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少女が魔王と呼ばれた元凶  作者: 4047
第一章 ダンジョン編
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6




 一階層を殲滅した俺達三人は二階層へとやって来た。トレントとサイクロプスは魔物牧場に置いてきた。二人とも移動速度に難ありである。

 下に降りると、そこは一面の森だった。そして風が運んでくれた情報だと、全て同じような形状をした魔物であることが分かった。だがその数が尋常ではない、かなりいる。


 俺達は一番近い集団に接近してみると、そこにはオークが小屋を建てて暮らしていた。だが俺達をみると各々武器を抜いて此方に襲ってこようとしたので殲滅した。集落のほとんどがコマンダーであったが、少数のウォーリアーも混じっており、そして一番デカイ家からはジェネラルが出てきた。


 二つ目の集落も同じで、どうやらこの階層はオークの集落が点在しているマップらしい。つまり肉狩りの時間である。先ほどの集落も殲滅したのちに配下を召喚して急いで肉を回収した。だが一々召喚するのも面倒くさいので一気に全員召喚し、そして剥ぎ取った者から先に魔物牧場へと帰らせた。



 

 オークの集落を潰して回る行為は一日で終わらなかった。新たに加わった二人と共に魔物牧場に入ると、俺の配下を全員召喚したあの時ものすごく驚いたことを告げられた。確かにいきなり八千もの魔物が出てきたらそれはまぁ驚くだろうなぁ。


 翌日も同じように集落狩り、そしてその次の日も同じく集落を狩りそして一日の中ほどだと思われる頃合いで漸く一番デカイ集落へとたどり着いた。そこは一番奥にあり、集落の先に階段があると思われる場所で、既に俺達が自分達の仲間の集落を潰しまわっているのを知っているのか、集落の外で待ち構えていた。しかしそれは俺にとって的でしかなく、直ぐに全員首を斬った。しかし一匹だけかろうじて避けた敵がいた。そいつは首の代わりに右肩から先を犠牲にしたようだ。というか避けたら斬れちゃったんだな多分。

 そいつの名前はハイオーク。俺が見たオークの中で一番ランクの高い魔物だった。俺は奴の前に出て行ってから奴の前に風の刃で地面を抉った。そして自らの右腕を消失させたのが俺だと分かると咆哮と共に此方に突っ込んで来たので足を斬る。そしてテイムした。


 オークとの戦いを終えて三階層へと入った俺達だったが、入った瞬間に草原に影がまだらに出来ている事、そしてそれが動いていることに嫌な予感を覚えながら上を見る。するとその影一つ一つが全てホークであることが分かった。まるで街中の小鳥のようにばっさばっさと編隊を組んで飛んでいる姿は正直鳥肌物だった。だったので速攻で風の突風でかき乱し地面に叩き落してから切り刻んだ。因みに肉は美味かったので、出来るだけ回収した。

 出来るだけというのは、連れ出せる配下が限られていたからだ。ホブゴブリン程度だとやられかねない、こんなところで配下を消耗したくないからな。


 その晩はオークとホークの焼き肉を堪能した。配下たちも満足だったようだ。まぁまだホークが狩り終わってないからな、明日も鳥肉にありつけるだろう。


 翌日、マップを半分ほど進んだところでホークウォーリアーに出会った。奴はスピードがホークと比べると段違いで、いつもと同じように風を起こしていた俺に一番接近してきた猛者だ。なので今後はホークを見たら先ずどれだけ遠くても叩き落して斬ろうと決意を新たにした。


 漸く鳥マップを抜けて下の階へと進むことになった。だが此処までくれば俺でもわかる。このマップは一番最初にいた敵が一面に沢山出てくる仕様なのだ。そして四階層はサイクロプスだった。奴らの肉はなんだか臭いので食べる気がしない。やはりウォーリアーが出てきたが、攻撃速度が上がったと言ってもそれほどでもなかったのでそのまま殲滅を繰り返した。


