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ノートパソコン
「メリッサ、あとは私が持ってるから荷物を片付けてらっしゃい」
私はそう言い、少女からノートじみた装置を取り上げた。
「それじゃアンソニー、またね」
少女は装置(ノートパソコンというらしい。捻りのない名前だ)に向かってひらひらと手を振ると、廊下へ駆け出した。
ぱたぱたぱた。
足音が遠ざかって行く。
それを確認してから、私はノートパソコンを胸元に抱え上げた。
「……聞きたい事が色々あるわ」
「答えるか答えないかは、こちらの自由だがな……今日のところは一つだけ答えてやる」
私は深呼吸する。
「科学は魔術に追い付いた、って言ったわよね?」
「ああ、それがどうかしたか?」
ノートパソコンの熱が掌からゆっくりと身体に染み込んで来る。
初めての感覚だ。
でも、遠い昔、この真逆の感覚をどこかで味わったような気がするが----思い出せない。
「だったら、どうしてあの子は……メリッサは、あんなに小さいの?」




