アネモネの予言
(アネモネ……貴女、今どこにいるの?)
⦅……あなた……を……⦆
私の呼びかけにやっと答えが返って来るが、その声は遠く、途切れ途切れで聞き取れない。
(聞こえない……! どこにいるのよ……!?)
⦅……あなたを……許さない……⦆
私の頭に流れ込んで来たのは、思い詰めたような囁き。
見えるはずもないのに、私の目には、唇を固く噛み締める白髪の少女の姿が映っていた。
⦅あなたは、私達姉妹を裏切った……私達は、ずっと……あなたの事を……⦆
(ちょっと待ってよ! 姉妹って誰の事!? 裏切ったって、どういう意味……!?)
何を言われているのか分からないという困惑と、少しでも彼女の情報を得たいという焦燥がない交ぜになったまま、私は声の限りにアネモネに呼び掛ける。
(ねぇっ、何があったのか教えて! トゥーレ協会に協力しているのは貴女達なの……!? アイツらは私達の敵なのに、どうして……!?)
⦅……我らグラン・ルーメの下に……再び集いし時……⦆
アネモネの声が、ぼんやりと曖昧になり始めた。
それと時を同じくするように、通路の照明が短く点滅を繰り返す。
⦅偽りの王国は崩れ去り……新しき王国が……始まらん……⦆
それっきり、声が聞こえる事はなかった。




