表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
203/381

魔女狩り

 「変ね……正反対だと思ってきたのに、私達は……魔女と教会は、まるで合わせ鏡の中にいるみたい……」


 自分の声が震えているのが、分かった。


 魔女は教会成立前からの知識を用い、精霊を使役し、見えない力を感じながら生きてきた。

 それを異端として咎められ、審問にかけられ、全てを奪われて穢れし者という烙印を押された----法王庁によって。


 だが、それは姿は違えど同じ者同士の間で起こった事だったのだ。

 そう、例えば、新月と満月のように----あるいは、同じ血を引く姉と弟のように。


「でも……それならなおさら……なぜ、法王庁は魔女狩りなんかをしたの?」


 怒りの感情というよりは、むしろ不思議な気持ちが口から出ていたという方が正しいだろう。

 答えは、端から期待していた訳ではなかった。


 アンソニーは眼鏡を押さえるようにして、しばし沈黙した。


「魔女狩りは……あれは、迫害ではない……いうなれば、法王庁によるスカウトだったんだ」


 聞いてはいけない事を聞いてしまったと思う時があるとしたら、今がまさにその瞬間だったのではないのだろうか。


「……スカウト?」

「……あぁ、意味は分かるか?」


 意味は分かるが、どうしてそんな単語が出て来たのかが飲み込めない。


「スカウトは、その……えぇと、大リーグ……の、野球選手とか……?」

「いや、スポーツでスカウトと言えばマンUとかが有名だろ?」


 いやそれは知らない。

 そして変な所で拘りを捻じ込んで来るのはやめて欲しい。


「とにかく、優秀な人材を探し出して連れて来るという意味でしょ?」

「平たく言うと、そうだな」


 そうは言われても、私には全然意味が飲み込めないままだ。


「誰よりも異端を異国の神の存在を理解していたのは……法王庁だ」

「……だから?」


 だから。

 だからこそ。


「……あ!」


 私は、小さく叫んでいた。


 法王庁は中世の時点で既に回帰を密かに決めていたのだ。

 信仰と精神世界の生まれた、根源へ----。


「多少手荒ではあったが、魔女狩りは、太古の知恵を……記憶を宿した者達を探し出すための、壮大なスカウトだったんだよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