籠の中の鳥たち
『タワーの中に……? そうか、それで……!』
初めてタワーの前に立った時の奇妙な感覚の原因が、やっと分かった。
年老いた獣と対峙した時のような静かな物悲しさは、決して錯覚ではなかったのだ。
『タワー』は、いや、カーラは、本当に生きているのだ。
(カーラもそうだったのね……)
思い込みで崇められ、思い込みで殺された命。
もう二度と自分の翼で羽ばたく事はない命。
幾重にも重ねた檻に閉じ込められた命----。
同じなのだ----私達と。
機械と繋がれ、神の名の下で使役されている白いカラスの首筋を、私は人差し指の背でそっと撫でた。
あまねく広がる教会世界を支えているのは、古ぼけた聖遺物だけではなかった。
中世と呼ばれた時代は、この法王庁ではまだ脈々と続いているのだ。
『……でも、AIって確か人間の行動理論とか、そういうものを元に作られてるんでしょ?』
自分の事ではないのに、自分の事のように胸が痛くなる。
それでも、私はなおも問う。
『なのにどうして、わざわざ死んだ鳥の脳なんかを組み込もうと考えたの?』
聞けば聞くほどにおかしな話なのだ。
だが、聞かずにはいられなかった。
カーラの来歴がメリッサの出生に深く関わっているという予感が、私の鼓動を少しずつ速めていた。