惜しみなく少女は奪う
「でも……それって、食事だから……お腹が一杯になるから好き、……なんでしょ……?」
「違うもん!」
唇をツンと尖らせ、少女は即座に否定した。
「どうしてそんな意地悪言うの……?」
よく見ると、その唇は微かに震えている。
「あっ、ご、ごめん……っ! そういうつもりじゃなくて……!」
私は大慌てで両手を振って見せた。
このままだと、確実に泣かれてしまう。
「そうじゃなくて……っ、えぇと……」
今泣かせてしまったら、罪悪感で今夜は絶対に眠れそうもない。
そこまで思ってしまうくらいに、少女の反応は一つ一つが私の心臓を揺さぶってくる。
(あぁ……どうしよう……何で私、こんなに変な汗かいてるんだろ……?)
「ほら、あの……っ! メリッサはまだ子供だから、その……っ、ちゅーの意味、がよく分かってないのな……って……思ったから……」
「ちゅーの意味?」
しどろもどろになっている私にを見下ろしたまま、少女は小首を傾げた。
「ちゅーに意味なんてないよ?」
そして、にっこりと微笑む。
「だって、ちゅーって、好きな人に好きって伝えたいからするんでしょ?」
「あ……え……っと、まぁ、そうだけど……」
雲間から一瞬にして日が差し込んだ草原のような、鮮やかな変化が眩し過ぎて、私の思考力はさらに失われてしまった。
「じゃあ、いいよね?」
「えっ……!?」
んちゅ……っ……。
何が「いい」なのかさっぱり理解できていないまま、私の唇は笑ってしまうくらい簡単に、またメリッサに奪われていた----。




