猫の耳と尻尾を生やした女の子が座っていた。猫耳少女である。



「なん、だと······」



思わず驚きの声が漏れた。カーソルを見る限り、その少女はプレイヤーだ。ま、まさか······。




「ふふふ、驚いたにゃん?いつ座っていたのか、と聞かれたら、」

「まさか今時、『にゃん』語尾のやつがいたのか!?」

「そっちにゃん!?」



いや、まあいつの間にかテーブルについていたのは驚いたけれども。それより『にゃん』語尾の方がよっぽど驚いた。



「ふう······まあいいにゃん。これはにゃーのアンデンティティでもあるにゃん」

「尻尾とか耳とか本当にリアルだよな。ピクピク動いてるし······。キャラクタークリエイトでこんなの出来たっけ?」

「これはアクセサリーにゃん。かなり精巧に作られてるからにゃんでっ、って!そんなもふもふ触るにゃー!」



もふもふ、もふもふ。フワフワで気持ちいい。これは······ずっと触っていたくなるな······。



「そんにゃ······さわら、な······にゃふぅ······」

「······お兄ちゃん?」

「······ご主人様」

「あれっ!?」



とんでもない殺気を感じて手を離す。猫耳少女は顔を赤らめてテーブルに寝そべり、身体をビクビクさせていた。ちょっ······端から見たら、これ完全にセクハラだぞ!?



「はぁ、はあぁ······このアクセサリー、中途半端に神経が通ってるのか、触られるとなんか変な感じがするのにゃ······あんまり触らないでほしいにゃ」

「さすがはご主人様······なんという手つき······」

「······お兄ちゃん?」



ティアは何故かうっとりした表情で身体をくねらせているし、桜に至っては盾を構えている。このままでは町での悲劇が繰り返されてしまう。露骨に話題をそらした。



「そ、それで【情報屋】ってことはなにか知っているのか?」



顔を赤らめて身体を抱いていた猫耳少女だったが、姿勢を正して語り始めた。



「話は聞かせてもらったにゃん。にゃーに任せろにゃん」



猫耳少女は小さい胸を張る。なんかこいつが活躍する流れになってるが、そもそもお前だれだ。【情報屋】とか言ってたけど。



「にゃーの名前は『にゃん助』。このゲームで【情報屋】をやってるにゃん。ちなみににゃーの名前の由来はリアルで飼ってる猫の名前にゃ」



そのまんまだな。というか、そんな情報求めてないわ。



「ちなみに、広場の攻略掲示板、あれにゃーが作ってるにゃん」

「へー」

「ほう、それはすごいのじゃ」



それは驚いた。事実だとすればその情報は信頼できるだろう。ティアに顔を向ける。



「······ご主人様が妾を見ているのじゃ。すなわち『今夜は寝かせないぜ!』という無言のサイン······」

「分かってるだろうが真面目にやれ」



契約精霊とは心が通じているらしいから、ティアは俺の考えていることが分かる。にゃん助の情報を聞こうと考えたのにこの反応ということは単純にこいつはふざけているのだ。



「で、【ウェットスライム】をどうやって退かすか知っているのだよな?」

「少なくとも、手がかりになることは知っているにゃん」



猫耳少女······もとい、にゃん助が頷く。



「じゃあその情報を教えてくれ」

「毎度あり、にゃん」



目の前にウインドウが表示される。プレイヤー同士のトレード画面だ。提示された金額はまあまあ高かった。商魂逞しいな······。まあ、【情報屋】だから。



「······えーと、ここに金額を······ん?」



提示された金額を入れようとしたのだが、所持金が足りない。と言うか、圧倒的に足りない。そう言えば、全くアイテム整理してなかったわ。



「す、すまん。ちょっと金を工面してくる!」



席を立ち上がって階段を駆け降りる。換金用のアイテムとかあったはずだから、それで何とかいけるよな······?



何となく、コンビニでお菓子を買う金が足りなくてグミを戻しにいく場面を思い出した。

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