パスカ
「ガルルルッ!」
「ウゥゥゥッ、ワゥゥッ!」
絶命したのを確かめる暇はなかった。
息をつく暇もなく、獣達が次から次へと飛び掛かって来る。
「く……ッ、なんて数なの……ッ!?」
柱の影から、石棺の下から、黒い影は湧き出るように現れ、吸い寄せられるかのように緑の炎目がけて突進して来る。
どの目も赤く輝き、その動きは、もはや殺戮の欲望のみに突き動かされていた。
(これは皆、元は人間だったんだ……)
そう理解していながら、しかし、
ザシュ……ッ!
私は魔獣の首を、胸元を、剣で薙ぎ続ける。
ナイフをバターに沈めるように、深々と差し込み、動脈を断ち切る。
身体が自然に動いていた。
この前までは人間だった獣達を、
誰かの家族であっただろう者達を、
私は斬る。
斬り続ける。
私は今、どんな目をしているのだろうか?
「ギャウンッ!?」
彼らは剣の一振りで血飛沫を上げながらも、なおも獲物に喰らい付こうとする。
緑の炎に向かって、あるものは口吻を伸ばし、あるものは人間めいた前脚を差し出し鉤爪で宙を掻き、そして絶命する。
その姿は、まるで彼らの王でも崇めているかのようで----。
魔法陣の周りに屠られた魔獣が散りばめられた頃、私の息は乱れ、四肢の感覚はすっかりなくなっていた。