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見えない戦争

「パチェリが……どうしてそんな事を……?」

「毒薬を作るためよ」


 薬草は、処理の仕方やその容量を変えるだけで毒薬の材料となる。

 温室の薬草を秘薬以外の用途に使う事は厳禁だったが、その禁を破ったのは、魔女ではなかった。


 かつて秘薬を作っていた魔女を頼ってパチェリがこの温室に来たのは、彼がまだ法王という肩書を得る前----法王庁国務長官セグレタリオ・デイ・スタトを務めていた時の、冬の夜だった。 


「確かに彼は一九三〇年の二月から九年間国務長官だったが……いや、しかし魔女の存在を知るのは法王と我々庭師だけだ……!」

 

 司祭枢機卿の言葉は正しい。

 私達魔女の存在を知り、それを使役できるのはこの法王庁では法王を頂点としたごく限られた人間のみなのだ。

 国務長官という法王に次ぐ地位にあっても、彼もまた中庭に魔女がいるなどとは知らずに過ごすはずだったのだろう。


「ええ、通常であれば、国務長官は私達の存在など知り得なかったでしょうね」

「何が言いたい?」

 アンソニーは眉を顰めた。


「彼は病弱な法王の事実上の代理として、外交から教会の統治までを任されていたんじゃない?」


 私は籠の中からもう一輪、花を取り出す。

 司祭枢機卿は沈黙したままだ。


「私達がベルリンに連れて行かれる何年も前の話よ……その頃からパチェリには大戦を終結させるための彼なりの考えがあったんでしょうね」

「……ヒトラーを暗殺する計画があったという話は知っている……だが……」


 呻くような声で、アンソニーは応える。


「だが……そんなものはオカルトマニア共のくだらない与太話だ……!」

 

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