1.ユニークスキル
取り敢えず初日は書けるだけ書こうかと。
その後の更新速度はブクマとか評価によって変わってきます。
「では、ユニークスキルを選定します」
真っ白な空間で、女神のようなキャラクターが杖を振る。すると、部屋全体に幾多の星が浮かび、頭上で回転した。ユニークスキルの選定イベント。このVRMMOの人気の一因となった要素の一つ、それがこのユニークスキルだ。ユニークスキルには一切被っているものがなく、武器や人型のユニークスキルなんてものもあるらしい。
『シュン』。それがこの世界での俺のプレイヤー名だ。【初期職業】は防御力を犠牲に攻撃力に長けた【狂戦士】。選んだ初期スキルは《筋力増加Lv1》、《所持アイテム上限解放Lv1》、《採集Lv1》、《一定時間ダメージカットLv1》。
星々の回転が早まっていく。やがて、女神が腕を振り、星が俺の目の前で止まった。それに俺は手を伸ばし、スキル獲得イベントを成功させる。聞く限りでは、ユニークスキルには特別なものがあるらしい。このゲームは何の技術なのか他のハードを買っても別データを作ることができず、リセマラ不可能なゲームとして知られていた。しかし、いや、だからこそ特別なユニークスキルと言うものに、俺は憧れていた。
さあ……!こい!
手に収まった星の光を、手元に持ってくる。光が俺を包み、ユニークスキルのアナウンスが告げられた。
【ユニークスキル《釣りLv1》を手に入れました】
それを見て肩を落とす。なんだ?魚がよく釣れるようになるとかそういうスキルかな?
「……露骨に弱そうだな……どうせ碌なものじゃないんだろ」
正直、かなりがっかりしながらスキルの説明欄を開く。
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釣りLv1
釣った魚の合計数によって、スキルを獲得できる。
1匹《???》
3匹《???》
5匹《???》
10匹《???》
30匹《???》
etc……
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うーん。なんか隠されたスキルみたいな、そんな感じかな……でも、釣りでスキルが手に入るのは楽そうで嬉しい。
「では、あなたを始まりの街『アンドセル』へ飛ばします」
女神の声に従って、目の前が青く染まった。
◇ ◇ ◇
『アンドセル』。始まりの街と言うだけあって、そこはまさに王道な風景だった。ところどころに立ち並ぶ煉瓦の家、NPCと思しきキャラクターが客寄せをしている武器屋や防具屋、そして薬屋。そして最も目を引くのは、奥にそびえている城。
このゲーム、《オンリースタイルオンライン》の趣旨は極めて簡単だ。
レベルを上げ、スキルを取得し、段階的に解放されていくエリアを通って、最終的には魔王を倒す。それだけだ。
かなりの頻度で定期的にイベントも開催されるらしく、全エリアを攻略して退屈になる……なんてことも起こらないらしい。現在、進行可能なエリアは2つ。ゲーム開始初日という事もあって、かなり多くのプレイヤーがこの町に集っていた。
……今頃、初期エリアでレベリングでもしてるんだろうなあ……。
そわそわするが、生憎今日は待ち人がいる。初期地点に一番近い武器屋で落ち合うことになっていたので、適当に腰を下ろしてそこで待った。
「兄ちゃん、そこで何してるんだい?」
「はい?」
すると、突然話しかけられる。顔を上げると、そこにいたのは待ち人ではなく普通のおじさんだった。おじさんの頭に浮かぶ矢印のようなカーソルをみると、緑。プレイヤーなどではなく、このおじさんはNPCだ。
「まあ、人を待ってるんです」
「へえ、兄ちゃん意外と隅に置けないねえ」
「妹ですよ」
「あ、そうかい!」
おどけるような仕草と言い、おじさんの動作は従来のNPCらしさからは程遠い。まるで本物のプレイヤーのような動作である。もちろん、これにも理由がある。いわく、このゲームでのNPCはすべてAIで、特殊なNPC以外は自由な思考能力を持っているのだとか。
「じゃ、俺はここで失礼するぜ。じゃな!」
散々言っておじさんは店に帰っていった。見ると、店の中で女房に怒られてヘコヘコしている。あんなお父さんにはなりたくない。
「あのー……もしかして、お兄ちゃん?」
「ん?」
と、また話しかけられる。顔を向けてみると、そこには再びおじさん……ではなく、眼鏡をかけた幼い少女が立っていた。
「ああ、美咲か」
「もう!お兄ちゃん、本名は言っちゃだめでしょ!?」
「すまんすまん」
手を合わせて平謝りする。美咲は頬を膨らませつつも、俺の隣に腰を下ろした。こいつは美咲。俺が中学生の時、親が再婚し、新しい家族となった俺の妹だ。俺が美咲と会った時は美咲は小学生。今となっては中学生になる。結構ゲーム好きで、このゲームも兄妹揃って買ったものだ。こいつのアバターは結構リアルとは変わってるみたい。
リアルじゃ眼鏡なんてかけてなかったはずだからな。両目の視力Aだったはずだ。
「お兄ちゃんは何て名前にしたの?」
「シュンだ」
「なんか落ち込んでるみたいだね!」
「ネーミングセンスには自信がない」
美咲がくすくすと笑う。
「だったら、お前は何にしたんだ?」
「『桜』だよ」
「スタンダードだな」
「うるさい」
また頬が膨らんだ。女と言うのは扱いが本当に難しい。これから武器や防具を揃え、レベリングをしようと言う話だったので、お互いのことを把握するためにもお互いに簡易ステータスを開示した。俺のステータス画面を見た桜が、何とも微妙そうな反応をする。
「……お兄ちゃん。釣りって……」
「いや、そうなる気持ちはよくわかる。でも、結構いいスキルなんだぞ?」
「どういう?」
「魚を釣るごとに、スキルが獲得できる」
「へぇ!すごいね!」
桜が笑顔になる。にぱー。可愛い。っと、違う違う。しかし、俺が正気に戻るころには桜はまた微妙そうな顔を浮かべていた。
「あれ……でも、釣りで手に入るスキルなんて、そんなに使えるものなの?」
「あー……そういう考え方もあるのか」
都合のいいことばかり考えていて、あまりそういうことを考えていなかったな。ちょっと現実に引き戻された気がする。まあ、いいか。次に、桜の簡易ステータスを開いた。
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桜
【剣士】Lv1 HP330
所持スキル《俊敏上昇Lv1》《光属性魔法Lv1》《盾術Lv1》《HP上昇Lv1》《盾王》
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へー。これが桜のスキルか。俊敏上昇とかHP上昇とかは普通だな……。光属性魔法って、あいつ魔法剣士でも目指すつもりなのだろうか。《盾王》とか名前すら聞いたことないスキルもある……へえ、面白いな……。
…………………は?
俺がそれを理解するのに、数秒を有した。
「チートスキルもらってんじゃねえか桜ぁぁぁぁああ!」
【悲報】身内にチートがいました。
読んでいただきありがとうございます。
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