fragment 10
そして、長い長い沈黙が、僕と魔女の間に流れた。
永遠にも思える、本当に長い時間だった。
時折僕のしゃくり上げる声だけが、小さく響いて----。
闇に包まれているはずなのに、森の中の全ての存在が、僕と魔女と、そして横たわる姉上に視線を注いでいるのを感じていた。
そこは確かに、魔女の森だった。
「……貴方、お姉さんを助けたいのね?」
魔女が、口を開く。
「助けたいです……! お願いします……!」
「……死こそが貴方のお姉さんの運命なのだとしても?」
言い聞かせるかのような、どこまでも優しく、静かな声で、魔女は僕に問う。
「命あるものは、必ず死ぬ……それがこの世界の法則であり、理なのに?」
「……はい……」
怖い。
今まで生きていた中で、この瞬間が、一番怖い。
(でも、このままじゃ、姉上は……!)
子供の僕に、この世界の理なんて分からないし、ましてや、それに背くという事がどれほど恐ろしい事なのかなんて、理解できるはずもなく----。
「この世界の理に背く事になるのだとしても、それでも……助けたいの?」
僕は頷く。
この腕の中の存在が、永遠に失われる事の方が、もっと怖かった。
それだけだった。
幼い僕にこの世界への反逆を諾わせた理由は、ただそれだけだった----。