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神へと至る道
「神は存在する」
司祭枢機卿の答えは簡潔だった。
「その証拠が……魔女の……メリッサの存在なのだ」
「待ってよ、逆説的かつ論理が飛躍しているわ」
急に得体の知れない恐怖が込み上げて来て、私は身震いする。
「いや、神の存在は世界各地のこれら秘術の体系に断片ながら示されている」
「それだけじゃ……単なる想像力の産物に過ぎないかもしれないじゃない」
未知の現象。
口伝えの存在。
説明のできない能力。
この男は、それら全てをとりあえず説明するための概念として神を挙げたのではないのか。
「逆だ……神の痕跡が人類の歴史に残されているんだ」
まるで信者に説いて聞かせるかのように、男の声は静かだった。
だからこそ、恐ろしかった。
この男を初めて恐ろしいと思った。




