【ハロウィン特別編】 せめて、魔女らしく
これは私達が書庫に行く少し前の話ーーーー。
「ねぇアイリス、アイリスって魔女じゃない?」
「魔女じゃないけど……まぁ、一応魔女って事になってるわね」
唐突に何を言い出すのかと思いながら私はそう返した。
「でさ、私も魔女じゃない? すっごく強くてすごい魔女」
「……の、クローンね」
メリッサは力強く頷く。
「なのにさ、全然魔女らしい格好してないのって、ダメだと思うの」
「……そ、そう?」
いや、魔女である事は、ばれない方がいいと思うけど。
「そうだよ、人は見かけで人を判断するんだよ? 次に出撃する時はさ、すっごい強くてすごい魔女っぽい恰好して行こうよ」
「魔女……っぽい……?」
頑張って思い浮かべようとするが、本で読んだ魔女や噂話の魔女は、そもそも格好についてまでは言及されていなかった気がする。
「ええと、魔女っぽいって、どんな風なの?」
「えー、真っ黒い服に、とんがり帽子で、箒持って……あとは、顔の付いたカボチャ持って……すごい悪そうだった」
「ここにいた魔女でそんなのは一人もいなかったわよ。だいたいそんな荷物だらけじゃじゃ戦えないし」
私は火刑で服が燃えてしまったので誰かの古着を渡されたし、
工房からそのまま連れて来られたような魔女は、薬草の染みだらけの作業服を最期まで着ていた。
「そもそもそんな格好、どこで見たのよ?」
「ラボの人がノートパソコンでこっそり動画見せてくれた……昔のシブヤの魔女だって。あとゾンビとか、色んな格好の人がたくさんいて、あの頃は俺も若くてとかなんとか」
「……シブヤの魔女ね? いたっけ? 聞いた事ないけど……」
私は首を傾げながらチョコレートの空き箱を拾い集めるのだったーーーー。