敵か味方か
『……この子と、この子の姉は、サンプルの中では唯一の双子の個体でしたから』
カーラの声に、私の意識はいきなり深層から引き上げられた。
(……っ!?)
水中から急激に水面を目指して浮かび上がった時のような、眩暈に似た感覚が額の奥で弾け、小さな星が眼前に無数に散る。
(気持ち悪い……なんか、お酒飲んだ時みたいで……頭がズキズキする……)
通路の照明は何事もなかったかのように私達を照らしていた。
『……なので、この二人に関してはセットで行われる実験もいくつかあり……』
『待って……!』
私は急いでカーラの言葉を遮った。
『ごめん、あの、ちょっと聞いてたら具合が悪くなっちゃったから……その話はまた後で教えて?』
今のアネモネが敵か味方なのかは判然としないが、彼女が何かの術を使ってここまで侵入して来たのなら、まだこの場所に留まり、私達の話を聞いている可能性がある。
(少なくとも、味方です、とは言えない雰囲気だったわね……)
いずれにしても、敵かもしれない相手にこれ以上法王庁の情報を手土産に持たせるほど私は親切ではない。
『了解しました』
AIはあっさりと念話モードを中断して、そのまま沈黙する。
アネモネの事を教えるべきかどうか数秒迷い、私は結局何も言わない事にした。