魔女狩り
「変ね……正反対だと思ってきたのに、私達は……魔女と教会は、まるで合わせ鏡の中にいるみたい……」
自分の声が震えているのが、分かった。
魔女は教会成立前からの知識を用い、精霊を使役し、見えない力を感じながら生きてきた。
それを異端として咎められ、審問にかけられ、全てを奪われて穢れし者という烙印を押された----法王庁によって。
だが、それは姿は違えど同じ者同士の間で起こった事だったのだ。
そう、例えば、新月と満月のように----あるいは、同じ血を引く姉と弟のように。
「でも……それならなおさら……なぜ、法王庁は魔女狩りなんかをしたの?」
怒りの感情というよりは、むしろ不思議な気持ちが口から出ていたという方が正しいだろう。
答えは、端から期待していた訳ではなかった。
アンソニーは眼鏡を押さえるようにして、しばし沈黙した。
「魔女狩りは……あれは、迫害ではない……いうなれば、法王庁によるスカウトだったんだ」
聞いてはいけない事を聞いてしまったと思う時があるとしたら、今がまさにその瞬間だったのではないのだろうか。
「……スカウト?」
「……あぁ、意味は分かるか?」
意味は分かるが、どうしてそんな単語が出て来たのかが飲み込めない。
「スカウトは、その……えぇと、大リーグ……の、野球選手とか……?」
「いや、スポーツでスカウトと言えばマンUとかが有名だろ?」
いやそれは知らない。
そして変な所で拘りを捻じ込んで来るのはやめて欲しい。
「とにかく、優秀な人材を探し出して連れて来るという意味でしょ?」
「平たく言うと、そうだな」
そうは言われても、私には全然意味が飲み込めないままだ。
「誰よりも異端を異国の神の存在を理解していたのは……法王庁だ」
「……だから?」
だから。
だからこそ。
「……あ!」
私は、小さく叫んでいた。
法王庁は中世の時点で既に回帰を密かに決めていたのだ。
信仰と精神世界の生まれた、根源へ----。
「多少手荒ではあったが、魔女狩りは、太古の知恵を……記憶を宿した者達を探し出すための、壮大なスカウトだったんだよ」




