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俺はボスを斃し入り口へ戻って来た。
新たな扉にいた敵はオークとオーガそれの進化系だった。先ず一階から三階まではオークとオーガが出現。奴らは身長二メートルはあろうかというほどの大きさであった。オークの方は猪の顔に全体的に肉付きがよい体格で、オーガは筋肉質な体格だった。両者とも腰みのを付けており、まだオークとオーガは素手での戦闘だった。
四階層からは武器を持つウォーリアーが出てきた。そしてその下からはコマンダーが出現し、ボスはオークとオーガのジェネラルの二匹だった。装備としてはウォーリアーが武器だけ、コマンダーになると防具が付いていた。ジェネラルは武器も防具もワンランク上の物になっていたが、風の刃で倒したのでその強さははっきりとは分からないが、他の二つの入り口よりも、この入口の方が広くそして敵が多かった。更に言えば強さも他二つに比べて強かったと思う、おかげで俺も進化してコマンダーになった。
コマンダーになった俺は正直言って依然とあまり変わりない、しいて言えば体格がまた少しマシになったくらいだろうか、あと毛並みが良くなった。ただスキルも貰えていないし分岐のようなものは感じられなかったので、少々物足りない。
だが今回はそんな事を吹き飛ばす出来事があった。
俺の前には今名持の六人がいる。
「今新たに出現した入り口を攻略してきたが、朗報がある……オークは旨い!」
そうなのだ、オークの肉は旨いのだ。オーガの肉はゴブリンとどっこいなのだが、オークはそれはもう旨い。地球に居たころなら普通に感じるのかもしれないが、今迄クソ不味い肉を食って来た俺にはまるで天から与えられた天上の食べ物に感じられるほどだった。
それは配下も同じで、俺が旨いといった瞬間全員の目に光りが輝いたように見えた。
「これよりオーク狩りを開始する、順々に牧場から召喚するのでしっかりと誘導し、牧場に肉を貯めるように」
全員が頷いた事を確認し、配下を召喚していく。そして次々に血走った眼をした六人によってオーク狩りが開始された。
誰もいなくなった入り口で、俺は一点に目が行った。どうやら今度は魔法陣に乗って移動するらしい。入り口が増える代わりに、端っこに魔法陣がゆっくりと浮かび上がったのだ。此処に乗れば新たな場所に行けるのだろう。だが今までと違うという事は、十階層で終わりこの入口エントランスに戻ってこれない可能性もある。故に今の内に配下のレベル上げとオーク狩り、そしてテイムを済ませておこう。
*****
俺は今魔物牧場でごろごろしている。正直言って俺のやりたいことが終わってしまったのだ。後は配下の育成のみ、それも名持ち連中に任せてあるので俺はやることが無い。沢山刈ったオーク肉は、何故だか干し肉へと大半は姿を変えた。どうやらマティーの知識に干し肉の作り方が有ったらしく、彼女主導で作ってくれた。後は適当に魔法が使える配下に小さな火を出してもらい、それを大きくしてバーベキュー的な事もした。
その時は美味しくて配下全員で貪った。新たに仲間になったオークも貪っていた。一応同族を食べることに何か躊躇はあるかと聞いたが、既に俺の仲間になったことで同族という意識はあっても自分達は全く違う物という感覚なのだそうだ、つまり問題ないと貪っていた。
……というか一番消費していたのがオークなんじゃなかろうか。
勿論配下になった魔物は食うつもりは無いので、そのことはちゃんと伝えてある。
オークとオーガのダンジョンをクリアしてから結構な日数が経ったので、残すところはオークとオーガがそれぞれウォーリアーになれば出発である。
そしてついにその日が訪れた。
名前:――
種族:コボルトコマンダー
スキル:『精霊魔法(地水火風限定)』『テイム』『魔物牧場』『鑑定』『槍術』
称号:『???』
特殊従属:<ジーン><ユフ><スン><マティー><スーン><ジル><クオ><ルエ><><><><><><><><><><><><><><>
従属:<ホブゴブリ×646><ウルフ×530><ゴブリンウォーリアー×598><ブラックウルフ×645><ホワイトウ×532><スライム×314><ゴブリンコマンダー×3><グール×731><スケルトンウォーリアー×819><スケルトンコマンダー×698><ワイト×3><オークウォーリアー×692><オーガウォーリアー×673><オークコマンダー×587><オーガコマンダー×603><オークジェネラル×3><オーガジェネラル×3>
漸く全ての一番下のランクの配下がいなくなった。因みにクオはオークジェネラルでルエはオーガジェネラルだ。両方ともボス部屋でテイムした魔物で、クオは男、ルエは女だ。
俺は全ての配下を魔物牧場に集めた。そして各名持ちの後ろにずらりと整列している光景は壮観である。数にして約八千もの魔物が今俺をみていた。これだけの魔物をテイムしたと思うとこう感無量だ。だがまだまだ序の口、これから更に増やしていかなければならない!
