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電気仕掛けの精霊
お湯が温くなった頃、私はやっと浴槽から出た。
長く入り過ぎたせいで少し頭がぼーっとなっている。
「メリッサ……もう寝た……?」
部屋に戻り、音を立てないように扉を開けると、壁際のベッドのシーツがこんもりと盛り上がっているのが見えた。
「……うぅ……ん……もう食べられないよ……」
一体何の夢を見ているのか分からないが、起きる気配はない。
幾ばくか微笑ましい気持ちになり、扉を閉める。
(……なんだかんだ言っても、やっぱり子供ね……疲れて寝ちゃったのね)
私は機械室へ行く事にした。
相手がAIだろうが何だろうが、私はとにかく誰かと話したかった。
一人で考える事には慣れているつもりだったが、もう、私のこれまでのささやかな精神世界は、メリッサという少女の登場で一変してしまったのだ。
「カーラ、いる?」
認識コードを唱え、私はタワーの前でAIを呼んだ。
「お呼びですか、アイリス?」
夜も更けているというのに、相変わらず小鳥のような声で、AIは間髪置かずに応えた。
電気で動くとはいえ、カーラもまた精霊なのだと私は確信する。