 次の五階層ではキマイラがわんさかといた。一面草原となっており、群れ単位での移動をしているらしく、殲滅に時間がかかった。というのも奴らずっと動いているので、此方が追い付くのに時間がかかるのだ。最初の方は匂いを分散させれば勝手に此方に寄って来たが、途中から俺達が自分達よりも強いとみるとあまり襲ってこなくなったのだ。それに、攻撃しても避けられることが有るので面倒臭かった。多分だがこの草原森林マップになってから最も日数を掛けた場所と言ってもいいだろう。


 そして六階層はトレントの森だ。本当に普通の木は一本も無かった。植わっている木は全てトレントだった。まぁ最初っから全ての木に対して地の魔法で土を硬化させて突き刺してやったんだが。そうしたら一斉に顔が出てきて流石に気持ち悪かった。


 トレントと一言で言っても、どうやら様々な木のトレントがいるらしく、種類はトレントという名前の一種類だったが、木を種類として見れば本当に何種類いるか分からないほどだった。もしまた此処に来られるなら全員テイムして魔物牧場で何か果物でも育てられないか試してみたいものだ。


 トレントの森を抜けると、今迄のボス部屋に続くような階段となっていた。そして最後まで降りると、今迄のボス部屋よりも一層大きな扉と凝った意匠が彫られている扉に出くわす。俺はその扉を押して中に入る。


「ひゃぇ」


 そして間抜けな声と共に硬直し、すぐさまキマイラとホークを魔物牧場へと送った。

 目の前にいたのは緑の鱗と大きな蝙蝠のような羽……ドラゴンだった。


 いやいやいやいや、だから難易度跳ねあがり過ぎだと思うんだが! なんでいきなりドラゴン! 俺的には五種類の上位種がそれぞれ出てくると思ったのに! 

 

 そんな葛藤を知らずにドラゴンは一度胸辺りを膨らませる。

 これってブレスか? そう思いながらも今自分に出来る最大のバリアを張り巡らせた。だが結果から言うとそれは必要が無かった。なぜなら奴の口から出てきたのは特大の風属性の砲弾、つまりそれなら俺は操れるという事だ。

 実際できるか分からなかったが、俺はただ何となく意識を巡らせその砲弾を支配出来るか試していた。そしてそれが成功した瞬間、反転させてドラゴンにお見舞いしてやった。流石にダメージにはならなかったが、頭に直撃したのでグァと鳴き声を上げた。


 それにしても、ドラゴンの放つ物であろうとなんであろうと地水火風なら操れるという事か、やっぱりすごいなこのスキル。流石チート! そうと分かれば油断しなければ何とかなるはず!


「グォオオオオオオオオオオオオ」


 ドラゴンは流石に怒ったのか咆哮を上げて飛び立つ。だが俺はダウンバースト擬きでドランゴン叩き伏せた。実は魔物牧場で暇をしているときに精霊魔法について少し試していたことがある。精霊魔法は自分の魔力を使わずに発動できる、そのため魔力が足りずに発動しないという事も、魔力が足りずに自らの命を落とす事も無い。そして発動には明確なイメージが必要。だが起きる現象だけを強くイメージする方法と、周囲の魔素を多く集めそしてイメージを固める方法では後者の方がより強力に、そしてイメージにより近い物が発動することが分かった。

 実際俺はダウンバーストなんてちゃんとした原理は知らない。気流が地面を叩きつける、それはとてつもない威力である、それくらいだ。だがそれを俺のイメージで増幅させることによってより強力な、ドラゴンさえも叩き落しうる攻撃になった。


 気が付けば俺の周りに緑色の光が幾つも瞬き、俺自身が浮かび上がっていた。そして継続しているダウンバーストでドラゴンを押し付けている。なんだか一瞬意識が途切れたような、まるで自分が自分でないようなそんな気もしたが、今はしっかりと意識できている。そして周りに浮かんでいるのは、風の魔力。俺の強いイメージで出来上がってしまった副産物。今の俺はもしかしたら精霊に近くなっているのかもしれない、そのままドラゴンを押し付けていた俺は口を開く。


