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約束の地 カナン

 アンソニーは、まだ多くの事を私に隠しているのだろう。


 それは仕方がない。

 私はいわゆる魔女だし、魔女は----備品に過ぎないのだから。


 だからこそ私は、自分の力で突き止めなければならないのだ。


 我々はどこから来たのか?

 我々は何者か?


 我々はどこへ行くのか----?


「どうした? 何がおかしい?」


 法王が怪訝そうな顔になる。 

 どうやら私は一人で笑みを浮かべていたようだ。


「ううん、別におかしくはないんだけど……ただ、昔に受けた教理問答をちょっと思い出しただけ」


 教理問答とは、洗礼や堅信などを受ける前の信者に施される入門教育のようなものである。

 キリスト教の教理を簡単にまとめたもので、子供でも理解しやすい内容になっている。


「フン、伊達に500年生きてた訳ではないとでも言いたいのか?」

「……そう言えたらカッコいいんでしょうけど、実際のところそのうちの480年くらいは魔女狩りのお陰で焼かれたり地下に押し込められてたからね、ま、人生経験なんて皆無に等しい訳なのよね」


 そう言うと、法王は決まり悪げに目を逸らした。


「魔女狩りも、最初から全てが悪だった訳でもない」

「あら、それ前にも聞いたわね……魔女狩りは、スカウトだったんだってやつ」


 苦しい言い訳だ。

 今このご時世にもし信者の前でそんな事を言ったら、たちまち拡散されてぐうの音も出なくなるくらいに『ポリティカル・コレクトネス的な正論』で叩きのめされる発言である。


「でも確かに……その説は正しいのかもしれない」

「……は?」


 いや、貴方言った本人でしょ。

 そんな意外そうな顔されてもこっちがビックリするわ。


「ペテロは、魔女……あるいは魔女の素質を持つ者をスカウトして歩いたんだと思う」

「……何のために?」


 それは、仲間を集めるために。


「仲間を……魔女を集めて、彼は一体何をするつもりだったんだ?」

「……目指していたんでしょうね、約束の地を」


 法王が、ゴクリと唾を飲む音が響いた。


「フェニキア……いや、カナンの事か?」

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