「これから転移陣の中に入ろうと思う、何があるか分からないため全員牧場で待機しているように」
そういって俺は懐かしい入り口エントランスへと戻って来た。そして未だ端っこに怪しく光り輝いている魔法陣に躊躇いなく乗る。すると目の前が光で遮られ一瞬の浮遊感、そして開けた場所は……草原だった。
辺りは一面の草原、そして奥には森が見える。一瞬魔物牧場に来たのかと思ったが違う。魔物牧場の景色とは違うし、あの謎の安心感も無い。やはりここはダンジョンの中という事になるだろう。
小説やなんかではこういった不思議空間もあったが、まさか現実にあるなんてなぁ。ともかく此処はダンジョンの中だ、油断だけはしないようにしておこう。
俺は風によって情報の収集を開始した。そしてこの場所はかなりの広さを持つことと様々な魔物がいることが分かった。
取り合えず一種類ずつ潰していくしかないだろう、だがクリアしたら復活するかどうかは分からないので初見の魔物は一種類ずつは必ずテイムして行こう。もし無理そうなら諦めるしかないけどな。
俺は自分の匂いが漏れないように風をコントロールしつつ敵に接近していく。そして一応茂みに隠れながらも相手を見ると、既に相手は此方を見ていた。どうやらばれているらしい、なら仕方ないか。そう思い俺も隠れるのを止めて相手を観察する。……だが。
ライオンの頭と山羊の体に毒蛇の尻尾……名前はキマイラ。ちょっと待って欲しい、あれ? 難易度跳ねあがってない? それともこの世界のキマイラってそんなに強くないとか?
そんな思考がぐるぐるしながらも俺は自分を守るためのバリアを風で張り巡らせる。それが功を奏した、奴は一瞬で此方に近づいて来て攻撃を繰り出そうとしたが風に阻まれる。阻まれて退却しつつ尻尾で攻撃を仕掛けてくる。そしてその攻撃も風に阻まれると知ると低く唸り声を上げながら俺の周りをぐるぐると回り始めた。
……どう考えてもオークジェネラルよりも強いような気がするんだが? てか本当にレベル上がりすぎじゃないか! 配下連れてきたらすぐに死んでたかもしれないな。
だが残念ながらタラればは起きない、勿論俺にとって残念なのではないがな。俺は風の刃で四肢を切り裂く。だが何かで察知したのか避けられてしまった、避けられたのは初めてで少し驚いたが気を取り直そう。
俺は自分の足で地面を少し蹴り上げた。どうやら土の様だ、という事は……地の魔法が使えるという事! キマイラの丁度腹の下から不意打ちで地面を突き上げる、だがこれも避けられてしまったがその一瞬の隙、避けている体制の時に四肢に風の刃を向かわせて見事に切り裂くことに成功した。
そして勿論。
「『テイム』」
テイムに成功した。正直今迄で一番戦闘らしい戦闘だった。キマイラは既に元の状態に戻っており、俺の前で平伏している。なので背中に乗せてもらうことにした。そうすれば移動の時間が大幅に削減できるからな。
草原をキマイラと共にかけていると同じくキマイラが此方を見つけて攻撃を仕掛けて来たが、今度はテイムをする必要が無いので避けられないほどの風の刃を作り出して切り刻んだ。
俺達が今向かっているのは森の方面だ。更にキマイラを走らせていると、上から奇襲があった。と言っても最初から察知していたので奇襲にはならないがな。
俺はその魔物を風で叩き落してキマイラに踏ませた。見ればそれはホークという魔物……というか名前のまま鷹だ。大きさは普通の鷹よりも一回り大きいが、それでもキマイラの体重を乗せた足は退けられそうになく、バタバタとはばたかせていた羽は次第に動くことを止めた。そして勿論テイムした。
今度はキマイラに乗り疾走するその上をホークが跳ぶ三人の集団が出来上がった。此処で二人にこのマップには一体どのような敵がいるのか聞いてみることにした。
帰って来た返答は、二人のほかには木の魔物、一つ目の巨人、それと猪頭の魔物だそうだ。
成る程、あと三種類か……だが猪頭はオークの可能性があるので、最初にそちらを見に行こう。
この三種類はどれも森の中にいるようなので、草原を突っ切り森へと侵入した。
森の中は薄暗く、キマイラは動きにくそうだった。だがそれでも俺が普通に歩くよりも断然早いので方向を指示しながら向かってもらうと、確かにオークが集落を築いていたので殲滅させておいた。オークはもう沢山テイムしたからな。
そして不意に蔦が此方に向い鋭く突きを放ってきたので、すぐさまその根を切り刻んだ。
すると二つ先にあった木に目と口のような物が現れて、わさわさと木が揺れている。名前はトレント、これが二人の言っていた木の魔物だろう。
俺はトレントの近くの地面を棘のように隆起させてトレントに刺した。すると効果があったのかがむしゃらに根で此方に攻撃しようとしてきたので切り刻みテイムした。流石にトレントの移動速度に合わせるとかなり遅いので魔物牧場に送っておいた。
最初は一緒に行こうと思ったのだが、本当に動いているのか分からないくらいゆっくりとした動きだったので仕方ない。
そして最後の一種類、一つ目の魔物には森の終わりで出会うことが出来た。濃い緑の肌をしたオーク達よりもデカいそいつは、腰みのを付けた巨人と言って差し支えないだろう。俺達を確認すると手にもつ棍棒で此方を押しつぶそうとしてきたので四肢を切り裂いたら大人しくなった。一定以上の攻撃力を持つ者にとっては遅い攻撃はただの的だな。
取り合えずこのフロアに居る敵の種類はこれで全てだろう。後は殲滅して回ってから下に降るとするか。




