表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/381

相似と相違

 真鍮の蛇口から勢いよく流れ出る井戸水は、今日も冷たい。


「ねぇ、上でずっと何してたの? もう、待ちくたびれちゃったんだからぁ……」


 私が地下に戻ってから、メリッサはずっとこの調子だ。

 私のワンピースの袖を掴んで離さなかったり、かと思えば、私が歩くたびに後ろを付いて回る。

 彼女なりに何か不穏な空気を察しているのだろうかとも思うが、単に空腹を募らせただけなのかもしれない。

 子供の考えている事は、私にはやっぱり分からない。


「……もしかして、アンソニーとケンカしてたの?」


 少し声を潜めるようにして聞かれて、私は苦笑した。


「ケンカなんかしてないわよ」

「ほんと? ほんとにケンカしてない? 叩いたりしてない!?」


 どうやら心配してくれているらしいが、私が叩く方なのはちょっと納得がいかない。


「……ケンカもしてないし、叩いてもいないわよ」

「ならいいんだけど……」


 何か考え始めた少女を横目に、私は水洗いの終わった籠の中の花を、皿に盛る。

 これから私の血になり、そしてメリッサの命に変わる毒の花達----。


 白いドクゼりの花に付いた水滴が、蝋燭の灯にキラキラと光っている。


「アイリスは、もっとアンソニーと仲良くすればいいのに」

「いや、アレは仲良くとかそれ以前の話だから……」


 私の言葉に、少女は首を傾げた。


「そうかなぁ? アイリスとアンソニーって、なんだか似てる気がする」

「ちょっと……っ、あんな性格悪いオヤジと私のどこが似てるっていうのよ……?」


 思わず出してしまった大声に、メリッサは「ほらね」というような顔をして見せる。

「そうやってすぐ怒るところとか」

「……ッ!」


 的確に痛い所を突いて来る様子は、今度は大人顔負けだ。


(本当に、分からない子だ……)


 テーブルに皿を置く。

 私の指先は、まだ冷たい。


「それじゃ、ごはんにしましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