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我ら天の国を遠くに望みて

 今度こそ、アンソニーは唖然としているようだった。

 私としては、むしろその可能性を全く考えていなかったらしい事の方に驚いたのだが----。


「……そうだな、灰の調査については色々と検討する必要があるようだ……ラボの件も含めてな」

 ようやく言葉を発した司祭枢機卿は、今気が付いたとばかりに布靴スニーカーの汚れに目をやった。

「今日はここまでにするぞ……これ以上いると毛穴から瘴気が染み込んで来そうだ」

「それは大変ね」

 私は肩を竦めた。


「でもそんなに気にしなくたって、貴方くらいの地位と経歴があれば、いつ死んでも天国行きが決まってるようなものじゃない?」


 それはただの軽口のつもりだった。

 あるいは、無意識のうちに漏れ出た羨望が言わせた言葉だったのかもしれない。


「いや」  


 だが、アンソニーの声は、やけにはっきりと耳に届いた。


「私は、もう地獄行きが決まっているからな」

「……え?」


 意味を聞こうとした時には、司祭枢機卿は既に温室の出口に向かっていた。


(それってどういう事……?)


 考えても分かるはずがない。

 自分でも驚くほどに、その言葉は胸に深く引っ掛かっているのにも関わらず----。


「……さてと、私もお姫様の元へ戻りますか」


結局は、去って行く背中を見送って独りごちるしかなかった。

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