「お前に抜け出せるか?」


 言葉が通じなくてもじっと瞳を見てそう言えば、何かを感じ取ったのかいっそう抜け出そうとするドラゴン。しかしそれは叶わずただ暴れるだけ。そしてそれは俺とドラゴンの明確な差である。


「『テイム』」


 だからこそすんなりとテイムすることが出来た。

 テイムが成功したと共にダウンバーストが止み、浮遊していた俺の体が地面へと降りる。


「君、何者?」


 思ったよりもドラゴンは可愛らしい声をするもんだと思ったが、声は後ろから聞こえてきた。驚いて振り返ると、そこには俺の手のひらほどの羽の生えた妖精と言えばいいのだろうか、白いワンピースに緑の髪の少女が此方を不思議そうに見ていた。


「何者と言われてもな、俺はコボルトコマンダーだ」

「……魔物が同族の魔法を使ったって言うの? ……しかも僕たちの与り知らぬところで?」

「同族? もしかして風の精霊か?」

「いや、僕は一つの属性しか持たない下位精霊とは違うよ、僕はれっきとした精霊、言うならば上位精霊だね」


 もしや、本来の雷を生み出したり植物を操れたりするというあの精霊だろうか。というか今の話だと一つの属性しか持たない下位の存在もいるらしい。初めて知った。


「それよりも君、今使っていたのは風の精霊魔法だね? しかも周囲の魔素に影響を及ぼして結晶化してしまうほど純度の高い、そんな事は本来僕達上位精霊でなければできないはずなんだけど」

「そう言われても、出来るしなぁ」

「うーん、力を感知して飛んできたけど、本当に魔物だし、半精霊でもないんだね……でも一体どうやって、精霊魔法のスキルは精霊しか取得できないはずなのに」

「俺は女神様に貰っただけだしな」

「……は? はぁああああ! まさか、お会いしたの? 我らが創造神に? でも、そっかそれなら納得かなぁ」


 そう言うと疲れたようにはぁーとため息を吐いた精霊は此方に向ってちょこんとスカートを摘み挨拶をしてくれた。


「いきなり押しかけて名前も言って無かったね、僕はこの世に六人いる上位精霊の内の一人ジェニ、創造神様に与えられた物ならば僕たちがどうこう言う事じゃなかった」

「あ、いや、色々と立て込んでる時だったから、そんなにいきなりな感じはしなかったな、驚きはしたけど」


 なにせドラゴンが出てきて、自分が良く分からないがフワフワ浮いてドラゴンを圧倒して振り返ったらいたからな。


「というか自分で言っておいてなんだが、神様の事信じていいのか?」

「上位精霊に嘘が通じるわけないじゃん、それよりも君さっき精霊化していたけど体に変化はある?」

「は? 精霊化?」

「そう、精霊魔法は本来精霊のみが使える魔法、それは精霊がそう決めているんじゃなくて世界がそうあるべきと決まっているからなんだ、だからさっきみたいに思いっきり精霊魔法を使うと魔物と精霊の狭間の存在になる、魔物として生まれて魔物であるべきという世界の意思と精霊魔法を使えるのは精霊のみであるという世界の意思、その狭間に居たんだね」

「精霊に振り切れると悪い事があるのか?」

「ないよ、そもそも振り切れないと思うけど……こんな事象は初めてだから僕も分かんない、でももし振り切れたとしたら種族がコボルト(半精霊)のまま定着するかも、というかその方がいいかもね」

「何故?」

「だってこれからも使うつもりでしょ? ならより精霊に近くなった方が威力も魔素への意志伝導率もあがるし、それに寿命もなくなるからいいことづくめ、デメリットは無いかなぁ」

「本当にデメリットは無いのか?」

「うーん、思いつかない、本来精霊はこの世界で最も強力な力を持っている種族だからね、勿論神様は抜いてだよ? だから精霊に近くなるって事はそれだけ生物としての各が上がる事だから、悪いことは無いんじゃないかな」


 そうなのか、あまり鵜呑みにするのも良くないとは思うが、嘘を言っているようにも思えないしな。どうやったらその半精霊になれるのか聞いてみるか。






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