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fragment2
森の中は真っ暗で、ランタンの灯すら闇に吸い込まれてしまう。
灯だけじゃない。
言葉も、息も、それから、身体の中の血すらも、この森の闇に吸われていくような、そんな心持に僕はなっていた。
「姉上……僕はここにいるから、だから……しっかりして……」
心細さを振り払うように、僕は声を絞り出す。
「きっと助かるから……」
そう言ったのは、もう何度目だろう。
僕は恐る恐る隣に手を伸ばす。
姉上の、腕に、触れる。
「マヌエル……私はもう、駄目だから……だから、早く……この森から……出なさい……」
姉上の腕は、さっきよりもずっと冷たくなっていて、僕は言葉を失う。