ご褒美
ほっとしてつい全身の力を抜いた瞬間、
「んっ……!?」
息を吸い込もうとして開きかけた唇を、もう一度塞がれてしまう。
「んんッ、んん……ッ?」
私は反射的に少女の腕を掴もうとした。
でも、その感触があまりに頼りなくて、躊躇してしまったのだ----。
「んちゅ……ッ……」
今度は少しだけ力を抜いた唇で、私の下唇はそっと挟み込むように啄まれていた。
「はぁ……ッ、もう夕食は終わったでしょ……ッ」
外そうと思えば外せるほどの絶妙な力の入れ方が、逆に私の抵抗を封じてしまっている。
「んーッ、違うの……っ……これはッ、んッ、ごはんなんかじゃなくて……」
甘やかなのに、どこか切羽詰まったような声で、黒髪の少女は私に迫る。
「んッ……ごほうび……ッ、なの……っ!」
はぁはぁと息を弾ませながら、メリッサは顔を上げ、私をじっと見詰めた。
「ご褒美……?」
「そう……!」
そのままぐっと顔を私の顔に近付ける。
唇と唇が触れ合いそうな近さのままで、少女は少し悲しそうな表情になった。
「忘れちゃったの……? アイリス言ったよね? 目を覚ましたらご褒美あげるって……」
「あ、あ……うん……それは覚えてるけど……」
それとこの強引なキスがどう結び付くのかまだ理解できていないまま、私は答える。
「ちゃんと聞こえてたんだからね? だから頑張ってこっちに戻って来たんだよ……っ?」
あっという間に潤んだと思った次の瞬間、少女の瞳からは大粒の涙がぼたぼたと落ち始めた。