神の来たる道
「神の教えのみが唯一の教え、神の救いのみが唯一の救い、神の御業のみが唯一の奇跡……か?」
アンソニーは乾いた声で笑った。
「お前、魔女の癖にそんな風に考えてたのか? 今の教会じゃ排他主義なんて流行らんぞ?」
「だ、だって……実際教会はこれまでそう教えてきたじゃないの!? 教会の言う神が唯一、その教義が絶対だって……!」
地面が沈み込んで行くような錯覚に囚われながら、私は懸命に反論していた。
「それなのに、貴方達の言う神じゃない神こそが、本当の……実在する神だなんて……信じられる訳ないじゃない!」
これじゃまるで私が狂信者のようだ----。
頭の片隅でそんな事を考えながら、しかし私は駄々を捏ねる子供のように、男に向かって問い続けてしまう。
「ましてや、メリッサがその神の存在の証だなんて……私からしたら、貴方達の方が異端だわ……!」
だって、そんなはずはない。
唯一絶対神の存在が、虚構に過ぎなかっただなんて----あってはならない。
そうでなければ、これまで教会が、そして法王庁が人々に示してきた神の姿とは何だったのか。
私達魔女の受けた苦しみは一体何のためだったのか----。
アンソニーはまたメモ帳に何か書き付けた。
噴水の音が、すうっと遠くなる。
「お前達の大好きなクリスマスだって、ドルイドの信仰が入ってる」
特に言い聞かせる風でもなく、男は空を見上げた。
「認めようが認めまいが、もうとっくに……いや、最初から我々教会は様々な形で土着の信仰を取り入れ、異国の神の力を借りているんだぞ?」




