fragment14
僕は思う。
魔女が僕達人間の命を扱う事ができるというのなら、それは神様とどう違うんだろう----?
ぼんやりとした僕の疑問は、だが、形を成す前に曖昧なものとなって、どこかへ消えてしまう。
「言葉は、意思より生まれしもの」
何かの詩を朗読するかのような凛とした響きに、僕は縋り付くような心持になっていた。
「意思は混沌より生まれしもの」
まるで、この世界に僕と姉上と魔女の三人しかいないような感覚だった。
孤独で、充足した、完全な世界が僕を包んでいた。
僕は、世界の真ん中に存在していた。
僕が望めば、世界は僕のために願いを叶えるのだと、僕は分かっていた。
「混沌は魔女を生みしもの……しからば、魔女は言葉、言葉は魔女なり」
姉上----■■■の身体を抱き締めながら、僕は魔女に唱和していた。
「我、今この魂を二つに分けん」
魔女は、ゆっくりと立ち上がる。
ローブの紐に手をかけ、静かに結び目を解いた。
「……汝、我の魂の片割れを受けよ」
漆黒のローブの下には、魔女は何も着けていなかった。
目を逸らすのも忘れて、僕は白く滑らかな裸体をただ見ていた。
「汝は我、我は汝」
唱えながら魔女は自分の胸元----柔らかくて重たそうな膨らみの下に手を差し込んだかと思うと、掌で何かを包むような仕草をする。
そして■■■の胸元の傷、ちょうど心臓のある場所にその握った掌を静かに押し当てた。
「……汝と我、一つなり」
その時僕は■■■
(雑音)
(雑音)
(雑音)
「……以上が、昨年発生した魔女による特殊災害、いわゆる【case-M】において唯一回復した事故調査委員会委員■■■からの聞き取りを録音したものとなりますが、公式のリストからは削除されております事をご了承ください」
(雑音)
(雑音)
「お聞きのようにノイズが激しく、また、内容が不明瞭な点も多いため日を改めた聞き取りも検討いたしましたが、被験者の脳波の異常活性が未だに観測されるなど、被験者の精神的肉体的負担を考慮してこの聞き取りを以て調査を終了いたします」
(雑音)
(雑音)
(雑音)
「なお、もしまた当該委員■■■への聞き取りを行う必要があると認められた場合は、電子機器は全て被験者の脳波による干渉・破損の恐れがあるため、カセットテープでの録音を徹底するよう、また、音声の再生は一日一回に止め、必ず単独での再生は行わず、二名以上での再生を厳守する……」
(雑音)
(雑音)
(雑音)
(無音)




