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00//プロローグ

疫病が蔓延し、今にも滅んでしまいそうな国があった。


近隣の国々は自分達にまで被害が及ばぬようにと救援の要請を無視し、ただその国の人々は息絶え国が滅ぶのを待つだけだった。

ある夜の事、病床の国王の枕元にふと一人の美しい少女が現れ、優しく、やわらかく語りかける。


「哀れな王よ、私と取引をしましょう」


その少女は国民たちに温かな食事と知恵を与え、不思議な力で疫病を治療した。

まだ動けるものには薬草を集めさせ、薬を煎じ快方に向かうまで何度も飲ませた。

国王は死の淵から舞い戻り、取引通りに国王の座を少女に譲った。

『国民たちを救うことができれば、この国を譲る』それが取引内容だった。


滅ぶまであと少しだった国を、見事美しい花々が咲き乱れ、輝く太陽の恩恵を受ける国にまで建て直した少女は≪闇夜の百合(レリィ)≫と呼ばれ、新たな女王を誰もが愛した。


国民たちは女王を愛した。

その国は繁栄し

未来永劫幸福な国と



なるはずだった。



あまりにタイミングが良すぎると、一人の国民が考えた。

他の国々が助けてくれなかったのは、助けられない理由があったのではないかと、、二人の国民が考えた。

不思議な力があれば、自分たちの病を治す事も、またその逆もできるのではないかと、三人の国民が考えた。



新たな女王は誰もが愛したわけではなかった。

≪闇夜の百合≫は不幸を呼ぶ魔女の名前。



救ったはずの国民の畏れは、女王陛下に牙を剥き―――……







美しい花々が咲き乱れる森の奥、雨によって生み出された霧に包まれた幻想的な風景を

より色めいたものに変えるのは二人の人影。

白磁のマントを羽織った青年と、対峙する一人の少女。


「おのれ、おのれ、おのれおのれおのれ……!」


その少女は怒りに体を震わせていた。

震える体の至る所に銀の杭が刺さり、その傷口から流れる血と

地面を跳ね返る泥で身に纏った紫黒のドレスは汚れ、体を濡らす不快な雨は徐々に少女の体温を奪う。


「……ごめん、こんなやり方しか出来なくて……」

「言い残すことはそれだけか!? 私は決して許さない!!」


刺さった杭の先は徐々に紅へと染まり、疼くような痛みを小さなその身に与え続けるが

その痛みを凌駕する程の怒りが感情を支配し、可憐な少女の顔を歪ませる。


「この国は私のモノだ! 私が救い、私が全て建て直した!それの何が悪い!!

与えたのは私だぞ? 裁かれるべきは私ではなく、お前たち人間の方ではないのか!?」


青年は顔をしかめ、何かを呟こうとして諦めた。

二度三度と静かに瞬きをした後、手にした杖を少女の頭上に掲げる。


「許されなくても構わない。これが僕の、君への愛だ」


「が……っ!?」


体に刺さった杭が捻じれるように傷口を抉る。

瞬間、全身の力が抜けるような―――――否、全身の力を奪われるような、自分の足で立つこともままならないほどの倦怠感が少女を襲う。


「お前、何を」

「キミの魔力をすべて封印する。そしてこの国ではない遥か遠くの国へキミを転移させる。

傷はその場所の優しい……人々が、癒してくれる。その場所でもう一度生きなおす事が、きっとキミの幸せに繋がると僕は思っているよ」

「な……」


自分の体を支えられずに、濡れた地面に倒れこんだ少女はなけなしの力を振り絞り、喉を震わせた。


「な、にが、幸せだ、裏切り者……! 私は、わたしは……お前を……っ!!」


瞬間、眩い旋光が少女を包み、光が収まったその場所には鮮やかな血の跡と甘い香りだけが残り

少女の言葉は最後まで紡がれる事は無いまま虚空へと消えた。


「本当に、心から愛してる。 レリィ……」


青年の言葉に答える声はあるはずも無かった。


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