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局長の提案
「……カーラにワタリガラスの脳を組み込んである話はしたよな?」
「ええ」
多分、私もアンソニーも、ある一つの可能性に気付いている。
だが、それを言葉にするのは多少の勇気が必要だった。
「……ちょっと上に来い」
次に口を開いたのは、司祭枢機卿だった。
「温室の入口で待ってろ……ただし、勝手に出ようとしたら解除前の封印に頭から突っ込ませてやるからな」
「……はぁ」
無駄に長い人生を過ごしてきた自覚はあるが、こんなにそそられない待ち合わせの文句もなかなかない。
だが、今の私達の結論は、どうやらこれしかないようだった。
庭園管理局という組織がなぜこの法王庁に存在するのか。
中庭だけがなぜ彼らの直轄なのか。
なぜ、庭師というもう一つの肩書が与えられているのか。
恐らく局長であるアンソニーは、私の意図に気が付き、それを直接確認しようとしている。
「……いいけど、あまり待たせないで……私、そんなに気が長い方じゃないから」