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審問

 私は魔女として審問の場に引き摺り出された。


 罪状は分からない。

 聖体のパンを盗んだ訳でもなく、占いをして見せた訳でもない。


 告発したのは----恐らくは、伯父かもしくはその一族か。


 ただ、森の奥で甦ったという厳然とした事実のみで、私は周囲の人間を恐怖と混乱に陥れてしまったのだった。

 それが、私の生きた中世という時代であったのだ。


『お前は、魔女だ』


 だけど、私が返す言葉はただ一つしかなかった。

 私は魔女なんかじゃない----と。


 黒衣の男達は私を囲み、代わる代わるに問い、責め立てた。

 白髪の者もいれば、まだ私よりも幾つか上なだけのように見える者もいたが、皆一様に異様に強い眼光を放っていて、それが何よりも恐ろしかった。


『お前は魔女だ』


 私は首を振る。


『私は魔女なんかじゃない』


 何故そう言い切れるのだと男の一人が私に問う。


『お前はあの森で死にかけ、魔女の手で甦った』

『お前は魔女として甦ったのだ』

『お前の弟も、そう証言している』


 マヌエルの名を聞き、私は初めて動揺する。


『マヌエルは……弟は無事なの……!?』

『無事だ……だが忘れるな、お前が魔女であるならば、あやつもまた魔女の弟という事になる……お前の答え次第ではどうなるかは分からないという事は、肝に銘じるんだな』


 それは恐らく狡猾な罠だった。

 だが、分かっていても、私の胸にその警告は深々と突き刺さった。


『あの子は……マヌエルは、何も知らない……』


 そう、私はその時まで固く信じていた----私の弟ほど無垢な魂はこの世にないのだと。

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